<特集>LINEスタンプ「実女(じつじょ)訳ひとこと百人一首 Ver.1」の制作
「難しい」古典文学をもっと身近な存在に
百人一首を『使ってみたくなる』LINEスタンプへ
「むかしの日本人にとって生活に密着した存在だった和歌を、「現代のコミュニケーションツール?LINEスタンプにしてみよう!」そんな発想から始まったこの取り組み。学生たちは歌や歌人について理解を深め、魅力的なスタンプを創り上げました。
今回の取り組みは、本学と富士ゼロックス(株)との共同研究「古典籍に親しみ、古典文学を学ぶことの喜びを生み出す問題発見型の教育方法の創出」の一環として2015年度の文学部国文学科専門科目「中古文学基礎演習2(担当:近藤みゆき教授)」の中で行われました。
まず、近藤教授と学生13名が百人一首の中からスタンプに適した歌を選定。その後、各歌にはどのような注釈があるか、歌人の人生、どのような状況でその歌が詠まれたかなどを分担して調べました。その結果をクラウド型ツール「Ever note」に集約し、内容を共有。全員が各歌について理解を深めた上で、イラストデザインと、歌の要素を凝縮する「ひとこと」を決定しました。2016年11月からLINECreatorsMarketにて販売もスタートしました。
こんなスタンプがあります
和泉式部
(いずみしきぶ)
あらざらむ
この世のほかの
思ひ出(い)でに
いまひとたびの
逢ふ事もがな(五六番)
【歌の意味】私は間もなく死んでしまうでしょう、あの世への思い出として、もう一度、あなたにお逢いしたいのです。
紀貫之
(きのつらゆき)
人はいさ
こころもしらず
故郷は
はなぞむかしの
香ににほひける(三五番)
【歌の意味】人は、さあどうでしょう、心は変わりやすいものだからわかりません。しかし、昔なじみのこの里では、梅の花が昔のままの香で、美しく咲いていますよ。
中納言行平
(ちゅうなごんゆきひら)
立ちわかれ
因幡の山の
峰におふる
まつとし聞かば
いま帰りこん(十六番)
【歌の意味】私はあなたとお別れして赴任先の因幡国へ行きます。その稲羽山の峰に生えている松の名ように、あなたが私を待っていると聞いたら、すぐに帰ってきましょう。
学生たちはこんな風に使っています
例:「着きました」
制作者より
恩田 美咲さん
(イラスト担当、国文学科3年)
イラスト制作にあたっては、構図の重なりを避けたり、それぞれの個性を表せるよう歌人の髪や目の色を調整するなど、工夫を重ねました。「ひとこと」に合った絵にするべく他のメンバーと話し合いながらポーズを決めることもありました。
立石 希沙来さん
(リーダー、国文学科3年)
私たちの所属とスタンプの独自性を主張するため、実践女子大学訳を略して「実女訳」、イラストに一言を添えて歌や歌人を表現する趣旨から「一言」という言葉を選び、表記のバランスを見てこのタイトルに。愛着のあるものになりました。
寺嶋 舞菜さん
(リーダー、国文学科3年)
恋の嘆きや恨みを歌ったものが多く、LINEスタンプとして活用できる「ひとこと」を定めていくのに苦労しました。人物のほか、花烏風月をデザインしたスタンプもありますので、たくさんの方に使っていただけたらうれしいです。
近藤 みゆき 教授
(国文学科)
特にご注目いただきたいのは、スタンプの「ひとこと」です。学生たちは歌と歌人に関する自発的な学習を重ね、「スタンプとして実際に活用される」という点にも徹底的にこだわって各歌の言葉を決定していきました。「創る」目的のもとで古典文学の再解釈に取り組むと、学生たちは通常の基礎演習をはるかに上回る力を発揮することを実感しました。
- 全スタンプ(40種)と各歌?作者名?近藤教授による訳?解説、またスタンプのご購入に関する情報はこちら
※このLINEスタンプの売上金は、近藤教授と学生たちの意向により、大規模災害で被災した学生や生徒を支援するための学内奨学金に全額充てられる予定です。
第2弾も制作中!
現在、第2弾の制作も進んでいます。各歌の「ひとこと」は同じ内容を踏襲しながら、3頭身のキャラクターを用いた、より可愛らしいデザインになっています。イラストは卒業生の酒井亜耶乃さん(国文学科2015年卒業)が担当。こちらは2017年度中に発売予定です。ぜひご注目ください!
※学生の学年表記は2016年度のものです。