<企画特集>男女共同参画をリート?する学園へ
2014年11月に、「男女共同参画推進室」を設置し、翌年3月に「実践女子学園男女共同参画推進宣言」を制定しました。
そして2016年4月から、各自の状況により勤務時間を選択できる「フレキシブルワーク制度」を導入しました。
学園は、女性の活躍を推進するために、新たな取り組みをはじめています。
男女共同参画推進室メンバー
広井 多鶴子室長
近江谷 洋太
小川 真知子
鈴木 弘美
青井 敦子
土居 道子担当部長
推進室設置で芽生えたさまざまな変化
推進室が設置されたことで、変わったことは?
広井 本学園は女子学園ということもあって、職員も比較的女性が多いのですが、残念ながら今まで男女共同参画を意識的に追求することはありませんでした。それが「男女共同参画」の推進という観点から、教育、研究、教員組織、事務組織に至るまで広く見直せるようになったことは、画期的な変化だと思います。
近江谷 職員向けのワークライフバランスの研修を開催できたことが印象的でした。多様な働き方に関心を持ってもらえましたし、「超過勤務削減」という言葉が職員からチラホラ出るようになりました。変化の兆しだと思います。
小川 私は同じ部署にいる「働くママ」同士で仕事と家庭の両立、ワークライフバランスについて話題にすることが増えました。
鈴木 子育て中の同僚に、時間の都合や困り事がないかどうか聞くようになりました。自分も大変なときがあったので。小さなことですが、声かけもできることのひとつではないかと思っています。
青井 私も子どもがいるんですが、様々な立場?状態の方が同じ職場で働いている、ということを考えるようになりました。
土居 推進室がまだ準備室だった頃は、「問題なんてあったかな?」「何やるんだろうね?」という声もありました。ところが、ワークライフバランスの研修があった頃から変わってきています。推進室への期待が高まっているのを感じました。
広井 推進室が設置されたことによって、「男女共同参画」について発言しやすくなりました。様々な意見がある中で、「男女共同参画」を推進する立場に立って、何が「男女共同参画」なのか、どうしたら「男女共同参画」を進めることができるかが議論できるようになりました。
職場を変える第一歩 フレキシブルワーク制度
「フレキシブルワーク制度」をどう考えていますか?
土居 制度の導入により安心感が生まれると思います。
青井 休みたいけど休めない、と思っていた方が制度を活用し、「働きやすい、安心できる職場」と思ってもらえたらと思います。
鈴木 そうですね、どうしても職場に助ける側と助けられる側が出てきますので、バランスがうまく保てればいいな、と思います。
小川 まず、制度ができたことがすごく意味のあることだと思っています。あとはどれだけ利用して、各自の働き方やモチベーションに活かせるかですね。この制度によって、いつもの時間の使い方も変わってくると思うんです。「限られた時間の中で成果を出す」という風土が築かれるといいですね。
近江谷 自身の傷病までも考慮して働き方を選べる点が、従来と大きく変わった点だと思います。例えば「週1日短縮」の働き方を選べば、時短勤務だけでは難しかった通院?検査等も可能になります。
広井 「助けられる側=女性」という固定的なイメージが形成されたり、制度を利用することによって昇進等の人事に悪影響が及ばないようにしなければならないと思っています。この制度の導入によって、「お互い様」と思えるような職場の雰囲気が形成されることを期待しています。
フレキシブルワーク制度とは…
育児?介護や自身の疾病治療、家族の看護等の必要性が生じた場合に、できるだけ休職等をせずに動き続けられるように、自ら勤務時間を選択できる制度です。2016年4月から事務系職員を対象に導入されました。
めざすべき男女共同参画とは
推進室が設置された、この1年はどうでしたか?印象に残ったことはありますか?
