日本近代文学研究 ブルナ ルカーシュ先生
近代現代文学研究 ブルナ ルカーシュ先生
19世紀後半以降の日本近代文学の成立?発展過程において、外国文学の翻訳が極めて重要な役割を果たしました。多くの日本の文学者たちが外国文学を翻訳で読み、そこから学び取ったことを積極的に自分の作品に採り入れ、独自に展開しました。しかし、日本近代文学の歴史を考える時、私たちが翻訳の影響力を軽んじる傾向があります。
この授業では、近年、日本国内外で盛んに行われるようになった翻訳研究という学問の基礎的な知識を確認したうえで、近代の翻訳文学について学びます。作家や作品の周辺を調べ、原文と訳文の比較分析を行いながら、翻訳の諸問題について考えていきます。忠実な翻訳なんてもの存在しない、翻訳は原作の〈書き直し〉であることを念頭に、翻訳において原作がどのように生まれ変わっているのかを辿っていきます。
前期の授業では、ディケンズ、ツルゲーネフ、モーパッサンなど、日本の近代文学に多大な影響を及ぼしたヨーロッパの文豪たちの短編小説を取り上げ、彼らの作品がどのように日本語に翻訳されてきたのかを追究していきます。後期の授業では、井上哲次郎の『孝女白菊詩』や徳冨蘆花の『不如帰』、二葉亭四迷の『其面影』など、日本近代文学の初期英訳を取り上げ、20世紀初頭の西洋では日本近代文学がどのように翻訳され、またどのように受容されていたのかについて勉強します。
日本語と英語のテキストを突き合わせて分析を行うことに重点を置くこの授業の内容は、英語の苦手な学生にとって、分かりづらいところもあるかもしれませんが、翻訳を通して文学と文化の違いについて考えることが非常に刺激的かつ興味深いアプローチだと思います。この授業では、翻訳というものは、異なる文化圏をつなげる〈架橋〉であることに学生が気づきます。