渋谷キャンパス「ららすた」活動と成長の裏側
2024年度の渋谷「ららすた」は総勢49名で活動しました。約50人もの大人数のチームで、どのように活動は実現されたのでしょうか。またそこからメンバーは何を得たのでしょうか。
ゆるやかにつながる組織づくり
大所帯のチームで一年を通じての活動をより実りあるものにするために、渋谷「ららすた」では次のような5つの班が編成されました。
1.展示班 2.常磐祭班 3.本屋取材班 4.情報発信班 5.図書館総合展班
全体のリーダー、サブリーダーとは別に、各班にもリーダーを立て、具体的な活動の進行の呼びかけや細かなスケジュール調整などの連絡は、班リーダーが軸となって所属メンバーとの間をつなぎました。
ユニークなのは、班リーダーも含めて、ほとんどの人が複数の班に所属しており、ある班ではリーダーの人が別の班ではメンバーの一員となって参加している点です。どの班も1年生から4年生までまんべんなくメンバーがおり、上級生がそれぞれのスケジュールの合間を縫って下級生に経験を伝え、活動のサポートもできる形がとられました。
メンバーの主体性を重んじながらも、図書館職員はそれぞれの活動を見守りつつ、適宜サポートを行いました。
では渋谷「ららすた」メンバーの今年度の活動を振り返ってみることにしましょう。代表して、主に各班のリーダーの方々を中心に声を寄せていただきました。
<展示班>
展示班は年に数回、話し合いで決まったテーマごとにメンバーが図書を選び、POPを作成し、館内や図書館ホームページ、併設中高図書館にて展示を行っています。
展示班は図書を選び、読み、POPを制作するまで基本的に個々での活動になります。そこで、今年度は年度初めにPOP制作のノウハウや著作権などの注意点を学び、過去の作品を参考に実作する「POP研究会」を開催しました。昨年度よりも回数を増やし、出来るだけ多くのメンバーが参加できるようにしたことで、様々なメンバーと交流する機会を持つことができました。
完成したPOPと対象図書の展示は、多くの図書館利用者に見てもらうために、展示する場所を工夫しました。図書館利用者の動線を考慮し目につきやすい場所にしたことで、立ち止まった利用者が展示した図書を手に取る機会が増えたと実感しています。
来年度も、今年度の工夫点を生かし多くの利用者に図書館の本を借りてもらえるようにしたいです。 (展示班リーダー 国文学科2年 S.K.)
<常磐祭班>
常磐祭班は渋谷常磐祭開催時に図書館を会場に様々な催しを企画し、運営の中心となって活動します。常磐祭は2日間ですが、当日の成功を目指して年度当初から何度もミーティングを重ねて準備をします。他の班の協力のハブとなっての連絡調整も欠かせません。
図書館を会場とした渋谷常磐祭の企画運営に特に力を入れました。昨年度も行った「クイズラリー」や「しおりとブックカバー作りのワークショップ」に加え、今年度は「読み聞かせ」を渋谷ららすたで初めて開催しました。企画の種類を増やしたことで昨年よりも盛りだくさんの常磐祭となりましたが、メンバーの協力により完成した企画は充実し、来場者の方々にも満足してもらえたと思います。また、企画を進めていく中で、ららすたの団結力がいっそう強まった気がします。
スムーズに運営するために、常磐祭のリーダーだけではなく、企画ごとにサブリーダーを配置し、すべての企画を同時進行できるよう工夫しました。これにより仕事の分担がはっきりしたのは良かったのですが、リーダーとしては同時進行の企画をすべて把握しないといけないので必死でした。サブリーダーに仕事が集中してしまうこともあったことが反省点です。
来場者の方にはららすたの企画についてのアンケートを実施し、様々なフィードバックを得ることができました。これらを活かし、来年度も多くの方に楽しんでもらえる企画をメンバーで作り上げていきたいと思います。
個人的には他のサークルの活動とららすたの活動を両立することがとても大変でした。
サブリーダーなど他のメンバーとスムーズに連絡をとることが出来たので、忙しい時期に仕事を代わってもらうことなどが可能でした。メンバー同士の支え合いが常磐祭の成功につながったと感じています。 (常磐祭班リーダー 国文学科2年 M.D.)
