【JOIN! no.7】食生活科学科 奈良一寛研究室×内沼きのこ園×西武信用金庫「原木しいたけの商品開発と6次産業の活性化」
パートナー:内沼きのこ園
西武信用金庫
担当教員:奈良一寛准教授
参加学生:納富千弦(生活科学部 食生活科学科 管理栄養士専攻4年)
実施期間:2017年3月 ~ 2018年3月
原木しいたけの6次産業化に取り組む「内沼きのこ園」と、地域密着型金融を推進する「西武信用金庫」。同じ地域にある実践女子大学からは奈良一寛准教授の食品化学研究室が参画し、6次産業のさらなる活性化に繋がる商品開発を提案しました。食品化学の観点から栄養や旨味成分の増減も調べ、レシピに活かすことができました。
(取材日:2018年3月14日 内沼きのこ園にて)
連携の経緯?地域を核とした三者連携?
都内の農業の大半を担う多摩地域を営業地域とする「西武信用金庫」は、産学連携による課題解決支援や地域活性、SocialGoodな地域産業支援に熱心で幅広いネットワークを持つ金融機関です。一方、「内沼きのこ園」は、自然との共生や食育まで考え、難しいと言われる原木しいたけ栽培と地域を巻き込んだ農業活性、6次産業化に取り組む生産者。今回は、「西武信用金庫」から食生活科学科を持つ実践女子大学にお声がけいただき、6次産業の活性化をテーマとした連携をコーディネートしていただきました。
注目される6次産業化と産学連携
農業の6次産業化は農林水産省が推奨する取り組みのひとつ。農業(一次産業)に、加工(2次産業)やサービス?販売(3次産業)までも一体化させ、農業の可能性を広げ新たな付加価値を生み出そうとするものです。これらの取り組みに、大学が技術面?研究面?アイデアなどで協力し、大学?企業の双方にとって有意義な結果を残すことが産学連携のメリットであり、近年、注目されています。
商品開発からの課題解決アプローチ
「内沼きのこ園」は青梅市にある観光農園。原木栽培によるしいたけの生産に加え、観光農園を通して販売?加工?体験の場づくりも展開し、6次産業化に取り組んでいます。内沼社長は、原木栽培による自然との共生や食育?農業問題にも造詣が深く、青梅の農業団体の課題、原木栽培の難しさ、原木栽培と菌床栽培の違い、味の差など、様々な現場の話を伺うことができました。食品化学研究室では、しいたけの旨み成分「グアニル酸」や、カルシウム吸収促進の栄養効果、フードロスに着目。6月には集客力UPを狙うレストラン提供メニューとお土産商品を提案?試作して内沼社長ご夫妻に試食いただきました。さらにその後、原木しいたけ粉末について、加熱の温度と時間によるグアニル酸量の変化を分析。卒業論文としてまとめ、3月に「内沼きのこ園」と「西武信用金庫」へ報告を行いました。特に旨み成分「グアニル酸」の分析は、時短レシピの提案や、原木しいたけ自体のアピールポイントの発見に寄与するなど、商品を実生活に取り入れやすくするヒントになりました。
本学ならではの地域を生かした産学連携
ビジネスで食品や食生活を考えるとき、欠かせない視点が地域や産地です。実際の生産現場での本物の課題に向き合えたことはもちろん、大学だけでは食品をどう扱うかに終始してしまうところを、どこでどのように採れた食品なのか、それをどう活かすかまで考えられた点は大変有意義でした。多摩地区は都内の農地面積の約7割を占めており、東京の先進性を活かした農業?地域活性の新しい取り組みに積極的な地域です。同じ地域であるため、消費者である学生と生産者が身近であることも今回の取り組みのメリットでした。食生活科学科と地域密着型の産学連携という、非常に相性の良い連携ができる点は本学の特色であり、今後も継続?蓄積していきたい分野です。
Interview
参加学生から
しいたけは、ふだん誰もが食べている身近な食材ですが、「原木しいたけ」に注目し、考えることは初めてでした。
また、店頭でもよく見れば原木しいたけを見かけることはありますが、原木と菌床の違いを本当に理解している人は少ないと思います。今回、原木しいたけの生産現場の現状を見ることができ、その厳しさと共に大切さも感じました。
「しいたけが苦手な方でも食べられる」レシピのために、研究室の仲間にはたくさん協力してもらいました。周りの声はとても新鮮で、レシピ開発ではそうした客観的な意見がとても役立ちました。調理も手伝ってもらい、夜遅くまで作ったときもありました。「内沼きのこ園」や「西武信用金庫」の皆さん、奈良先生にも本当に良い体験をさせてもらい、いろんな協力があってこうして発表までできたことに感謝しています。
「内沼きのこ園」から
産学連携を通して、原木栽培や東京の農業、食品の流通に関心を持ってもらえたらと思っていましたが、私たちに大いに得るものがありました。6次産業化は消費者への意識改革でもあると考えています。レシピというアイデアをもらえたことに加え、先生というプロの目から、データ分析という根拠や客観視をいただけたことは、大変刺激になりました。
「西武信用金庫」から
提案メニューのうち、カルシウム摂取に配慮したリゾットや、3大旨み成分が入ったホットドッグは、POPやパッケージでの訴求による販促アイデアにも繋がります。また、リゾットに使う小松菜も東京野菜にするなど、食材のコラボレーションの可能性も見出せました。「内沼きのこ園」や多摩エリアのブランド化?ストーリー創りのヒントが豊富だったと思います。
<本件に関する問い合わせ先>
実践女子大学研究推進機構研究推進室
TEL:042-585-8821