生化学実験
食生活科学科助手Y.K
2021年度は、9月20日(月)から後期授業が始まりました。
緊急事態宣言の延長により、本学でも、多くの科目で授業実施方法が対面からメディア授業に変更となりました。
そのような中であっても、実習?実験科目など対面で実施する必要のある科目は、感染対策を徹底して行っています。
今回ご紹介する管理栄養士専攻2年生の「生化学実験」も、その一つです。
この実習では、1年次の「生化学」で学んだ各栄養素の構造と機能を、定性実験や定量実験を通じて学び、
体内の代謝と調節を行う酵素や遺伝子の理解を深めることを目標としています。
今回の実習内容は、「肝臓からのグリコーゲンの抽出と定量」です。
まず初めに、試料からグリコーゲンの抽出を行います。
今回の実験では、肝臓(ブタレバー)と骨格筋(ブタヒレ肉)を使用しました。
過塩素酸を用いてタンパク質を変性後、遠心から得られた上清は、炭酸水素カリウム溶液を用いて、中和します。
これらの作業を経て得られたものが、肝臓と骨格筋の試料となります。
次に、アンスロン硫酸法を用いて、グリコーゲンの定量を行います。
グルコース標準溶液を希釈して、濃度の異なる標準溶液を作成します。
アンスロン試薬に、上記のグルコースの濃度の異なる標準溶液を加えたもの、グリコーゲン標準溶液を加えたもの、試料(肝臓?骨格筋)を加えたものを試験管に作成し、10分間煮沸します。
アンスロン試薬は、黄色ですが、加熱により写真のように青緑色へと呈色が確認できます。
加熱後の反応液は、吸光光度計を用いて吸光度を計測し、濃度の異なるグルコース標準溶液の吸光度から検量線を作成します。
グルコースの検量線から試料溶液に含まれるグリコーゲン量を算出し、肝臓と骨格筋を比較します。
この定量では、グルコースの検量線からグリコーゲン濃度に変換するところで一工夫が必要です。
実験結果はラボノートにまとめ、自分なりに考察していきます。
肝臓と骨格筋のグリコーゲン量を比較すると、次のようになります。
肝臓と骨格筋それぞれ1gあたりのグリコーゲン量は肝臓の方が多い、つまり濃度が高いということが結果からわかりました。
グリコーゲンの量とその役割について、図にまとめると、次のようになります。
肝臓と骨格筋では、貯蔵されているグリコーゲンの役割が大きく異なると考えられます。
グリコーゲンからグルコースへ変換する際に、グルコース-6-ホスファターゼという脱リン酸酵素が関与しています。
肝臓はこの脱リン酸酵素を持っていますが、骨格筋は脱リン酸酵素を持たないため、血糖として放出することは出来ません。
「生化学実験」では、他にもタンパク質の単離?精製、酵素の消化実験、遺伝子多型検出、遺伝子組み換え実験などを行います。
グループごとに協力し合いながら実験を行い、実験を通して座学で得られた知識を確認し、さらに理解を深めていってほしいと思います。