上野 亮先生
社会と情報の関わりを見つめ、
地域の課題を解決
上野 亮
Ryo UENO
現代生活学科
専門分野?専攻
社会情報学(情報社会論、地域情報化)、学習支援システム
Ryo UENO
現代生活学科
専門分野?専攻
社会情報学(情報社会論、地域情報化)、学習支援システム
[プロフィール]東京工科大学メディア学部メディア学科卒業、東京工科大学大学院バイオ?情報メディア研究科メディアサイエンス専攻博士前期課程修了。その後、民間シンクタンクに入社。同社退職後、青山学院大学大学院社会情報学研究科社会情報学専攻博士後期課程修了。青山学院大学社会情報学部客員研究員および非常勤講師を経て、2022年より現職。専門は社会情報学(情報社会論、地域情報化)、学習支援システム。
指導教授に影響を受け、社会情報学研究の道へ
大学進学時はメディアクリエイターの仕事に興味があり、メディアコンテンツの制作手法を学べる学部に入学しました。映像を撮ったり、動画を編集したり、ネット放送に挑戦したりしていましたが、3年次の演習授業の担当教授がまちづくりや都市計画に携わっており、その教授の研究内容に興味を持ったことがきっかけで、4年次にはその教授の研究室に入りました。研究室では地域メディアも研究対象としていたこともあり、以降は行政のWebサイトや地域のポータルサイトづくりに関わるように。これを機に徐々に関心が移行し、本格的に地域ポータルサイトの研究を始めるに至りました。その頃には大学院への進学を決めていたので、博士前期課程では学部生時代の研究テーマを深めて修士論文を書き上げました。
博士前期課程修了後は、民間シンクタンクに就職。国土交通省等からの受託調査を担当し、地理空間情報や都市計画に関する調査や地域活性化に関連する事業を手掛けました。クライアントは官公庁中心で、さまざまな大学教授や現場で活躍する方々が出席する委員会に同席したり、行政機関での会議に参加したりする機会も多々。そんな中、それぞれの分野の最先端を行く方々との関わりに刺激を受け、自分自身も興味関心のある分野の専門家として研究活動がしたいと考えるようになりました。そこで、さらに研鑽を積み博士号を取得するため、シンクタンクを退職して大学院の博士後期課程に進学しました。
博士後期課程では自治体によるソーシャルメディア活用に関する研究を進め、指導教授の紹介で神奈川県相模原市の自治体シンクタンクである「さがみはら都市みらい研究所」の専門研究員としても活動していました。こちらの研究所では、金融業に関する調査を担当。なお、博士課程修了後にも、行政区の基本計画策定に向けた基礎調査を担当していました。大学のTA(ティーチングアシスタント)も務めていたため三足のわらじで多忙な日々でしたが、博士論文に関連した研究の発表では、いくつかの賞も賜りました(一般社団法人経営情報学会2013年度学生優秀発表賞、第12回情報科学技術フォーラムFIT奨励賞等)。
地域情報化の観点から、社会と情報の関わりを研究
専門は社会情報学。特に社会と情報の関わりに興味を持っており、自分が普段利用したり、生活で深く関わったりしている情報がどのように活用されているのかを研究しています。これを専門とするきっかけは、先にも触れた通り、学部および博士前期課程在籍時に所属していた研究室で行政のWebサイトや地域のポータルサイトづくりに関わったことでした。東京都八王子市の公式サイト改善に向けた調査提案や、八王子の地域ポータルサイト制作に携わり、社会情報学、特に地域情報化についての興味関心が強まりました。以降は、X(旧Twitter)やFacebookといったソーシャルメディアの地方自治体による活用についても研究するように。さらに、オープンデータやデジタルサイネージなど研究対象を広げ、現在はWebサイトやソーシャルメディアを活用した自治体と市民の双方向コミュニケーションの在り方を考究しています
自治体の情報コミュニケーションの研究で難しいのは、非常に変化が激しいICT分野の情報をキャッチアップしながら進めていかなければならないところ。たとえば、最近Xと名前を変えた旧Twitter関連では、仕様変更により一般的に使われていた分析ツールが使えなくなるなどの問題が発生しました。このようなケースでは、研究方法を変えたり、そもそも従来の考えで研究を進められるか再検討したりする必要が出てきます。また、たとえばソーシャルメディアの仕様変更は、それを活用するユーザー、つまりは自治体にもさまざまな影響を及ぼすことになります。だからこそ、この点を踏まえつつ自治体の情報インフラとしてのソーシャルメディアの在り方を探っていこうとしているところです。
