行実 洋一 教授 「プロジェクト基礎演習d」
「プロジェクト基礎演習dの概要」
現代生活学科では、プロジェクトベースの学修が基本にすえられており、主に2年次の「プロジェクト基礎演習」でプロジェクトの企画?立案の手法を学び、3年次以降の「プロジェクト実践演習」や「ゼミナール」で、こうしたプロジェクト案をブラッシュアップした形で実施?遂行することが推奨されています。
本授業はこうした位置づけにある「プロジェクト基礎演習」がa、b、c、dと並ぶ中の1つですが、それぞれは担当教員の専門領域の違いにより、地域密着?地域創生を目指すものや、SDGs?環境経営などを志向したものなど、立案されるプロジェクトの色合いが異なります。
その中で「プロジェクト基礎演習d」は、メディア系の実務家教員である自分が担当ということもあり、より企画広報、宣伝プロモーション、あるいはアプリ開発を志向する学生が毎年多く履修します。
起業家マインドを養う
「女性が社会を作る」ことは、ただのスローガンではなく、もはや当然の時代の趨勢です。そうした中にあって、実際に過去3度ほど起業してきた自分の目から見ても、敷居はどんどん低くなっていますが、女性によるスタートアップはまだまだ少ないのが実情です。しかし、実際に「起業」するかどうかに関わらず、今の時代、企業社会の中であっても、あるいは生活の場においても、こうした進取の気風、起業家マインドは欠かせない要素であり、そうした精神を育むことは女子大の教育に欠かせない要素であるように思われます。
幸いなことに、本授業をベースに、これまで3年次以降に、実際のECサイト運営(韓国のアイドルグッズ輸入販売!)や電子出版(マンガ。作者がプロ並みの腕があったので)、人気声優の朗読CD販売(クラウドファンディングで資金調達し、販売開始後、数時間で完売)したケースが生まれたり、ゲーム会社に相談して実現まであと一歩まで漕ぎつけたゲームアプリ開発もありました。また同じくアプリ開発ではローンチ目前で、新聞で他大の学生グループ(東大と慶応)がほぼ同じアイデアで会社を起業したのを読み、学生らとため息をついて断念したこともありました。そこまで派手でなくても、大学周辺の散策マップや防犯マップ、学生のファッション図鑑(日野と渋谷、どう違う笑)の作成といったものもありましたし、今に至るまで改良して使われている、やや派手な学科パンフも、そもそもこの授業で作られたものでした。
こういった形で、授業で切磋琢磨したプランが、多少なりとも現実化する楽しみを学生らも味わえたのではないかと思います。
「誰でもメディア」の時代
一方、これまで自分はテレビ局で長年番組制作に携わり、人に何をどうやって伝えるか、その技法から効果、危険性を日々学んできました。本授業では、自分達が立案したプロジェクトのプレゼンテーションが行われますが、こうした経験をベースに、その論理構成から話し方、聴衆への興味関心をどう励起するかといったことが細かく批評されます。コミュニケーションの手法は一対一の個人と、教室という限られた聴衆、さらには数百万、数千万という大衆のレベルでは当然違いますので、それぞれに応じた工夫が求められます。
一方で、かつて大衆へのコミュニケーションがマスメディアに独占されていた時代は過去のものとなり、誰でもネットを通じてマスコミュニケーションが可能、いわば「誰でもメディア」の時代です。だからこそ、こうしたプレゼンテーションに代表される、コミュニケーション技法を学ぶことは、今の時代、必須であり、プロジェクトのチームと「協働力」を養いながら、そうした力を育てることが重要だと思います。
ベスト?ティーチング賞を受賞して
授業は確かに鍛錬?修養の場ではありますが、その一方で「伝えること」は「楽しい」ことでもあります。テレビという場で、長年、視聴者の心の琴線に触れること、感動させること、そして笑顔を生み出すことを信条としてきた自分にとって、授業がつまらないものになってしまっては元も子もありません。従って、授業は可能な限り、和気藹々?談論活発な形で進めることを心がけました。そうした点が学生たちに支持されたのであれば、まさに教員冥利に尽きる結果だったと思います。今後も学生たちが「学びを楽しめる」ような、高い視聴率、もとい、支持率の授業を心がけたいと思っています。