授業紹介 解剖生理学実験 の実習室から「コラーゲンクリームの効果とは?」
食生活科学科教員S.K
解剖生理学実験は、管理栄養士専攻と健康栄養専攻の2年生の必修科目です。
1年生での解剖生理学a,bの座学の学びをふまえた仕上げの位置づけです。
7回の実験のうち5回は、医学部レベルの双眼顕微鏡を使って、各学生さんが栄養学的に重要な組織を観察し、スケッチします。
「手でスケッチとはなんとも時代遅れな???写真を撮ればおしまいなのに」
と思われましたか?
それがそうでもないんです。ここでいうスケッチは、美術のスケッチとは違い、写真のようにありのままに写し取ることが一番の目的ではありません。一見、複雑に見える細胞の並びの中に、臓器が固有のはたらきを果たす構造の秘密を見出し、その理解を客観的にスケッチとして表現することが求められています。
第1回実験は表皮、つまり皮膚の細胞の観察です。お肌の健康に敏感な女子達にも関心の高い授業です。
表皮の底にある基底細胞が分裂し、1ヶ月をかけてゆっくりと表面に移動し、最終的に死んだ角質細胞となり、垢として剥がれて表皮細胞の一生が終わる流れを学びます。
角質細胞というと不要なものの代表で目の敵にされがちですが、大間違いです。角質が死んだ細胞の層であればこそ、生きた細胞でしか増殖できないウイルスの感染に対する強力なバリアになっています。もちろんお肌の潤いを保つうえでも重要な役割を果たしています。
さてお肌の潤いの話がでたところで、市販のコラーゲンクリームの効果について考察してみます。
皮膚に豊富なコラーゲンがあり、お肌のハリに関係していることはご存知のとおりですが、皮膚のコラーゲンは、真皮という表皮より下の深い層にあります。角質の上に保湿クリーム等を塗布したとき、表皮の層を浸透して真皮まで到達できるのは水に溶けないオイルの成分で、コラーゲンのような巨大なタンパク質分子は表皮の角質層に阻まれて、そのまま剥がれ落ちてしまうでしょう。また角質にはタンパク質分解酵素も乏しいので、コラーゲンのアミノ酸が、真皮のコラーゲンの材料になることも考えにくい???。
お前は何が言いたいのかって?
化粧品会社の営業妨害ではなくて、解剖生理学的に素朴な議論をしただけなのですが、この辺りで遁走した方がよさそうですね。お後がよろしくないようで。