実践女子大学学術機関リポジトリの実態レポートその2
学術機関リポジトリ 利用実態 続報
2017年12月(第59号)でお伝えした「実践女子大学学術機関リポジトリ」の利用実態レポートの続報です。
学術機関リポジトリとは、聞き慣れない言葉だと思いますが、大学、研究機関がその知的成果物を電子的形態で集積し、保存?公開するために設置した電子アーカイブを言います。
実践女子大学?短期大学部では、2014年3月17日から学術機関リポジトリの運用を開始しました。本学で公開している知的成果物は、学部?学科の紀要が大半ですが、博士論文、及び大学図書館で所蔵し電子化した貴重書やその目録などもあります。
2019年6月現在の登録状況は、紀要論文1,306件、博士論文15件、特殊コレクション122件で、全文を読むことができます。
2014年に公開以来、本学の学術機関リポジトリの総ダウンロード数は約84万回です。2018年1年間で見ると総ダウンロード数は37万回で、月平均3万回、日平均1千回となっています。
2018年から2019年2月までのダウンロード数は42万回弱なので、ここ1年で半数のダウンロード数を稼いでいます。紀要論文等のコンテンツが増えるにつれて、ダウンロード回数が伸びていく好循環となっています。
ダウンロード上位論文の推移はどうなっているでしょうか。
論文ダウンロード数上位論文の推移
◇ 公開以来のダウンロード数上位
1. 山田茂[ほか]著「運動による骨格筋の肥大機構の文献的研究」
実践女子大学生活科学部紀要 49, 191-201, 2012-03-10
2. 窪龍子[ほか]著 「幼児期の生活と遊びに関する研究 : 幼稚園児の降園後
の遊びから「三間がない現象」について」
実践女子大学人間社会学部紀要,3,1-18 (2007-04-30)
3. 飯野智子著「美容医療をめぐる議論」
実践女子短期大学紀要 28, 65-75, 2007-03-20
59号と変わらず、山田茂先生の論文が1位となっています。
◇ 2018年ダウンロード数上位
1年限定で見ると、注目すべきは、2018年のダウンロード上位に駒田亜紀子先生の
論文が入ってきたことです。
1. 駒田亜紀子著「『十三世紀フランス語聖書』(Bible francaise du XIIIe siecle)
彩飾写本研究:フランス北部の作例と<パリ-アッコンの画家>をめぐって」
実践女子大学美學美術史學,25,38-17, 2011-03-05
4つの論文の月次別の通算ダウンロード数をグラフにしてみました。
59号では、「紀要論文であっても、ジワリジワリと読まれ(ダウンロードされ)、時代の要請にマッチした途端、爆発的に読まれる(ダウンロードされる)、というのを証明してくれているのではないか」と書きましたが、今回も同じような状況となりました。
山田先生の論文は2017年をピークに徐々にダウンロード数が減少しだしますが、それに変わって
窪先生の論文がじわりじわりと増えていき、2017年12月にピークを迎えます。
駒田先生の論文は、2017年10月からダウンロード数が増え始め、数ヶ月間
高ダウンロード数を維持します。
駒田亜紀子先生からコメントをいただきました。
駒田亜紀子先生の専門分野?専攻は、西洋美術史(中世後期の彩飾写本)です。
現在、美学美術史学科と博物館学課程の主任を務められています。駒田先生からコメントをいただきました。
私は、博士論文から現在まで中世後期の彩飾写本の研究をライフワークとしています。
この論文は、2009年から7回に渡って本学発行紀要に発表し続けている「十三世紀フランス語聖書」を題材にした研究の一つです。
今回、昨年度のダウンロード数を伺い驚いています。また、これ以外の論文もコンスタントに読まれていることを大変嬉しく思っています。確かにこのテーマで2015年のサバティカル休暇中に海外で発表し、また2017年1月に日仏美術学会例会で発表しましたが、授業で使っているわけでもないので、少しも思い当たるところがありません。もしかすると同じテーマの研究者に論文抜刷を提供しましたので、その方たちが
何かの形で取り上げてくれたのかもしれませんね。また、客員研究員として関わっている国立西洋美術館での活動も関係しているのでしょうか。
私自身の研究スタイルとして、基礎研究を大切にするよう心掛けています。基礎研究ができていれば参照されますし、後進の研究者に役立ちます。これが大学の果たす役割だと思っています。私の行っている研究はいまだ発展途上であり、地味でカメの歩みのような研究ですが、1章1節を積み上げ、いずれその成果を1冊の本としてまとめたいと思います。