ことばと社会(柳田亮吾先生)
※2023年度までのカリキュラムに基づく内容です
授業のテーマ
英語圏の社会、あるいは日本社会における言語使用:
言語と地域/社会階層/民族/ジェンダー/年齢、語用論、談話分析
授業の魅力
?教科書で言語学の理論や研究を学びだけでなく、町に出て、足を使って(あるいは日本以外ならばYouTubeなどの動画を通して)、日々の生活で使われていることばを実際に見聞きし、分析?考察します。
?日本以外の社会における言語使用について知るために、この授業では外国人講師をお招きして、お話を伺います。
学生の身につく力
?英語圏の社会、あるいは日本社会における文化的?言語的多様性への理解
?英語圏の社会、あるいは日本社会におけることばに起因する問題への理解
?日常生活で用いられている言語を観察し、分析?考察する力
?中等学校及び高等学校における外国語科の授業に資する知見
授業の内容
この授業では、言語学の一分野である「社会言語学」の基礎について学びます。聞きなれない学問領域かもしれませんが、一言でいうと、社会でどんなことばがどのように使われているのかについての研究です。
例として、一番身近な日本を取り上げてみると、日本社会ではどのようなことば使われているでしょうか?この答えを知るために、もちろん書籍やインターネットを用いて調べてもよいのですが、まずは町にでて実際に使われていることばを調べてみましょう。近年、日本に移住する人に加えて、仕事や観光など一時的に日本に滞在する人も増えているため、町中で多言語表示を見かけることもあたりまえになってきました。みなさんも電車で通学する際に、日本語以外の表記(中国語?韓国語?英語など)を目にしたり、日本語以外のアナウンスを耳にしたりしたことがあると思います。また、実践女子大学渋谷キャンパスを出てすぐ近くの信号機のスイッチも多言語に対応しています(左写真)。これをみると、11の言語で信号の情報が発信されていることがわかります。加えて、目の不自由な方のために点字での説明もあることがわかります。また、東京を離れて大阪に行き、人々が話すことばに耳を澄ましてみると、同じ日本語でもイントネーションや語彙が微妙に異なることに気がつくはずです(方言)。さらには、話している人が男性か女性か、また、話している人の年齢によってもやはり使われていることばが異なるかもしれません。このように、町にでて、みなさんの周りで使われていることばを注意深く見聞きしてみると、日本という社会をことばの観点から分析?考察することができます。
また、日本以外の社会の例も見てみましょう。次の写真は、イギリスはロンドンの信号機のボタンを撮影したものですが、表記は英語のみとなっています(点字もありませんね)。イギリスも日本同様、社会に様々な文化的?言語的な背景を持つ人々が生活していますが、表記はほぼ英語のみとなっているようですね。
最後の写真は、電車の車両間のドアの表記です。4つの言語(ドイツ語?フランス語?イタリア語?英語)で「自動ドア」と表記されています。さて、これはどこで撮られたものでしょうか?答えは、4つの公用語を持つ多言語国家スイスです。
簡単ではありますが、日本、イギリス、スイスを比べてみると、それぞれの社会でどのようなことばが使われているのか、そして人々が公共の場でどのことばでコミュニケーションを行うべきと考えているのか、その意識を垣間見ることができます。このようにことばと社会について考えるのが社会言語学であり、この授業の目的となります。
教員からのメッセージ
テレビやスマホ、町中や電車の中の広告を通して、また、家族や学校のクラスメイトや先生とのコミュニケーションを通して、私たちは日々の生活の中で絶えず、様々な形でことばを使っています。私たちの多くにとって、ことばを使うことはあまりに「あたりまえ」のことなので、私たちがことばをどのように、何のために使っているのかを改めて考える機会はあまりないかもしれません。この授業ではそうした「あたりまえ」に疑問をもち、私たちのことばづかいの背後にある原理や規則、あるいは人間の心理や価値観、社会の構造について考えていければと思います。