Visiting teacher's office 研究室訪問
実践女子学園では、多くの教職員が各分野において最先端の研究を行っています。今回は、中学校高等学校と大学が一体となって取り組むプロジェクト研究の「今」をご紹介します。
実践女子学園[プロジェクト研究]
中?高?大連携教育における学習支援の開発研究プロジェクト
ICT機器を活用して「対話と探求の学び」の場を創造し、科学的思考力を伸ばす
学習到達度の国際比較調査や文部科学省の指針により、「科学的思考力」の重要性に改めて注目が集まっています。今回は、実践女子学園内の中?高?大各校が連携し、効果的な理科教育を行うためのシステムづくりを推進しているプロジェクト研究をピックアップ。2013年1月に行われた実証授業の様子もご紹介します。
「OECD生徒の学習到達度調査(PISA)」や「国際数学?理科教育動向調査(TIMSS)」といった国際比較調査から、日本の子どもたちは、知識は高いものの科学的思考力に課題があることが浮き彫りになり、文部科学省は「理数教育の推進」を喫緊の課題としています。こうした現状を背景に、実践女子学園中学校高等学校の「学びの魅力」の一つである「理数教育の充実」を図るため、大学と教育政策研究所の研究者、中高の教員が集い、本プロジェクトをスタートさせました。
本プロジェクトの目的は、生徒の科学的思考力を向上させるカリキュラムの開発と、インタラクティブな学びの場をサポートするシステムの構築です。特に、肉眼で確認できない実験?観察のため高度なイメージ力と推察力を必要とする、巨視的現象の「地球と宇宙」(中2地学分野)と、微視的現象の「遺伝情報とその発現」(高3生物分野)について、理科教育のカリキュラムを開発しました。同時に、生徒たちが課題や疑問を議論し合うことで、科学的思考力を高める「対話と探求の学び」の場を構成することを目指し、電子黒板やタブレット端末といったICT機器を活用するシステムを構築しました。
プロジェクトチームは2011年夏の発足以降、定期的に集まって議論と研究を重ね、2013年1月に中学2年生、4月には高校3年生を対象に実証授業を実施しました。授業では、生徒たちがタブレットに考えを書き込み、互いのグループの考えを電子黒板上で閲覧し合って活発に意見を交換し、科学的思考力を伸ばしていく、確かな手応えを得ることができました。
実証授業 描いた図が一斉に電子黒板に表示され、活発な議論を展開
2013年1月21日、実践女子学園中学校2年生のクラスを対象に、本プロジェクト研究で開発されたカリキュラムによる実証授業が行われました。授業のテーマは「地球と宇宙」。理科の岡村知英教諭が地球の自転によって天体が動いているように見える「日周運動」の解説を行い、電子黒板で資料動画を放映(写真①)。その後グループごとに「地上から太陽の動きを観測したら、天球上でどのような軌跡を描くか」について模型を使って実験を行い、結果を話し合いながら大型タブレット端末に描画しました(写真②)。画像は電子黒板に送信されて一面に表示されましたが、その内容はグループでまちまち。先生と生徒で各グループの実験結果を検討し、再度実験を行って確認を行いました(写真③)。
「このシステムは、各グループがタブレット端末に書き込んだ内容を電子黒板に並べて表示することで生徒同士が考えを共有でき、教員とも双方向性のコミュニケーションを図れる点が優れていると感じます。今後も実証授業を重ねてこのシステムを進化させ、“人の意見を取り入れて自分の考えを発展させる学び”を生徒に提供したいと考えています。」(理科 岡村 知英教諭)