広井 多鶴子先生
家族と教育の「当たり前」を歴史的に問い直す
広井 多鶴子(HIROI Tazuko)/人間社会学科
高崎健康福祉大学を経て、人間社会学部が設置された2004年に実践女子大学に着任しました。人社の誕生以来の歴史を知っていることになります。
Q1. 先生の研究分野は何ですか。その研究をはじめたきっかけは何ですか
研究分野は教育学と家族史です。主に家族関係や親子関係の歴史、それから、子ども?若者、教育?学校に関する制度や政策について研究しています。
今、子どもを教育することは、親の責任であり義務であると考えられています。それは「当然だ」と思われるかもしれませんが、歴史的にみると必ずしもそうではありません。いったい、いつなぜ子どもの教育は親の責任と考えられるようになったのか、親の教育責任はどう変化してきたのか、といったことを主に研究してきました?こうした「当たり前」を問い直すことに研究の面白さがあります?
直接のきっかけではないのですが。高校の授業で水田珠枝の『女性解放の歩み』を読んだとき、クラスの男子が「将来、妻子を養わなくては」なんて言うのでとても驚きました。私は、子どもはともかく、夫を養おうなんて思ったことはなかったので。同じく高校の時、倫理の先生が授業で、「全校朝礼の時、何で男子の後ろに女子を並ばせるのか分かるか。余った場所に女子を置いたからだよ」と言いました?その時は、憤ったのですが、後で先生のいうことはその通りかもしれないと思い直しました?そんなこんなが、今の研究につながっている気がします。
Q2. 先生が担当されている授業の中で、学科を決める1年生やゼミを決める2年生におススメの授業は何ですか
2年前期の「家族社会学」では、結婚、主婦、性別役割分業、育児、家事労働、少子化など、家族の歴史的な変化をについて学ぶ中で、今日の家族のあり方について考えます?
教育や家族は、どうしても「かくあるべき」という規範的な捉え方に縛られがちです。そこから少し自由になるために、授業では様々なデータや文献を取り上げ、それについて学生のみなさんに考えてもらうようにしています?
Q3. 先生のゼミはどのような活動をしていますか。どんな雰囲気ですか
ゼミのタイトルは「子どもと家族の社会学」です。子ども、若者、親子関係、家族関係、子育て、教育、学校などに関する様々な事象を対象としています?
3年の演習では、卒業論文の執筆に向けて、それぞれが自分の研究テーマを見出すことと、研究の方法を身につけることが最終的な目標です。
研究のテーマは自分の中を探していてもなかなか見つかりません?まずは、外に関心を向け、知識を広げる必要があります?そのために、3年前期は、共通の文献を読んだり、共同研究をしたりして、関心を広げます。その上で、3年後期、それぞれ自分の関心に基づいて研究テーマについて調べ、考えていきます?
4年前期のゼミは各自の卒業論文の進行状況を発表し、互いに検討します。後期は個別指導を受けながら、各自、卒論を執筆します。
Q4. 先生のゼミでは、どのような卒業論文のテーマがありますか
以前は学校や教育に関する論文が多かったのですが、最近は、アイドル、ゲーム、アニメ、ドラマ、CM、美容、ファッション、音楽といった、ユース?カルチャーやサブ?カルチャーに関する卒論が増えています?それから、未婚化?晩婚化、非正規雇用、女性管理職、育児休業など、女性と家族、労働に関する卒論も多いですね。
Q5. 先生の大学時代の楽しかった思い出は何ですか
一番印象に残っているのはゼミです?3年生の時、二つのゼミに入っていたのですが、一方のゼミは、学生が運営委員会を作り、週に何回も集まって打ち合わせをしたり、大学に寝泊まりをして分厚い報告集を作ったり。厳しい上級生もいて大変でしたが、その時の経験が今の自分の土台になっていると思います?
大学生活は楽しかったですね?これまでの人生で一番楽しかった時期はいつかと聞かれれば、迷わず大学時代と答えます?気のいい人たちにたくさん出会えたおかげです?上下関係や利害関係のない学生同士の友人関係はとても大切だと思います?
Q6. 受験生に人間社会学部に入学したら、どのような学生になってほしいですか
大学を卒業する4年後、どんな自分になっていたいですか?「どうせ自分は…」と思っている人もいるかもしれません。そうした悲観的な現状認識から出発するのではなく、「なりたい自分」を出発点にして、大学時代をどう過ごすか、考えてみてください?そして、「なりたい自分」になるために、怖がらずに社会に飛び出し、様々な経験をしてほしいと思います。