メディア分野~授業紹介~
現代生活学科の学びの領域の1つ?メディア分野では、テレビや映画、出版、インターネットなどさまざまなメディアの特性について理解を深めるとともに、メディアを活用する力やメディア的な思考力などを習得します。一例として、メディアを形づくる技術について学ぶ行実洋一教授の『メディアプロデュース論』についてご紹介します。
行実洋一教授『メディアプロデュース論』
コンテンツをさらに楽しく、
自分をより魅力的に見せる
「演出」のテクニックに迫る!
メディアのコンテンツは「コミュニケーションの技法」の集合体
ドラマやバラエティ番組を見ていて、気がつけば夢中になってその世界に没入していることはないだろうか。私たちをワクワクさせたり、ハラハラ?ドキドキさせるこうしたコンテンツは、ただなんとなくつくられているわけではない。そこには、視聴者の心を動かし楽しませるための「コミュニケーションの技法」が盛り込まれているのだ。
行実洋一教授の『メディアプロデュース論』は、テレビや映画、CMなどの映像メディアと、SNSやインターネットコンテンツなどのネットメディアを題材に、そうしたコミュニケーションの技法(演出法)を学ぶ授業である。「私たちは普段、映像やインターネットのコンテンツを楽しい気分に浸りながらただ見ていますが、つくり手は必ずある意図をもって緻密に計算した演出を盛り込んで製作している。どんな演出がなされているのか、それがどのような効果をもたらすのかについて理解を深めてもらうのがこの授業です」と先生は語る。
授業では毎回、名作映画や話題のドラマ、ネット動画などの1シーンを取り上げ、撮影法や音楽、編集といった切り口から、どのような技法が使われているかを先生が解説し、皆で見ていく。「例えばある時は、撮影の際に用いられる照明に注目します。光が正面から当てられている時は見る側はどのような印象を抱くのか、光が横から当てられていたらどうか。また、すごく明るくしている場合はどのような効果があるのか。ちなみに、過剰に明るくすると人は逆に不安を感じます。ですから照明を強くするのは、実はホラー作品などで視聴者を不安にするためによく用いられる技法。こういったことを解説し、実際に作品を見て理解してもらう。このように授業を進めています」
サービス精神旺盛な先生は現役クリエーター。アイドルを取り上げることも
実は先生自身、現役のメディアのつくり手。現在も、さまざまなドラマやバラエティ番組などの製作に携わっている。「どうすれば人を感動させられるか、興味をかき立てられるかについては、僕自身がつくり手として日夜考えている」という先生の話が、リアルでわかりやすいのも当然のこと。「人を楽しませたい!」というサービス精神が旺盛な先生は、学生がさらに興味を持って授業を受けられるよう、時にはアイドルを題材に選ぶことも。「プロモーションビデオやダンスにどのような演出の技法が用いられているかや、日韓のアイドルの見せ方の違いなどを解説したこともあります。学生の食いつきはすごくよかったですね!(笑)」
映像作品やインターネットコンテンツにどのような技法が用いられているのか。それを読み解くにはメディアはもちろん人の心理などについても知識が必要で、ただ視聴しているだけだと盛り込まれている技法に気づかなかったり見過ごしてしまうこともある。先生の解説を聞いて、「すごい、そんなテクニックが使われているから面白かったんだ」と気づく学生がほとんどだが、それで構わない、と先生は言う。「そうしてカルチャーショックを受けて、コミュニケーションの技法の存在に興味を持ってくれればいい。今まで何となく見ていたものに対して、なぜここでカメラを移動しているのかとかどんな音楽を用いているのか、という風に、演出の存在とその意図に関心を持ってもらえれば、と思うのです」
実際に、この授業を受けてハリウッド映画やディズニーアニメの有名作をもう一度見たくなった、という学生が少なくない。「見たつもりでいても本当の意味で見ていない、そんな作品は誰しもあると思います。演出の意図や技法に着目しながら改めて見ると、作品をより深く味わうことができる。この授業をきっかけに、そんな楽しみ方をできるようになってほしいですね」
コミュニケーションの技法を学んで、自分を思いっ切り魅力的に見せよう!
そして先生は、この授業で得た知識や視線をセルフプロデュースに活かしてほしい、とも語る。「就職活動で自己PR用の動画を求められることも増えてきました。コミュニケーションの技法についての知識をその製作などで活かして、自分をより魅力的に見せることに役立ててもらうこともこの授業のねらいの1つです」
真面目で堅実な学生の多い本学。けれど真面目な分、自分を効果的に演出して魅力的に見せることに気後れしている様子を感じる、と先生は歯痒がる。「どんな作品でもどんな人でも、素のままがいいとは限らない。面白く感じてもらおう、楽しませようという姿勢は、相手を思う気持ちの表れでもあるのです。ですから、“自分なんて”と思う必要もないし恥ずかしがらなくてもいい。いろいろな技法を駆使して思う存分、自分を魅力的に見せてほしい。思い切ってトライしたものの思うような仕上がりにならなかった、効果を挙げられなかった、という失敗だって、社会の手前にいる今ならどれだけしても大丈夫。授業の要所要所で、学生たちを後押ししています」
『メディアプロデュース論』ではコミュニケーションの技法を十分に学べるが、実践を通じてより深く理解したい、得た知識をもとに自分でも映像やネット動画などの作品をつくってみたい、という学生には、実際に作品をつくる『メディアプロデュース論演習』の受講がおすすめだ。また、演出ではなくテレビや映画、インターネットなどメディアそのものの特徴や作品の読み解きなどについて学びリテラシーを育む授業として、先生は『メディアコミュニケーションa』も開講している。さらに先生のゼミでは、実際に不特定多数の人に見てもらう作品をつくったり、京都国際映画祭で広報活動に携わるといった「現場を経験する」機会も豊富。製作者やアナウンサーとして活躍する卒業生を各メディアに多数送り出している。
メディアは現代生活学科の学びの柱の1つ。さまざまな分野の専門知識を持つ先生方が集まっており、いろいろな切り口からメディアについて学ぶことができるが、自分はテレビやインターネットなどマスメディアのつくり手という立場から、それらの魅力やその反面としての留意点について学生にレクチャーしていきたい、と先生は語る。「メディアはものすごい速さで進化していますから、今後はVRなど新しいメディアのコミュニケーションの技法についても積極的に取り上げていきたい。演出は、時間を、そして人生を楽しむために大切なもの。メディアコンテンツを面白く見たい、面白いものをつくりたい、人生を楽しみたいという方に、ぜひ僕の授業を受けてほしいです」