食品産業学研究室での卒業論文
食生活科学科教員Y.M
私たちの食を取り巻く状況について考えてみましょう。
例えば、食品加工技術の進歩により、様々な便利でおいしい食品や生理機能の研究により健康の維持増進を助ける食品などが販売されるようになりました。
一方で気候変動が大きな国際課題となっており、地球環境と食料は深い関係にあります。農産物や畜産物、水産物を生産する際には、地球温暖化など環境からの影響を受けますし、輸送し、加工して、消費して出たものを廃棄する際には逆に環境へ影響を与えています。
また、民族、国、地域それぞれに様々な食生活の形態や伝統、食習慣があります。少し前に日本の「和食;日本人の伝統的な食文化」が、ユネスコ世界無形文化遺産に登録されたことを知っている人も多いでしょう。
おいしいと言って食べてもらうためには、食べてくれる人のことをよく知らなければなりません。そのためには、消費者調査や広告など、マーケティングの手法を用います。
さらに経済的な側面で言うと、為替変動は、例えば現在のような円安では輸入している食品の価格を上げる方向に働きますし、社会情勢からみると、ウクライナでの戦争は小麦など主要穀物の需給に混乱をもたらし、私たちの食生活に影響を与えていることは、皆さんが実感として感じているのではないでしょうか。
このように日々生きるために必要な「食」をおいしく、安全に、手ごろな値段で、安定的に食べるために、多くのことを考える必要があります。
食品産業学研究室は、これらの食に関係する事柄を考えていく研究室です。卒業論文は、基本的に食に関して皆さんがやりたいと思うことをテーマに設定します。
研究は、今まで知られていない学術的な知見や法則を明らかにしたり、新発明をするためのものです。
これまでの卒業論文のテーマを紹介します。例えば、その土地の名産品を使った商品開発や未利用食品、いままでにない形態の食品、栄養補給や低糖質、特別な食シーンで食べるための食品、キッチンカーの特性を生かしたメニュー開発など、他にはない商品を目指したものがあります。
商品を購入する際に目にするパッケージについての研究では、自分でパッケージモデルを作成し消費者調査の手法を用いて購入に影響を及ぼす要素を分析したものもあります。
卒業論文で行なった商品開発の例です。
左のモンブランは、えだまめが低糖質であることに着目し、他の原材料も低糖質のものを使用しています。
右のポテトチップスは、ノンフライ製法を採用しています。手に脂がつかないことも特徴です。
他にも、お茶の成分と嗜好性との関連について調べたり、次に流行する食品のトレンド予測など、バラエティーに富んだ卒業研究に取り組めます。