図書館員のおすすめ本紹介
図書館員がおすすめする本を紹介します【日野?渋谷】
図書館の所蔵情報も入れておきますので、ぜひ、借りて読んでみてください。
ぐるんぱのようちえん / 西内みなみさく ; 堀内誠一え
ぐるんぱはとても大きな象です。60年近く前に出た絵本ですから、
ご存じの方も多いかもしれません。
いつもひとりぼっちでくさいぐるんぱが、「おおきくなったのに いつも ぶらぶらしている」と
ジャングルの他の象から働きに出されます。
身ぎれいにして、いろいろな職業に挑戦しますが、作るものがことごとく巨大。行く先々で
手がけた製品(ビスケット、お皿、靴、ピアノ、自動車)と一緒にお払い箱になります。
がっかり、しょんぼりしているところに12人の子どものお母さんにおもりを頼まれ、
ピアノの弾き語りをすると子どもたちが次々に集まってきて、ぐるんぱは自分の作った自分サイズの
品々をすべて使って幼稚園を開くのでした。
社会に出るとき。仕事を求めるとき。自分がよく分からなくなり寄る辺のない気持ちになったとき。
シンプルなストーリーですが、「自分は自分である」ということが
ぐるんぱの奮闘を通じて心に響くような気がします。
私の場合は、子供時代に自分で選んだというよりは、
幼い弟が肌身離さず持っていた本をこっそり借りて読んだのが最初でした。
すっかり年齢だけは大人になり、来し方行く末に気のふさぐような日々を送っていた時に、
店頭で偶然ぐるんぱに再会しました。
改めてページをめくると、リズムのある語り口、ぐるんぱのしょげた様子や涙、
最後のページの輝くような笑顔に、ふと心が温かく軽くなるような心地がしました。
絵本はもちろん自己啓発本のように確固たる目的や効果を狙って読むものではありませんが、
時には山積みの指南書よりも雄弁に、その慎ましい言葉と絵とで語りかけるものがあります。
読めばみなさんにも、きっとお一人お一人のぐるんぱが宿ることでしょう。
懐かしい方も、初めましての方も、ぜひ楽しんでみていただけたら幸いです。