授業紹介 栄養指導実習b(健康栄養専攻3年)食育ディベート?フォーラム
食生活科学科教員M.H
健康栄養専攻3年生の「栄養指導実習b」をご紹介します。
本実習は栄養士が栄養指導対象者および対象集団に対して的確な栄養指導を実施するスキルを身につけることを目的としています。ライフステージ別の栄養指導プレゼンテーションや、食育をテーマにしたグループ討議やスピーチ、パネルディスカッション、フォーラムなど、さまざまな実習を行っています。今回は「食育ディベート?フォーラム」を開催しました。
はじめに「ディベート?フォーラム debate forum」について説明します。
ディベートdebate とは、ある主題について異なる立場に分かれて議論、討論することです。
フォーラムforum とは1つの話題に関して出席者全員が参加して行う討論のことです。
すなわち、ディベート?フォーラムとはあるテーマについて、意見の相反するパネリスト(講師)が講演を行い、その後学習者全員が質疑応答を行い司会者が総括するフォーラムのことです。必ずしも結論を出す必要はなく、結論が出ない場合もあります。
今回のディベート?フォーラムは栄養士の立場から「学校給食の食べ残しを容認する」VS「学校給食の食べ残しを容認しない」の2つの異なる立場(以下「容認する」VS「容認しない」に分かれて議論しました。
ディベート?フォーラム開催の前に参加者を6人のグルーブに分けて「容認する班」と「容認しない班」にほぼ半々に分け、全ての班ごとにバズセッション(6-6討議:1人1分間、自分の立場で意見を述べる)を行い、カードに記入し、ホワイトボードに異なる立場のカテゴリー別に貼り、異なる立場の意見すべてを全員で共有しました。
異なる立場の意見が出揃ったところで、いよいよディベート開始です。
各班1名の代表者がパネリストとして壇上にあがり「容認する?容認しない」意見や根拠を発表します。パネリストの発表のあとにフロアの反対派から反対意見を述べてもらい、それに応戦する形式で進めました。
「学校給食を食べ残すことを容認する立場」からの意見
?個々の味覚(好き嫌い)を尊重したい
?小学生は同じ学年でも食べる量や活動量に個人差が大きいので残すのは仕方ない
?無理に食べさせると給食の時間が苦痛になる
?食事は楽しいものだと伝える事は「食育」であるので「残さないこと」を強要しない
?残食で不足した栄養素は他の食材でも補うことが出来る(家庭での間食や夕食を活用する)
?残食から対象者の好評?不評を把握して、献立作成や改善に活かす
「学校給食を食べ残すことを容認しない立場」からの意見
?栄養バランスが偏り必要な栄養素を十分に摂取できない
?心身の成長に悪影響を及ぼす可能性がある
?生産者や調理してくれた方、食べ物への感謝を伝えるため
?食べ残しは食品ロスの増加につながるため「食べ残さない」指導をする
?「食べ残しをしてよい」というイメージや癖がつくのを避ける
?正しい食習慣は子どものうちから身につける指導が必要
フォーラムでは、この他にも様々な意見が飛び交いました。
食育と深く関わる「学校給食」についてのテーマであったことから、どちらの立場にも栄養士を目指す者としての目線とこだわりがあり、討論は終始白熱しました。
ディベート?フォーラムは「結論」や「正解」を示すフォーラムではありませんが、最終的に全員で多数決をとった結果、「学校給食を残すことを容認する」VS「学校給食を残すことを容認しない」は22対16で拮抗しました。ディベートでは「容認しない」であっても、最後の多数決で「容認する」派に鞍替えする者も多数おり、パネリストの手腕の見せどころといえますね。
学校給食は「生きた食育の教材」と位置づけられています。学校給食を食べ残すことは、昨今の食育現場の状況から「偏食は個性であり、多様性を尊重すべき」との見方もあることから、ディベート?フォーラムを受けての多数決結果は大変興味深いものでした。
栄養指導実習は栄養士が持つべきさまざまなスキルを磨く実習です。今後とも学生諸君のスキルアップにつながる実習指導を展開してまいります。