人と環境の心理的相互作用に関する研究
<指導教員>槙 究
<発表日時>2022年11月12日?2023年3月31日
<発表場所>卒業研究発表会、本館427廊下掲示
私たちは、生活環境学科で学んで来る中で、身の回りの生活環境の色や質感といったデザインの構成要素の心理的な影響に興味を持つようになりました。また、それらが組み合わされたデザインが、商品を購入したいという気持ちにさせたり、お店に入ってみようという気持ちにさせたりするという行動に結びつくような効果があります。
今年度の卒業研究では、そういった心理や行動への影響に注目して、卒業研究を進めていく予定です。
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2022年度
身の回りの生活環境の色や質感といったデザインの構成要素の心理的な影響に関わる3つの研究を実施しました。
(1)リアルアピアランス画像を使用した評定実験に基づいた昼夜の看板の在り方
私たちは、看板が街中に溢れていることは景観に大きな影響を与えていると考え、看板の種類、低層?高層の街並み毎のより良い看板の在り方をテーマに研究しました。
実験1では看板を含んだ街並み画像の印象評価、実験2では看板群を組み込んだ街並み画像の印象評価を行いました。
2つの実験を通して看板のない街並みは面白みがなく、看板のある街並みの方が好まれ、昼の評価が高い街並みは夜の評価も高いことが分かりました。
具体的には落ち着きを感じられる黒色で統一された縦看板が好まれることが分かりました。壁面看板では文字のみの看板は色の統一感やまとまりがあり好まれます。低層では壁面看板の方が好ましく、高層では縦看板が好ましいことが分かりました。
このことから、看板の形に違いがあっても、色の統一感があれば好ましくなります。昼の街並みを中心に改善し、 看板の数や大きさを適度にすると共に、シンプルかつまとまりのある看板群や面白みのある看板群にすることが適切であると考えました。
発表?展示を通して、昼夜の看板の在り方への関心を持っていただけたらと思います。
(2)売り場から置き場へ 生活に馴染むパッケージデザイン
私たちは、商品パッケージにおいて「置き場」に配慮したカラーデザインという部分も考慮すべきなのではないかと考え、売り場だけでなく、商品を持ち帰った際の「置き場」まで考えたパッケージデザインについて研究を行いました。
調査1では既存商品の色彩調査、調査2ではパッケージの使用実態アンケートを実施しました。実験は2種類行い、売り場と置き場でのパッケージの印象を調査する為、評定実験を行いました。
調査を通して、私たちはパッケージの色はいくつかの意図があると考察し、その中で9つを抽出しました。アンケート調査では、商品購入時「品質?効果?効能」などを重視することが多く、「容器のデザイン性」はあまり注目されていないことが分かりました。その一方で、家に持ち帰ると、パッケージを隠して置いている人が約半数以上いるという結果でした。その結果から、置き場に置いておくことに抵抗がある人が多いのではないかと考察しました。
実験では、売り場?置き場ともに評価の高いパッケージには、2色から3色でまとめられた配色、彩度が高くない、余白が大きく使われている、シンプルなフォントといった要素が一致していることがわかりました。
これらの結果から、そういった要素を持つパッケージは売り場?置き場どちらに置いても受け入れられると考えます。加えて調査の結果や、既往文献などから、抽出した9つの意図を元に商品をイメージしやすい色を用いることもパッケージにおいて重要な要素であると考えます。
実験?調査、アンケートを通して、置き場まで考えたパッケージデザインについて1つに定めることはできなかったものの、評価の高かった商品からいくつかの共通した要素を探ることができました。
(3) 質感素材のマッチング
私は、素材の組み合わせに調和があることを明らかにするために研究を行いました。
2つの素材を組み合わせたサンプルを呈示して印象評価させる実験の結果から、サンプルを構成する素材と印象の関連を探ります。今回は、具体的なプロダクトや建物の印象に及ぼす素材の影響を明らかにする前段階として、素材のみの組み合わせが印象評価に及ぼす影響を探ることを目的とします。
実験では、色や質感が異なる素材を2種類組み合わせた画像の印象評価を実施し、「好ましさ」、「落ち着き」、「暖かさ」の3つの印象すべてにおいて、構成する素材の効果の加算がベースになって印象が表現されるという結果が得られました。また、上述のような傾向では表現できない交互作用がある素材の組み合わせもあることがわかりました。