<特集2>社会と接する体験で、 実践的なチカラを磨く
多種多様な人々が集まって形づくられている社会。その中で誰もが自分らしく充実した暮らしを営むためにはさまざまな課題を解決する必要があり、何が課題となっているかを見出して克服するチカラが、これからのより良い社会づくりに欠かせないものとなります。実社会で役立つと同時に社会をより良いものへと変革していく「実践力」が重視される現在、実践女子学園は自治体や企業?各種団体との連携にこれまで以上に力を入れ、社会をフィールドに学ぶことで、学生?生徒が広い視野と実践的なスキルを身につけるようサポートします。
『多世代交流カルタ』で地域をより良く
『多世代交流カルタ』は、地域の世代間交流を促進することを目的に、渋谷?日野両キャンパスの学生が、それぞれの学びを活かして協働してシリーズで開発しています。自治体や企業との連携も生まれ、カルタを活用して学生と住民が交流し、より良い地域づくりにつなげる取り組みが進んでいます。
『多世代交流カルタ』は、高齢者や子どもの姿を学生が捉えて表現した「読札」と、コラージュや見立て技法、図形を組み合わせた表現など、造形の楽しさに誘う「絵札」で構成されています。このカルタを一緒に楽しむだけで、自然に異世代での会話が弾み、交流が生まれるよう、工夫が凝らされています。公民館やコミュニティセンターなどで行われる地域住民の集まりに学生が持参して、楽しい場づくりを実現しています。これまでに、「高齢者のいろは?アートかるた」や「こどものいろは?見立てかるた」、異世代が思いを交わしあう「高齢者×若者のいろは?相詠みかるた」などを制作しています。
2021年には、このカルタの交流効果に注目した毎日新聞社と産学連携のプログラム展開に着手。2021年10月から11月にかけて4回シリーズで、日野市発達?教育支援センターを会場に地域の高齢者が集まり、学生と『多世代交流カルタ』を楽しんだ後、毎日新聞社の「思い出ノート」を用いた交流を行いました。学生の趣向を凝らした場の運営に、参加された方から「毎回来るのが楽しみ」という声をいただいたほか、日野市や毎日新聞社の方より「想像以上の効果で、カルタで学生と交流しているうちに参加者の表情が輝いてくるのがわかる」と高い評価が寄せられました。毎日新聞社との連携による、カルタを活用した多世代交流の取り組みは、今後広く展開していくことが構想されています。
担当教員の声
いろいろな世代や価値観の方が暮らす地域は、まさに多様性の宝庫。地域をフィールドに学ぶことで「、多様性とは何か」「多様な人が集まるからこそ生まれる価値とはどんなものか」を、学生は肌で理解することができます。また、学生自身も「多様な人」の一員として受け止めてもらうことができ、のびのびと活動して関心を深めたり個性を発揮してしなやかな強さを獲得していきます。「多様性を実践的に理解して人と人をつなぐチカラ」を身につけている、そういった存在が頼り合い助け合う環境を創造し、それが地域の自立や豊かな暮らしを実現していくのではないかと考えます。
『多世代交流カルタ』を活用した取り組みは、日野市や毎日新聞社の方々と協働して地域を生きた学びの場にしています。学生にとっては将来の自分の仕事について、具体的なイメージを持つ経験ともなっていると感じます。
各界の第一人者を招きゲスト講演を実施
生活科学部 食生活科学科 健康栄養専攻4年次の「総合演習」(担当?奈良典子准教授)では、各分野で力を尽くす栄養士や専門家の方々をお招きしてのゲスト講義を行っています。
2021年4月30日には柔道家の佐藤愛子氏(現?東京女子体育大学 准教授)が登場されました。
テーマは「アスリート×女性×食事」。たくさんの世界的な大会でメダルを獲得するなどトップ選手として活躍した佐藤氏ですが、現役時代に無理な減量で心身を壊しかけたことから、パフォーマンス向上のためには食事が重要であることを実感。ケガや月経異常、摂食障害などを防ぐためにも、日ごろからの食事の内容と質を重視し、栄養について正しい知識を持つことが必要だという考えを抱くに至ったそうです。そして、日々の食事を通じた体調管理を実現するためには栄養のプロである栄養士や管理栄養士の存在が不可欠であることを、食について学ぶ学生たちに伝えました。
質疑応答での「アスリートから見た、信頼できる栄養士?管理栄養士の条件は?」という学生の質問に、佐藤氏は「栄養指導に加え、アスリートの心に寄り添いサポートしてくれること」と回答。「食事とは身体だけでなく心も満たすものである」という意識がより良い関係性を築くために重要、という話に、多くの学生がうなずきながら聞き入りました。
講演者プロフィール
佐藤 愛子氏
筑波大学卒。2007年 世界柔道選手権大会 銅メダル、2008年 北京オリンピック 7位入賞、2011年 世界柔道選手権大会 金メダルなど受賞歴多数。
2012年の引退後は柔道競技のテレビ解説を担当するほか、後進の育成にも携わる。2021年より現職。
IT分野で活躍する女性が生徒にエール
中学1年から高校1年まで実施される、総合的な探究の時間『未来デザイン』。
2021年10月15日、中学3年生のこの授業で、IT分野で活躍する女性経営者が講演を行い、将来を見つめる生徒たちに向けて励ましのメッセージを贈りました。
講演されたのは、IT分野での活躍を目指す女性を支援する(一社)Waffle CEOの田中沙弥果氏。ご自身がITの仕事に興味を持ち関わることになった経緯を振り返るとともに、この分野で活躍する女性が少ない理由を解説されました。
質疑応答の時間には「IT業界で女性がさらに活躍するためにはどうすればいいか」など、生徒たちの質問にわかりやすく回答。「固定概念にとらわれず好きなことに取り組む大切さを実感した」「男性と女性の間にある格差を取り払い、その人の特徴や個性を活かして能力を発揮できる社会にな ってほしいと思った」という声が寄せられるなど、生徒にとって有意義な時間となりました。
講演者プロフィール
田中 沙弥果氏
2017年 NPO法人に入社。全国20都市以上の教育委員会と連携し、学校の先生が授業でプログラミング教育を行うための事業を推進する。2019年に(一社)Waffleを設立。2020年、日本政府主催の国際女性会議WAW!2020にユースとして選出される。同年、 Forbes JAPAN誌「世界を変える30歳未満30人」受賞。