海外というチャンスの活かし方
人間社会学科
松下慶太 准教授
2009年8月に北京の清華大学での語学研修に引率教員として参加させていただきました。北京は自分が大学1年生だった頃、初めて海外旅行先 として来て以来ですので約10年ぶりの滞在となりました。2008年のオリンピック開催後だったということもあり、街は非常にきれいに整備されており、自分が訪れた時と比べてまさに隔世の感でした。僕の場合はみなさんのように語学研修ではなく1人旅でした。中国語も読めず、話せず、という手探り状態で、現地に学校に行って勉強することもなく、ぶらぶらと街を歩いていたので気ままに過ごせた気がします。
その一方で、きちんと中国語を勉強してコミュニケーションしてみたい、もっと現地の人と一緒に行動してみたい、という思いがわきあがってきたのを覚えています。研修に参加されたみなさんは、最初は緊張で固くなっていましたが、中国語のレッスンが進むにつれてコミュニケーションが取れるようになってくると普段の?みなさんが見られるようになってきました。また、語学のレッスンだけではなく、太極拳やお茶、京劇など文化体験を通じて、徐々に行動範囲を広げながら「中国」の理解を深めていけたのではないでしょうか。僕も仕事や趣味でいろいろ海外には行ってきました。最初は先にも書いたように北京でした。その後、旅としては南米に1年、留学としてはフィンランドに1年滞在しました。
その間にも数週間から1ヶ月ほどの期間で他にもいろいろな国を訪問しました。そうした経験の中で異文化あるいは海外に行く、あるいは滞在することの意味を考えてみると、自分の可能性と限界を知るまたとないチャンスだと思っています。やってみれば意外にできるものだな、と自信になる一方で、こんなこともできなかった、という自分の限界も実感できます。その中で自分がやりたいこと/やりたくないこと、できること/できないこと、と真剣に向き合うことができるのではないでしょうか。
これから留学する、あるいは考えているみなさんには「好奇心」を持っていき、「悔しい思い」を持ち帰って欲しいと思います。海外留学に備えて事前に語学や文化、歴史、社会について勉強していくと思います。残念ながらいくら念入りに準備をしていっても事前の情報と異なっていたり、初めてのことに直面したりすると思います。そんな時にはぜひ好奇心を持っていろいろ試してください、あるいは現地の人に聞いてください。そこで、語学力の問題で自分の言いたいことが言えないことがあるかも知れません。また、逆に日本について質問され、そのことについて知らなかったりすると答えられないかも知れません。このような「悔しい思い」は帰ってからさらに次はこうしよう、というステップにつながると思います。
留学するか迷っている人はぜひ一歩を踏み出してみることをお勧めします。ユーキャンの2010年のテーマは「フミダス」です。現在は就職氷河期ですので資格取得を目指している人は多いかと思います。ユーキャンは資格を取るために一歩を「踏み出す」勇気を持って欲しいという意味を込めたのでしょう。ただ、海外への留学も資格取得に負けないくらい「フミダス」ことが必要だと思います。海外留学は旅行とは違い、準備や勉強、また現地の人とのコミットも深いものになります。先にも言ったようにそこではいろいろな「厄介ごと」が多いかも知れません。しかし、そこは勇気を持って向かっていって欲しいと思います。何かを「した後悔」よりも「しなかった後悔」の方が大きいのですから。