<本屋取材班>
本屋取材班は、取材を通して様々な書店を紹介し、利用者により一層本に興味を持ってもらい、あわせて図書館の利用促進に繋げることを目的として活動しています。
「本屋取材」とは書店への取材を企画?交渉から行い、取材した内容を取材後記にまとめ、公表するという活動で、今年度で6年目になります。学外の方に協力していただくということで、取らなければならない連絡が多くありました。取材の許可がとれても私やメンバーの都合が合わなかったり、書店さんの都合が合わなかったり、台風の影響でいったん取りやめになったりと、スケジュールの調整に苦労しました。しかし協力してくださった書店さんがとても親身に対応してくださり、スケジュールの再調整の結果、取材に繋げることができました。
無事取材を終えた後、取材後記を作成しました。さらに今年度は図書館総合展でこれまでに行われてきた「本屋取材」の成果をポスターにして発表し、作成した「本屋取材MAP」のリーフレットは多くの来場者に配布することができました。
「本屋取材」は毎年行っている企画です。来年度の取材に向けて、私が今回行ったことをまとめて次に参加する方に引き継げるよう準備を始めています。忙しく大変なことはありましたが、何より実際に書店で働く方のお話を聞き、お店のこだわりを聞くことはとても楽しいことでした。そのため、きちんとサポートできるようにと考えています。 (本屋取材班リーダー 国文学科2年 M.W.)
<情報発信班>
情報発信班は渋谷「ららすた」の活動の様子や図書館に関するお知らせを随時お知らせするために立ち上げられました。今年度からはInstagramを使い、タイムリーで図書館に親しみと関心をもってもらえるような発信を心がけています。ロゴもメンバーが制作しました。
Instagramへの投稿に特に力を入れました。発信を始めたことで、「ららすた」という組織があることや実践女子大学の図書館について知ってもらうことができたかなと思います。また、メンバーからは活動を通じて協働力の向上やInstagram投稿作成のスキルアップにつながったとの声をもらっています。
情報発信班は<活動>や<新着本>、<開館カレンダー>、<おすすめ本>など幅広い内容で各担当に分かれて活動しています。そのため、活動が始まった5月頃は班のリーダーという役割やメンバーの意見を汲むことに対し難しく感じていた時期もありました。しかし、メンバーが積極的に動いてくれ、コミュニケーションが取りやすくなったことで、班全体の風通しが良くなり私自身も活動を楽しめるようになりました。活動を通じてコミュニケーションの大切さを学び、とても有意義なものになったと感じています。
今年度、班のリーダーを勤めさせていただきとても充実した学びの多い1年となりました。今後は、得られた学びを活かしながら、「ららすた」を多くの人に知ってもらい、「ららすた」がより良いものとなるようにしていきたいです。また、メンバーの活動を支えつつ、一緒に楽しみながら活動をしたいと思います。 (情報発信班リーダー 美学美術史学科2年 M.S.)
継続的にららすたの活動について発信を続けました。外部の方にも「ららすた」の活動を分かりやすく伝える工夫を重ねるうちに、メンバーが自分たちの活動を振り返ることができる場にもなってきています。
発信を行うために様々な班に参加し、活動しました。何をどのように発信したらいいかという視点を持って考えながら動くことで、伝え方の技術を身に着けることもできました。活動の中では多くのメンバーや職員の方と関わり、大勢の人が所属する団体での動き方の難しさや、それゆえの面白さも同時に学ぶことができました。
来年度も継続していけたら良いと思いますが、誰でも持続可能な形で発信していくには、どうしたら1番やりやすいかを考える必要があると感じます。振り返りをしっかり行い、来年度に活かしたいと思います。来年度も色んな人と関わり学びながら、より良い活動にしていきたいです。 (情報発信班メンバー 美学美術史学科2年 H.N.)
