古典に触れよう②「横着な医者」
痛い時、苦しい時、辛い時に医者はとても助かる。救いの神。だがこんな医者はいやだ。
小坊主は有頂天だった。足鼎(がなえ)を逆さにかぶって踊る鬼の舞いは満座に大受け。だが地獄は直ぐ隣にあった。足鼎をはずそうとしても取れない。無理に取ろうとすると鼻が欠けそうだし耳もちぎれそう。
医者に駆けつけたが渋る。全くつれない。足鼎のはずし方なんて師匠に教わってないし医学書にも載ってない、と。
やむを得ず仲間が無理やりはずしたが、鼻が欠けて長く病んだ。大切に育てた息子の体たらくを、母はどんなに悲しんだろう。
師匠の教えや医学書に足鼎対処法などあるはずがない。必要なのは目の前の患者を治す意志と智恵と工夫だ。21世紀の今日にこの類の医者がいないことを願う。
『徒然草』52段の話。