温冷感と安静時代謝量の関係の解明
<指導教員>山崎 和彦
<発表日時>2022年10月29日
<発表場所>日本生理人類学会83回大会(オンライン)
当研究室では、これまで2年間に渡り、本制度の助成を受けて「耐寒性の評価」に関する研究が行われています。本年度は新たな試みとして「辛さを感じ難い評価方法」にトライします。これは人工気候室を気温21℃、相対湿度50%一定とし、被験者が「やや温かい」「やや涼しい」と感じるよう服装を自由に選択し、その時のクロー値を求めるものです(クロー値とは衣服の保温性の指標であり、この値が小さいほど耐寒性が優れることになります)。並行して主観申告値、皮膚温、腋窩温、代謝量を測定し、被験者の体温調節機能に関わる各種要素の相互関係を捉えます。学外での活動については、本年秋に学会発表を行い、いずれ学術論文にまとめ発表する予定です。
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2022年度
本研究室では「ヒトの耐寒性の評価方法」を主なテーマとして研究を行っている。これまで、寒冷環境下に実際にヒトを暴露して生理心理的応答を捉え、多くの知見を得ている。
さて、本件を申請した当初における実験計画は、新たな試みとして「辛さを感じ難い評価方法」の検討に向け、人工気候室を気温21℃、相対湿度50%一定とし、被験者には「やや温かい」「やや涼しい」と感じる服装を自由に選択させ、その時のクロー値(クロー値とは衣服の保温性の指標)を求めるというものであった。
予備実験を進める内に、多様なサイズの異なる衣服を事前に揃えておくことが困難であること、また、衣類の着脱に手間を要することから、全員に1クロー(気温21℃、相対湿度50%下、安静時において「暑くも寒くもない」とされる)に相当する衣服を着用させた上で、生理心理的応答を捉える方法が合理的であると判断した。なお、28℃下において「暑くも寒くもない」とされる0.28クロー相当の衣服条件についても実験を継続しており、これについては2023年6月に開催される生理人類学会第84回大会(於九州大学)において発表する予定である。
また以下に、研究に関する所感を述べておきたい。被験者12名に対し、生活習慣等の調査結果に基づき「暑がり度」「寒がり度」を求め、各種測定項目との相関関係について検討した。その結果、全身温冷感と「暑がり度」には有意な相関関係が認められた。通常、学術的には、測定器材を用いて「客観的な判定」を行うことが望まれるが、主観的なデータであっても、扱い方次第では有意義であるといえる。
前年度の実験と同様、今回においても、寒冷刺激がもたらす代謝量への影響には個人差が認められた。体熱平衡の考え方に基づくなら、寒冷下において代謝量が増大することは当然といえる筈であるが、実際には、ヒトの体温調節における戦略は多様であるといえる。