【JOIN! no.15】食生活科学科×株式会社東京サマーランド 「夏季限定メニューの提案」
パートナー:株式会社東京サマーランド(東京都あきる野市)
担当教員:中川裕子准教授
参加学生:稲穂未希、裾分希、高田夏海
実施期間:2020年11月?
株式会社東京サマーランドと実践女子大学との連携は3年前に遡ります。以来、良好な関係と連携が続いており、今回は2019年に現代社会学科の角本伸晃教授のゼミでの「夏季の飲食に関する新メニュー開発に関する分析と提案」を受け、実販売を目指し、中川裕子准教授のゼミにてメニュー開発?提案を行いました。オンラインでのプレゼンテーションや試食会を重ね、アサイーを用いたパフェと色の変化が楽しめる青いレモネードが完成しました。
客観的視点を根拠として
初めに株式会社東京サマーランドからは、パーク内の夏のプールサイドで楽しめる「映えるワンハンドスイーツ」を、というご要望がありました。これは角本教授のゼミでも出ていたニーズです。学生たちは「自分の好みだけでは決められない」「何か根拠がなくては」ということで、学内の100人にアンケートをとり、開発するメニューの方向性を絞っていきました。ゼミ内で協議していく中で、今のトレンドでもありインスタ映えもするアサイーパフェとレモネードへと絞られていきました。アンケートのおかげで客観的視点に立ち返ることができ、美味しさだけでも見た目だけでもなく「食べたいと思えるインスタ映えにしよう」と全員の気持ちが1つになっていきました。
身をもって体験し、自ら考え、動く
学生たちにとってはアンケート作りや実施、集計も初めてのことでした。それに加え、本取り組みでは発想力や、外部からのシビアな意見に対してどの様に対応し、向上させていくかという力も求められます。いずれも、「実体験」あってのもので、座学では為し得ない機会となりました。教員や企業様からの問いかけに対し、初めは発言も少なかった学生ですが、後半は自信がついたのか、自分の言葉で意見を述べられるようになりました。
さらに、質疑応答の中で想定外のことがあれば、「次回までに試しておきます」と答えたり、広報施策のアイデアを求められた後は、自分たちでSNSを活用してみる等、積極性?自主性などに大きな成長が見られました。
好き嫌いでない流行の分析
今回キーワードである「インスタ映え」に対しての調査も時間をかけ積極的に行いました。現在のインスタ映えの流行?傾向を分析し、「多層(層状の彩り)」に着目。また、ヘルシーさでも人気のあるアサイーや甘酒、バタフライピーを使った美しいブルー、近年のレモネードの流行等、自分たちでトレンド調査やInstagram?画像検索をしながらメニュー開発に役立てていました。本取り組みに参加した学生は元来、皆、商品開発の仕事に興味のある学生でした。入学当初から関心を持っていた学生にとっては、食に関する幅広い知識を学んだこと、また、今回のターゲットが等身大の自分であることの強みを活かし、実際のメニュー開発に携わることのできる貴重な体験になりました。
「食と地域」への着眼
本取り組みでのもう1つの特筆すべき点は、「地産の食材」を活かしてメニュー開発ができた点です。元々、株式会社東京サマーランドは地域貢献?地産地消への意識が高く、あきる野市内にある養蜂場で採れた蜂蜜を食材として取り入れることができました。「東京サマーランド」というテーマパークの季節限定メニューに、地産地消のメニューはマッチしていました。その土地の味わいを、その土地での体験と共に味わうという楽しさを提供できるという、大変意義ある取り組みに直接関わることができたと思います。商品開発では、食材選びに地域性を取り入れるといった視点も必要であることを改めて学ぶことができました。これから社会に飛び立つ学生にとっても、この「食と地域」への着眼は必ず活かされるのではないでしょうか。
「食」に関わる者として、企業連携を考える
メニュー開発には苦労もありました。「商品」である以上、お客様に提供する店員の方にとって誰でも手早くでき、品質にバラつきが出ない必要がありました。そのひとつに、きれいな層を生み出すためのホイップクリームが障壁となって立ちはだかりました。
そこで、中川准教授からエスプーマ(※)を取り入れることを提案。調理工程が容易になるだけではなく、舌触りが良いという特徴も持たせることができました。
「学生がつまずいた際は、ほんの少々ですが解決に導くためのエッセンスを投げかけることも必要でした。投げかけるといっても、学生にとって未知の知識?刺激によって滞りを流すような。あとは皆、自分たちの力で工夫を凝らしていました。自ら考え手を動かし、ものづくりに生かしていく。このような実体験こそが食生活科学科が目指す学びです。連携は大掛かりなものでなくても、例えばレシピコンテストなどでも学外に目を向ける機会となるので、多くの学生にチャレンジしてもらいたいですね。」と中川准教授。企業連携は学生にも、若者視点を望む企業にも双方にとってメリットがあります。さらに学生たちにとっては自分のこれからのキャリアを考える上で、大変有意義な学びとなりました。
※エスプーマとは、泡立て器やミキサーを使わずにホイップクリームを作るものです。
参加学生Interview
(稲穂さん)
とにかく試行錯誤しながら工夫を凝らしました。調理の操作ひとつをとっても出来栄えに影響がでます。試作会では氷に当てながらレモネードを注ぐ、アサイーに組み合わせる食材に牛乳や豆乳、甘酒を検証したりとか。青いレモネードでは食欲が沸かないというご意見を聞き、混ぜて色が変わる楽しさをアピールしたり…。食べてくれるターゲットの方々を想像しながら、1つ1つ考えて進めていきました。
(裾分さん)
自分が食べるだけの調理なら原価や調理工程は気にしませんが、お店の売上やオペレーションに関わるので多くのことを考えました。トレンド調査の結果で提案した「レモネード」も、企業の方からは疑問をなげかれられたり。。流行していることを納得してもらうための裏付け調査の必要性を実感しました。本当に、「食」に対して幅広い視点から考え続けた期間でした。
(高田さん)
アサイーは小腹がすいたときにちょうどよく、甘酒を使ってヘルシーさも大切にした自信作です。販売結果では意外にご高齢者にも「噛まなくていい」と好評であったとお聞きしました。「映え」のポイントである多層も、初めは層にならなくて苦労しましたが、分量や温度の調整を何度も試し困難を乗り越えることができました。食生活科学科は興味があれば1年生から企業連携のチャンスがあります。後輩の皆さんも、ぜひ、視野を広くチャレンジ精神を持って楽しんもらいたいです!
※夏季限定メニューは、2021年7月22日から9月30日まで東京サマーランドパーク内の直営店舗「フェニックス」で販売されました。購入いただいたお客様にも大変高評価をいただきましたが、店舗での販売において、試作時にはわからなかった問題点もいくつか見られました。現在、2022年夏の販売に向けて、調理工程の見直しを後輩達が引き継いでいます。
<本件に関する問い合わせ先>
実践女子大学研究推進機構研究推進室
TEL:042-585-8821