筒井 晴香先生
「割りきれなさ」を大事に
筒井 晴香(TSUTSUI Haruka)/社会デザイン学科
東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻博士課程単位取得退学。博士(学術)。
東京大学「共生のための国際哲学研究センター」(UTCP)特任研究員、東京大学大学院医学系研究科医療倫理学分野 特任研究員、東京大学生産技術研究所 特任研究員等を経て、2024年度より現職。
Q1.先生の研究分野は何ですか。その研究を始めたきっかけは何ですか
専門は哲学、応用倫理学、ジェンダーです。近年は新しい科学技術が社会の中で生じる「倫理的?法的?社会的課題(ELSI)」について研究しています。前職では自動運転技術のELSIを研究していました。また、アイドルファン文化、2.5次元文化、「推し」文化といったポピュラーカルチャーについても批評?研究の仕事があり、自分自身もいわゆるオタクです。これらのテーマについても、メディア技術と倫理という観点から研究を深めていければと考えています。
きっかけは、何をしたいか定められず、なんとなく面白そうな分野には何でも首を突っ込んでみていた結果、いつのまにか文理横断的な研究をする人になっていた…という感じです。
Q2.先生が担当されている授業の中で、学科を決める1年生やゼミを決める2年生におススメの授業は何ですか
1年生の方は「人間社会学入門」の社会デザイン学科の先生の担当回にご注目ください。2年生は、科学技術と社会の関係に関心のある方は「応用倫理学」「リスク社会論」を。また、自分が扱ってきたポピュラーカルチャーやルッキズムといった話題については「テクノロジーと性」「身体論」で取り上げる予定です。
Q3.先生のゼミはどのような活動をしていますか。どんな雰囲気ですか
ゼミは2026年度から担当予定です。文献購読が中心になりますが、科学技術と社会の関係を考えるにあたり、自動運転バスやスマートシティの見学にも行ければと考えています。科学技術は暮らしの一部になっていくものでもありますから、まちや暮らしを実際に見て考えることは大事です。
また、いわゆるオタクカルチャー関連の研究をしたい方にとって、私のゼミは一つの選択肢になると思います。
私自身もオタクをやっていて思うことですが、自分で選んで好きなことをしているはずなのに、なぜか苦しかったり、「本当の」「正しい」オタクとは?などと悩み始めてしまったり…ということは意外と多いのではないでしょうか。期待と不安が入り混じり、簡単に割りきれないという点では、新しい科学技術も似ているかもしれません。楽しいのに苦しい…そんな「割りきれなさ」をぜひ大事にしてください。完全に「割りきる」ことはできなくても、葛藤の根に光を当てて多少なりとも見通しをよくできるのが、ことばや概念によって考えることの力だと思っています。
Q4.先生のゼミでは、どのような卒業論文のテーマがありますか
ゼミは2026年度から担当予定です。哲学や応用倫理学、科学技術社会論、またポピュラーカルチャーに関する文献研究に関心がある方の卒業研究を担当できると思います。「こんな研究をやってみたいんだけど、どんな文献を読めばいいか」など、お気軽にご相談ください。
Q5.先生の大学時代の楽しかった思い出は何ですか
大学時代は、中学から続けていた合唱に打ち込んでいました。学業の方では研究室の仲間と読書会をしたりご飯を食べにいったり、華やかな雰囲気ではなかったですが、日々楽しく議論していました。当時から漫画やアニメのオタクではありましたが、今の主な趣味である観劇を始めたのは大学時代より後です。何歳になっても新しい楽しみとの出会いはあるものです。それに、大学時代に何かに打ち込んだり、見識を広めたことで、あとあと色々なジャンルを楽しめる素養が身についた気がします。
Q6.受験生に人間社会学部に入学したら、どのような学生になってほしいですか
結論を急がず、粘り強く考える経験をしてほしいと思います。学生時代は、一つのテーマについて集中的に文献を読んだり、人と議論したりして、腰を据えて深く考えることができる貴重な機会です。同時に、矛盾するようではありますが、面白そうな分野や話題にはぜひ何でも積極的に触れてみてください。色々な学問分野を知ることができるのも大学時代ならではの経験です。