言葉の宝箱、開けてみませんか?~師走?初回~
みなさんはじめまして!国文学科リレーブログプロジェクトです。
初回は、1年生の3人が担当させていただきます。よろしくお願いいたします!
今回は、3人それぞれが自由に文章を書きました。最後まで読んでいただけると嬉しいです!
初めまして、こんにちは!国文学科のゆめと申します。
読書と音楽鑑賞、そして舞台やミュージカルを観に行くことが大好きな大学一年生です。
今回は第一回目、"初"回ということで、それに因んで私の"初"の出来事をご紹介いたします。
私の"初"の出来事は、今年の入学式でのこと。人生で初めてスーツを着たことです。
中学?高校生の頃は制服が正装だったこともあり、これまでの人生の中でスーツを着たことが無かったのですが、今年の入学式で初めてスーツに袖を通しました。十八年間生きてきて初めての出来事でした。もちろん、購入に際して試着はしたのですが、その段階では「大学生になるのだ」という実感は正直あまり湧いてきませんでした。しかし、いざその日を迎えてみると、期待や緊張など様々な感情が胸を渦巻き、そしてこのスーツが自分を少しだけ大人にしてくれたような気がして、思わず背筋がピンと伸びたような気持ちになりました。同時にこの時こそが、慣れ親しんだ制服に本当の意味で別れを告げた瞬間であったのだと、今になって思います。少しだけ……いや、かなり寂しくもあったのですが、新しい自分に生まれ変わることが出来た気がして、どこか嬉しくもありました。この時感じた不思議な気持ちは、今でも昨日のことのように思い出します。
そんな不思議な気持ちを抱きながら入学したこの大学で、何か新しいことにチャレンジをしてみたいと思い、この国文学科リレーブログプロジェクトの門を叩きました。
今でも言葉で何かを表現することが大好きなのですが、もっともっと好きになりたいです。
これから沢山の出来事を綴っていけたらな、と思います。
そういえば。
入学式と言えば、満開の桜が咲いていたことも思い出深いです。
“渋谷駅 人混み抜けた その先に ひらりふわりと 退紅の花”
拙作ではありますが、今でも目に焼き付いて離れないあの景色を。
ペンネーム ゆめ
国文学科1年のはるです。
4月に上京し、一人暮らしを始め数ヶ月。いつもテレビの中でしか見ていなかった東京という街で過ごすこと、知り合いがほとんど居ない空間で暮らすことにようやく慣れてきました。
そんな毎日の中でふと、私が今まで生きてきた街を思い出すことがあります。あの街で生きていたときの「あたりまえ」は今、存在しなくて、新しい「あたりまえ」を東京という街で作っています。だから、忘れないように、あの街での「あたりまえ」を少し、残しておこうと思います。
初雪
11月の終わり、冷たい風がドアからすり抜ける。出席番号が悪さをしたから、冬の寒さを感じやすい廊下側1番後ろの私。クラスメイトは皆机に視線を落としていて、時間を確認しようと顔を上げた時に見えた教壇の副担任は目を閉じていた。
昼食後の数学のテスト、ピン、と糸が張っているかのように張り詰めた空気感の教室、ドアの隙間から流れてくる冷たい風。今は、全部、嫌いだ。
時計の針が刻む一定のテンポが、x=の答えを導き出してくれる訳では無い。それでもその音は私の脳を侵食していき、計算を、積分を、数学をより複雑にする。
カリカリカリ、ペラペラ、それだけが響く教室。2日前から着始めた冬服のセーラーの重さ、校則の黒タイツ、膝より10センチ下のプリーツスカート。解けない数学の答えより肩の凝りの方が気になって、首をぐるりと回す。前の席に座るクラスメイトの学ランの首元にふと目を向けると、グレーの毛糸が数本、張り付いている。明日からは私もマフラーだな、なんて余計なことが頭に浮かぶ。ふわりふわりと風が足をくすぐり、寒さを際立たせる。いや、びゅーびゅー、と言っても過言では無い。
少しだけでも、と両足を擦り合わせるがそんなことは意味が無くて、学ラン長ズボンの彼らを羨ましく思う。
かちゃ、ペラ、ちくたくちくたく。
教室に、日常で意識することのない何気ない音が鳴り響く。40人がぎゅぎゅと詰め込まれた四角い箱の中。そんな密閉空間で、誰の喋り声も聞こえない今は、息をすることすらも許されないくらい窮屈だ。
壁にかけられた時計をまた見る、45分が経過。手元の小冊子、マークシート、えんぴつ、けしごむ。
考えるついでにまた、下を向きすぎて凝った首を回す。
その時、窓の向こう側に白い気配を感じた。
11月、ひんやりとした風、妙に暗い空。あぁ、きっと、これは。
その時、テスト終了を告げるチャイムが鳴った。
クラスメイトがペンを置く音がする。それと同時に、窓の方へ目を見やる。
窓から1番遠い席にいる私にも分かるように、彼らはやってきた。
「こんにちは」 35℃の 手のひらに 舞い降り溶けた 小さな天使
ペンネーム はる
言葉に代わるもの
最近、友だちの話でこんなものを聞きました。バイト先のレシートの渡す言い方が、「お返しになります」ではなく「お渡しになります」と先輩に厳しく指導された。レシートは
「返す」ものじゃなく「渡す」ことが理由らしい。
客からしたらそんな些細な違い気に留めたこと無かったなと思いつつ、ドキュメンタリーのテレビを見た際にも、同じような接客の気遣いがあったことを思い出した。ホストクラブでは、ホストの人がバースプーンでお酒を混ぜる時は、時計回りではなく反時計回りでまわす。 時計回りだと時間が早く過ぎ去って欲しい意味合いを持ってしまう。だから反時計回りにして、「帰って欲しくない」 というホストらしいキザな理由を持っているようだった。
私の中の記憶にも、中学の職場体験で料亭に行った実体験がある。いちいち椅子を絨毯のよく分からない印で統一したり、机に乗ってるセルフサービスの物とかも向きや位置にこだわったり、とにかく細かく丁寧に配慮がされていた。
接客業は、たぶん、奥深い。目に見えない意味を、言葉や行動で表してる。誰に気づかれずとも、誰に褒められずとも、常に客を第一に考えられた意味がそこにある。そしてその意味を、それぞれの商品で伝えようとしている。具現化して信念や理念をそこに込めてる。
理解したとて、何かが変わるわけではないんだけど。次にショーウィンドウを見かけた時は、言葉の色が見える気がした。
ペンネーム さくらんぼ