なお、最近では話題のメディアプラットフォーム「note」についての研究にも着手しています。文章や画像、音声、動画を投稿できるブログのような機能を持つnoteは、自治体のオウンドメディアとしての活用も広がっていて、イベントのプロモーションや移住促進、ふるさと納税や観光PRなどさまざまな形で利用されています。自治体によるnoteの活用事例は増えてはいるものの、現時点ではまだ全数調査が可能な状況なので、今後調査を加速させていきたいと考えています。
電子図書館やICTツールの活用についての研究も
指導教授の研究のサブテーマだったということもあり、博士後期課程時代から電子図書館の教育活用やPBL(Project Based Learning)型授業における案件管理システムの導入など、学習支援システムについても研究してきました。たとえば、電子図書館の利活用調査では、最初に表示されたページに掲載されている本ほど利用率が高いといったさまざまな特徴が見つかりました。これがきっかけでICTツールをユーザーがどう活用するかというテーマにも興味が湧き、現在は本学の学生を対象に演習型授業へのオンラインツールの活用による教育効果についても研究を進めています。具体的には、Google Workspaceがより良い成果物作成に効果を発揮しているか検証しようとしているところです。
本学科は1学年の人数(ユーザー数)が比較的少ないため、大規模な利用データの分析が難しいという側面がありますが、一気に大量の利用データを取得して分析する方法を検討中です。また、ユーザー数が少ないからこそより細かい分析が可能となるため、さまざまなデータを取得すれば多角的な分析もできるはず。きめ細かな指導もできるので、Google Workspaceより効果的なツールがあれば、やや複雑なものを導入してみるのも面白いかもしれないと考えています。
実践的な取り組みで、ゼミ活動の土台を築く
授業は、「フィールドリサーチa/c」「コミュニティ経済演習」といった科目を担当しています。
「フィールドリサーチa/c」はいずれも東京都の南多摩地区をテーマに取り上げている授業。「フィールドリサーチa」では、データの収集や分析システムの活用を通じ、定量データの扱いについて理解を深めることを目的に、ケーススタディとして南多摩地区の魅力や課題の発見に取り組んでいます。「フィールドリサーチc」は、グループでの調査や取材活動で身近な地域の情報を収集し、それを分かりやすく編集?発信することでメディアの使い方や特性を学ぶ授業で、先述のnoteをツールとして活用しています。
「コミュニティ経済演習」は経済的な側面から地域のコミュニティの課題解決を考えるもので、SNSやオープンデータ、クラウドファンディングなどをキーワードに授業を進めています。
「コミュニティ経済演習」を除く担当科目はすべて1年生を対象とした授業なので、上級学年でのゼミ活動など今後の学修を進める上で困らないよう、各種ツールの使い方や文献調査の方法、レポートやプレゼン資料の作り方など、基本的なことから指導するよう心掛けています。
日々の学修を大切に、社会で活躍できる人に
現代生活学科は「環境」「メディア」「自立」という、幅広い学びが可能な学科です。そのため、さまざまな業界の企業に就職している卒業生がたくさんいます。在学中の皆さんも、将来は自身が興味関心を持つ業界や企業できっと活躍できることでしょう。
とはいえ、変化の激しい現代社会では、大学で学修した知識だけで乗り切ることが難しいのが実情です。私自身、民間シンクタンク時代はこれまで研究してきた分野と直接関連していない分野の仕事を数多く担当し、常に勉強が必要でした。だからこそ、学生のうちから日々学修する姿勢を身につけておくことが大切です。そして、社会に出たら大学時代に得た学びを糧に、それぞれの道を切り開いていってもらえたらと思います。その際に、社会情報学の視点も生かしてもらえれば幸いです。