土居 この1年はとにかく「知る1年」でした。研修、講座、企業見学に積極的に参加し、意識や考え方を吸収していった感じです。事務職員向けのワークライフバランスに関する研修会で安藤講師がおっしゃった「女性が頑張るんじゃない。みんなが頑張るのが男女共同参画」という言葉が印象に残っています。
鈴木 女性だけが頑張っても反発を受けるそうです。やっぱり「みんなで」なんですね。職員研修での「みんな一人一人がOSをバージョンアップさせるときです」という安藤講師の言葉が印象的でした。
近江谷 安藤氏は「プライベートを大切に」ともおっしゃっていました。家庭をないがしろにしない?大切にする、という視点で考えるとワークライフバランスの考え方も変わってくると思います。
青井 推進室として取り組んだ「意識アンケート」も、興味深いものがありました。 男性は、実践女子学園の職場を男女平等だと思っている割合が高いのですが、女性は、逆だったんです。こういうみんなの意識を把握し、変えていくという役割はやり甲斐があります。
土居 このように男女の意識の違いが生じる背景には、仕事の任され方もあるのかな、と思いました。補助的な仕事ばかりでは、誰だってモチベーションが下がってしまいますよね。
男女共同参画にあたって、これからの希望は?
土居 これからは通常勤務?時短勤務の違いで重要度の異なる仕事を任せるのではなく、適材適所になっていくのかな、と思います。時間の制限とスキルは別物です。時短勤務でも積極的に新しい仕事にチャレンジして、経験を積み、キャリアを伸ばしていってほしいですね。
青井 私は時短勤務から通常勤務に戻り、「17時以降に仕事が動いてる!」と気づいたことがあります。時短勤務の間に他の方が担っていた仕事、その流れについて意識が強くなったのかもしれません。こういうことも、経験のひとつですね。
小川 日頃の時間の使い方や意識が少しずつ変わることで気を配ることが普通になり、自然な形で男女共同参画が進むといいと思います。
近江谷 男性に重要な仕事が来るのは「男性なら長時間労働をしてくれるから」ということもあると思います。けれども、それでは超過勤務が増えるばかりです。男女共同参画は、男女を超えて働き方や業務の改善へとつながっていくもの。これから担う役割は大きいと思います。
鈴木 制度が整い、利用する人が出たとき、その人の声に耳を傾けることが必要だと思います。利用してみてどうだったのか、もっとこうだったらいいのにと思う点はなかったか、利用者の声に次のステップのヒントが見えてくると思います。
男女共同参画推進室が今後めざすもの
今後とくに力を入れたいのは、一つは女性の活躍を推進するための教育と研究です。そのために「女性キャリア?スタディーズ」「グローバル?スタディーズ」という二つの副専攻と、社会人を対象とした「女性リーダー育成塾」を開設します。
もう一つは、女性教職員の昇進を促すことです。本学園では女性の教職員比率はかなり高いのですが、管理職比率はあまり高くありません。女性の力を十分発揮できるようにするために、研修やワークライフバランスの推進に力を入れたいと考えています?〈広井多鶴子 室長〉
男性職員の目線から
「男女共同参画」をテーマに、 実践女子学園の男性職員で座談会を開きました。子育て中?夫婦二人暮し?独身と、様々な状況からの意見や考え方が見えてきます。
家事?育児参加の分担は?
近江谷 私の場合、平日は育休中の妻にお任せで、土日はほとんど自分です。妻が仕事に復帰したら、分担は五分五分になるかもしれません。
黒宮 休日は家事の大部分を担当していますが、平日は、簡単な家事に加えて早く帰れた日のみ、夕食をつくったりしています。平日の大部分の時間は家にいられないため、その間の物理的?精神的サポートが必要と考え、出産を機に妻の実家近くに引っ越しました。妻にとって、いつでも自分の実家を頼れる環境にあることが様々な面で安心につながっているようで、良い選択だったと思っています。
水野 うちは平日は3割くらい。休日は逆転して7割やります。妻は保育士なんですが、たぶん、家庭を重視してパートにしてるんです。ですから、自分は家事に手を出しすぎないようにしています。
西野 この1年は、妻の仕事の関係で、子供に朝食を食べさせ保育園に預けるのは自分の担当でした。
育休取得をどう考えますか?
