有形?無形遺産の結節点を探る—青梅夜具地の図案調査と再生プロジェクト
<指導教員>串田 紀代美
<発表日時>2022年10月9日
<発表場所>渋谷キャンパス常磐祭
民俗芸能ゼミ(美学美術史学科)では、地域の生活文化史を民俗学の視座から紐解き、文化資源として捉え直し、新たな価値を与えることを目的として研究活動を行っている。その一環として、青梅市をはじめとする西多摩地域を拠点として発展した青梅夜具地(布団等に使われる布地)の生産と「縞夜具の見本帳」の図案に関する調査研究に取り組んでいる。今年度は、青梅の織物産業史を把握しながら、夜具地の見本帳とラベルの来歴ならびに図案の調査を実施し、織りや色?柄に基づいた分類作業と記録作成を行う。さらに、「ぎゃらりーはこ哉」金子静江氏(梅梅市住江町)の協力を得て、夜具地の端切れを再利用し文具等にリメイクした作品を常盤祭で展示し、調査研究の成果を発表する。
2022年度
「民俗芸能ゼミ」では、地域の生活文化史を民俗学という視点から新たに捉えなおし、地域の文化資源として付加価値を与えることを目的として研究活動を行っている。その一環として、青梅を拠点に昭和時代に最盛期を迎え、全国に普及した青梅夜具地(布団等に使われる布地)の歴史と見本帳?ラベルならびに図案に関する一次調査を行った。この成果をもとに、2022年度第9回渋谷キャンパス常磐祭では青梅夜具地の研究発表と展示を行った。以下は、ゼミ生が青梅現地調査(青梅市立図書館、ぎゃらりーはこ哉など)で得た情報をもとにまとめた研究発表の内容の一部である。
青梅には江戸時代より織物産業が栄えており、「青梅縞」と呼ばれた木綿が江戸から京阪にかけて広く流通していた。明治時代後半には青梅織物同業組合が結成され、織物産業は着物地から夜具地へと変化していった。昭和前期に青梅織物工業組合が設立されると夜具地はさらに発展し、昭和20年代半ばには全国シェア7割を誇った。しかし、戦後には生活様式が洋風化され、和式寝具とともに青梅夜具地も衰退の一途をたどり、平成11年に青梅夜具地の生産はすべて終了した。
こうして生活必需品としての役目を終えた青梅夜具地は、青梅の新井八郎氏や「夕日色の会」といった地元の有志によって、再興?保存?収集が試みられてきた。本発表は、SDGsの取り組み目標12「つくる責任、つかう責任」という考えに基づき、「ぎゃらりーはこ哉」による青梅夜具地のアップサイクルに注目した。アップサイクルにより、すでに役目を終えた青梅夜具地は新たなアイディアとデザインにより形態と機能を刷新し、現代社会の文脈に位置付けられた。本事例は、持続可能な社会へパラダイムシフトするための実践的かつ有益な取り組みの好例であり、さらに地域の有形?無形文化遺産の継承を可能にするヒントを次世代に与えてくれた。
常磐祭での研究発表では、青梅夜具地のアップサイクルに長年取り組んできた「ぎゃらりーはこ哉」オーナーの金子静江氏(梅梅市在住)による全面的な協力を得て、青梅夜具地の展示とアップサイクル品の販売を同時に開催したことで、より多くの来場者が研究発表と展示内容に興味を持つような工夫を試みた。たとえば、夜具地で作ったマスコットと手製のおみくじをカプセルに詰め、ガチャガチャマシーンで販売するアイディアなどをゼミ生が積極的に提案し、SNSを活用して広く情報発信を行った。