ドイツ?ベルリンの図書館?書店事情(松下慶太准教授から)
松下先生の現況
人間社会学部?人間社会学科の准教授である松下慶太先生は、2012年から本学で教鞭を執られています。先生の研究分野は、メディア論、若者論、学習論、コミュニケーション?デザインです。
松下先生は、2018年度1年間、ベルリン工科大学訪問研究員としてベルリンに滞在されています。松下先生に、異国の地にある大学図書館と書店事情についてのレポートを送っていただきました。
ベルリンに滞在して
2018年度はドイツにあるベルリン工科大学社会学部に研究滞在しています。ベルリン工科大学はベルリン動物園駅の近くに位置しています。動物園というと何やら郊外にあるイメージかも知れませんが、ベルリン動物園駅はかつての西ベルリンの中心地であり、非常に都会です。東西ドイツ統一後はもう少し東のミッテ地区やかつての東ベルリンで再開発が進んでいます。他に知られている大学だと、他にもミッテ地区にはフンボルト大学、少し郊外にベルリン自由大学などがあります。ベルリン工科大学は理工系の学部が多いこともあり、社会学部は一般的な社会学はもちろん、社会学の観点からテクノロジーやイノベーション研究にも力を入れていて、企業のイノベーションについて研究している人が多くいることが特徴と言えます。
ドイツの企業と言えば、自動車でフォルクスワーゲンやBMW、ダイムラーなど、また機械?機器でジーメンスやボッシュ(実践女子大学渋谷キャンパスの近くにBosch Caféがあります)などが有名でしょうか。実はこれらの本社はフランクフルト、ヴォルフスブルク、シュトゥットガルト、デュッセルドルフ、ミュンヘン、ハンブルグなどいろいろな都市に分散しています。ベルリンは確かに首都ですが、これまでの歴史的背景から主要産業という意味ではまだ脆弱な部分があります。そのため近年力を入れているのがテクノロジーやデザイン、そしてそれらに関連する起業育成です。そのためベルリンには多くのコワーキングスペースがあり、起業イベントも活発で、多くの若者がドイツ国内はもちろん、海外からもやってきます。その結果でもあり、理由でもありますが、英語でほとんど生活できますし、IT企業などでは英語が公用語というところも少なくありません。
このように、テクノロジーやデザインが活発で、若者や外国人も多く、また再開発が進む中でいろいろと都市デザインも行われているという意味では、ベルリンは渋谷っぽい街と言えるでしょう。カフェでも大学生や起業家の若者たちがPCを開いたり、本を読んだり、グループワークしている姿が多く見られます。
ベルリン工科大学図書館に行ってみて
さて前置きが長くなりましたが、こうしたベルリンにおける図書館?書店事情を少し紹介したいと思います。
まずはいちばん身近なベルリン工科大学の図書館について。理工系の多い大学だけあって?無骨な感じのつくりになっています。土地も広い分?吹き抜けを中心にぐるっと書架が並ぶ構造になっています。日本の大学図書館と大きく異なるのは、コートやカバンは基本的に持ち込み禁止です。書架エリアの前にロッカーにそれらを置いて、身の回りのものだけを持ち込みます。
今回の依頼を受けてミッテ地区のフリードリッヒシュトラーゼ駅近くにある、雰囲気がすごいという噂のフンボルト大学図書館にも行ってみました。こちらはロッカーにかける錠前を自分で用意しないと入れないので入室はあえなく撃沈...学生でなくても入れるので、訪問したい人は何も身に付けないか、錠前を用意しておくことをお忘れなく。
大型書店ドゥスマン
軽い失意のもとその近くにある大型書店Dussmann das KulturKaufhausを訪れました。
こちらも吹き抜けをぐるっと囲む構造になっています。冬の長いドイツでは吹き抜けと天窓で光を入れることを重視しているのかもしれません。
ドイツ語書籍を中心に、CDや英語書籍、文房具なども置いています。
仕事柄世界各国を巡りますが、ここのドイツ語書籍はさすがの規模です。自分のドイツ語能力ではまだまだ自由にこれらを読むことは難しいのですが、表紙やタイトルを見ているだけでもその多様さが分かりますし、きっと英語では書かれていない何か、があるのだなぁと想像できます。
終わりに
これは日本でも同じことが言えると思います。英語以外の母国語で一定規模の書籍=知識流通があるというのはこれから貴重な資源になっていくかもしれません。それらを触れる?読むことで情報の多様性を確保すること、それらを生み出す土壌をつくること、また同時にそれらを生み出すことの大事さはグローバル化が進む中で意識することはより重要になってくると思います。