<図書館総合展班>
図書館総合展班は、今年度渋谷「ららすた」がポスターセッションに初出展するにあたり、結成されました。開催時期が常磐祭後一か月足らずと日程が厳しい中、展示するポスターや配布するリーフレットの制作、当日の人員の調整等、「ららすた」メンバー総動員の活動の軸となって取り組みました。
渋谷「ららすた」は今年度初めて図書館総合展に出展しました。常磐祭が10月初旬、その後ひと月足らずでの開催だったこともあり、準備が思うようにいかない部分も多かったです。メンバーの頑張り、職員が助けてくださったことで、形にすることができました。
出展のポスターやリーフレットは班に分かれて制作を行いました。過密スケジュールの中、班同士のコミュニケーションが取りづらく、苦戦した部分もあったようにみられました。リーダーとしてもう少し間に入って、意思疎通できたらもっとよかったなと感じています。
当日は、普段は会うことができない、他大学の学生と話すことができて嬉しかったです。また、作家の今村翔吾氏のフォーラムにも参加でき、現在の図書館や出版業界について、見識を広げることができました。
ありがたいことに、渋谷ららすたには50人近くの学生が所属しています。今よりももっとコミュニケーションをとりやすい環境をつくれるように、積極的に話しかけていきたいと考えています。 (全体リーダー?図書館総合展班リーダー 国文学科3年 C.N.)
活動全般に関して
特に力を入れて取り組んだことは、メンバーのサポートや展示班の活動です。活動の際に戸惑っているメンバーに声掛けを行うことや、様々な分野の資料のPOPを作成することが出来ました。
個人的には予定が合わず全体の活動への参加率が下がってしまっていたのですが、その分議事録や共有される情報に目を通して内容を把握することに努める事や、他のメンバーの様子に気を付けるように意識しました。
また、展示活動では1、2年次と似たような選書になってしまったので、普段読まない分野や、貸し出しが少なさそうなものから選ぶことを意識して取り組みました。ぱっと見た際に分かりやすいようにデザインや載せる情報量に注意してPOPの作成を行い、選んだ図書が実際に貸し出しされているのを見ると嬉しかったです。
今年度は常磐祭以外であまり他の学年の方と一緒に活動することが出来なかったので、今後は交流の機会を増やしていきたいです。また、今年度参加できなかった活動にも参加できるようにスケジュールの調整を行い、図書館利用の活性化に繋げていきたいと思います。 (全体サブリーダー?図書館総合展班リーダー 国文学科3年 Y.M.)
糧は個人にもチームにも
メンバーが各活動ごとの班に分かれ、それぞれにまとめ役や補佐役が付くことで責任をもって企画や活動を成し遂げやすくなる効果があった一方で、常磐祭や図書館総合展など、班の垣根を越えて渋谷「ららすた」がチーム一丸となって取り組む必要のあるイベントに際しては、組織の統率の難しさやコミュニケーションの維持の苦労を感じたようです。
しかし、授業やその他の予定の合間を縫って、メンバーひとりひとりが参加する工夫を重ねた結果は、学内の学生や教職員だけでなく、常磐祭や総合展に訪れた外部の方々にも様々な楽しみや関心(感心)をもたらしたと言えます。
今回声を寄せてくれた学生だけでなく多くのメンバーに共通するのは、コミュニケーションを心がけ、アイディアや時間を持ち寄り、助け合うことで目的を何とか実現しようとする姿勢でした。また、図書館総合展の展示物の制作に尽力しながらも授業で当日参加の叶わなかったメンバーの分まで、会場での展示説明とリーフレットの配布に精を出すメンバーが多く見られたように、自分が得た教訓や経験を共有しよう、後に続くメンバーに手渡そうという強い意識も感じられました。これらは、「ららすた」というチームをメンバーが大事に思い、皆でよりよくあろうとする精神が先輩から後輩へと受け継がれてきた賜物と言えるかもしれません。
学外とのかかわりを持ち種々の発信をすることは、単に図書館への理解や利用促進につながるだけでなく、自分たちの日ごろの活動や考えを客観視し、新たな気づきや学びを得ることでもあります。常磐祭や図書館総合展で、交代で催しや展示の案内役に入るメンバーの、実感を込めた堂々とした受け答えぶりや、緊張のなかにもいきいきと充実した表情に一人一人の成長ぶりを見て取りました。
今後も渋谷「ららすた」の実りある活動が継続できるよう、期待したいと思います。