水野 たぶんとらないですね。妻が保育士でやっぱりプライドがあるので。自分が育休をとっても邪魔なだけです。
西野 とれば良かったかな、と思うこともあります。当時は、このタイミングに育休取得は無理だろうと思ってしまいました。今になってみると、妻に甘えてたな、と思います。
近江谷 私は子供が10ヶ月のときに、1ヶ月間、育休を取得させてもらいました。10ヶ月というのは首もすわっていて、結果的に男性が育児に参加しやすい時期だったと思います。ハイハイやつかまり立ちの一瞬に立ち会えた貴重な1ヶ月でした。
黒宮 奥さんとはどんな会話をしてたんですか?
近江谷 妻とはやはり育児の話ばかりです。たまに、料理とか。二人とも料理が趣味なので。でも実は、20日経った頃、自分は育児に疲れて落ちこんだことがありました。
黒宮 大丈夫でしたか?
近江谷 その日は、一人カラオケに行きました。気持ちが煮詰まってしまったんです。
赤池 有給休暇をうまく使ってサポートする程度ではダメなんでしょうか。
黒宮 業務上、取得可能な状況であればぜひ取得したかったのですが現状では困難だったため、育休の取得はあきらめました。代わりのサポート体制を考えざるを得なかったため、実家を頼る選択をしました。
イクメンや男女共同参画という言葉で思うことは?
水野 「あちらの旦那さんはイクメンね」等と、比較されるのは困りますね。
黒宮 こうするべきというモデルを固定してしまうのはがんじがらめになって良くないと思います。「男女共同参画」も、パートナーシップくらいの軽さでいいのではないかと。少しゆるいくらいでないと、危ないと思います。
西野 「男女」とわざわざ言うのも違和感があります。「イクメン」と言われたり、話題にされるのも快くないですよね。助け合うのは普通のことなのに。
赤池 実は、「イクメン」は聞き覚えがあっても意味を知りませんでした。自分は思春期の頃、父が苦手な時期もあったのですが…「イクメン」が普通になると父親と子のコミュニケーションが変わるかもしれませんね。
近江谷 近い将来、「イクメン」は死語になっているかもしれませんね。実際、その言葉を広めた方も「もう古い」と仰っています。今、特に企業では「イクボス」の方が注目されています。社会的に、今は過渡期なんでしょうね。
教師の視点から 中学校理科 鴇田篤教諭
高校生にこそ、考える機会を。結婚?出産と女性のキャリア
男性教師の場合、クラスを受け持つこともあり、なかなか自分が育休や時短を選択するというわけにはいきません。ですが、高校生、それも3年生には現実を知って考えてもらうという意味で、様々な面から話をすることがあります。
共働きが増える中、奥さんの方が高収入というケースも増えてきました。その場合、どちらが仕事をとるのか。もはや必ずしも女性が家庭のためにキャリアを犠牲にする必要はないわけです。実際、私の場合では、妻の方が高収入でしたが、出産?育児を機にキャリアを棒にふってしまい、今も少々悔やんでいるようです。
生徒達は、こうした話を聞いて「結婚したくない」という者もいれば、「早く結婚したい」という者もいます。いずれにしろ、いつかパートナーとなる男性を選ぶときには、家事?育児の分担はできるのか、その話がきちんとできる相手なのか、よく見極めるようにと話しています。苦労するのは女性ですからね。
近年では、「イクメン」という言葉がもてはやされており、理想のパートナー像であるかのように語られているようです。しかし、その家事?育児を当たり前のようにこなし、仕事もしてきた女性の役割にももっと着目すべきです。本当に男女が共に協力し合いながら、仕事と家庭を両立するスタイルができるのは、「イクメン」という言葉が死語になってから。今の高校生達が結婚?出産を迎える頃には、また別のステージになっていると思います。