【JOIN! no.14】現代社会学科 井上ゼミ × 山梨銘醸?小林順蔵商店 「酒造とSDGsを考える」
パートナー:山梨銘醸株式会社?株式会社小林順蔵商店
担当教員:井上綾野准教授
参加学生:井上ゼミ3,4年生
実施期間:2021年10月1日~12月8日
現代社会においてSDGsが注目されており、学ぶ機会も増えています。今回、SDGsに積極的に取り組む酒造会社である山梨銘醸株式会社との連携を行いました。コロナ禍により現地視察等は叶いませんでしたが、調査や発表を通じて企業の方の熱意や考えに触れるとともに多角的なアプローチを検討することで、自らの将来にもつながる貴重な機会となりました。
企業が生き残るための「SDGs」
日本酒の「七賢」ブランドで知られる山梨銘醸では「SDGs」という言葉が広く一般に知られるようになる前から、SDGsに着目していました。SDGsは、企業の直接的な利益に繋がりにくい部分もあり、特に中小企業から敬遠されやすい現実がありました。山梨銘醸はそのような状況を踏まえたうえで「中小企業にこそ、生き残るためにSDGsに繋がる製品や企業努力が必要である」との考えのもと、積極的に取り組んでいます。
今回の連携では「「酒造」の中にどのようにSDGsを取り入れて企業メリットを創造するか」をテーマに、井上ゼミの3、4年生が6つのグループに分かれ、多方面からのアプローチで考えを深めていきました。
「女子大生がターゲットではない」テーマ
一般的に産学連携では、学生ならではの提案や、女子大学という特長を活かした取組みが多いのですが、今回は違いました。山梨銘醸?小林順蔵商店からは当初から「女子大生はターゲットにしていません。もっと上の年齢層がターゲットである」と伝えられました。そして、日本酒の生産から消費、再利用、地域との関わり合い、企業としてのSDGsの捉え方など幅広い内容の話を伺いました。ターゲットではないが、企業メリットを創造する案を考えるパートナーとして、学生だからと安易な内容にはせず、学生たちが圧倒されるほどの熱量で話してくれました。その様子を見て井上准教授は「酒造は地域を支える基幹産業になっていることがとても多いんです。お酒を飲む?飲まないではなく、地域の基幹産業と社会との関わりを考えるうえで、日本酒は適した商材ではないかと思います。」と話していました。
「現実」に直面しての成長
連携を進める中で、酒造や酒蔵などの現地に赴き、大学にいるだけでは得られない経験を学生がしてくれることを期待していましたが、コロナ禍により、現地調査はかないませんでした。学生の中には、既にSDGsの様々な事例を学び、小論文コンテストに応募したり、卒業論文のテーマにしたりしている学生もいましたが、当初の学生のアイデアは、既に実施済みであったり、検討済で何らかの事情で実施不可能であったものがほとんどでした。中間報告へのフィードバックをいただきながら、6グループが、ツーリズムやモーダルシフト、資源リサイクル等、様々な観点から最終提案につなげていきました。「モノやサービス自体だけでなく、製造?販売や物流などの過程にも目を向け、ゼミ全体でこれほどまでに多角的な視点を持てたことは確かな成長でした」と井上准教授。限られた環境の中でも、グループ内でのディスカッションや研究を続け、提案につなげていけたことは、学生にとっても社会人としての自分につながる機会となりました。
地域の異業種を結ぶ提案
今回の提案で特に高く評価されたのはアパレルの余剰在庫と端材を活用した緩衝材の提案でした。酒造から少し離れ、アパレルの余剰在庫という業界問題から入り、その活用先として、酒瓶の輸送に欠かせない緩衝材に目を向けました。また、提携先の候補として挙げたアパレル企業は、輸送コストも考え山梨県内の企業とし、地域を活かした製品作りかつ緩衝材にしたときのオシャレさにも配慮するなど、着眼点や実現可能性が高く評価されました。
人間×社会×ビジネス
昨今は、ただモノが売れればいいという時代ではなく、人間らしい暮らしの健やかさと持続可能な側面を持ち、社会的向上にも繋がる消費の考え方なども注目されています。人間社会学部でマーケティングを学ぶことは、商学部や経営学部では得難い「社会学的な視点」に立って考えられるというメリットがあります。井上准教授は学生たちに、この実践女子大学という場、人間社会学部という様々な学問を学べる学部の長所を活かし、コミュニティや地域、関わり、文化など、SDGsに限らず社会との接し方を重視したマーケティングを考えられる人材となり、自らの将来を切り拓いてほしいと考えています。
参加学生Interview
(鈴木さん)
初めの案は既に検討済みというお話を聞き、軌道修正する中で、以前取り組んだアパレル業界が抱える端材の問題と組み合わせて考えたらどうかと思いつきましたが、一番の課題はコストでした。どんなに頑張って案を考えてもコストの壁に塞がれ、ある意味、それが学生なんだな…と痛感しました。社会人になったらしっかりコスト面を見て、こういう考え方は就活でも役に立つと思いました。
(室橋さん)
私たちは直接のユーザーというわけではありませんでしたが、その分、自分たちの視野を広げられたと感じました。酒造の話の中のこだわりや理由も、他のグループの考えも、自分の中にはない視点でしたし、だからこそ、刺激を受けてアイデアを考えられたのだと思います。企業とのコラボは、企業から現実の道を与えられ、そこに現実に即したフィードバックがある点がとても新鮮で、より自分の身についた実感が持てました。
(丸山さん)
初めはSDGsの17目標のどれにも当てはまらない気がして難しく感じていました。コスト面の問題も難しかったです。例えば、ボタンがあると端材にできないので、そのために結局、ムダが生じてしまうとか。そういった中で、今回の企業コラボでは想像力(顧客を想像すること)の必要性を何度も痛感しました。企業がどうありたいのか、どうなっていくのか、今どうしたいのか、考えられる人間になりたいと思います。
<本件に関する問い合わせ先>
実践女子大学研究推進機構研究推進室
TEL:042-585-8821