著者は語る 深瀬有希子先生『ハーレム?ルネサンス-<ニュー?ニグロ>の文化社会批評』
深瀬先生とご著書について
深瀬有希子先生は、2016年に文学部英文学科に着任されました。
今回は、今年度1年間の研修期間を利用して研究を深めておられる「ハーレム?ルネサンス」「ニュー?ニグロ」に関するご著書について語っていただきました。
本文の最後に、研究書の読み方についてコメントして下さっていますので、学生の皆さんはぜひご覧ください。
本書の紹介と当館所蔵情報を当ページ末に置きましたのでご参考にどうぞ。
「ハーレム?ルネサンス」とは? そこにいるのは誰か?—
皆さんは「ニューヨーク」と聞くと、何を思い浮かべるでしょうか。例えば、クリスマスをひかえた時季であれば、ロックフェラーセンターのアイススケートリンク、五番街のティファニーの広告。または、瀟洒なアッパーイーストを舞台とするテレビドラマの数々……。そのように想像したときに、その煌びやかな場所の主人公となっているのは、はたして誰でしょうか。
このたび、私が編集および執筆した『ハーレム?ルネサンス—<ニュー?ニグロ>の文化社会批評』は、ニューヨークのマンハッタン北部に位置するハーレム地区というアフリカ系アメリカ人の「メッカ」(精神的なよりどころ、諸活動の中心地)にて、1920年代から1930年代にかけて繰り広げられた多彩な文化社会運動についての研究書です。
少し専門的な話になりますが、1920年代という時代は、第一次世界大戦終結後の好景気のなかで享楽的な都市文化が発展していった時代(「ジャズ?エイジ」)でした。娯楽文化がビジネスとして確立し始めたという背景からも、この時代はアメリカ文化史において重要な時代とされています。
こうした1920年代に、いわゆる白人男性作家?芸術家によって主導されたモダニズムという文化運動は、分野のみならず地域をダイナミックに横断する展開にその特色がありました。それと同じように、主にアフリカ系の人々によって花開いた「ハーレム?ルネサンス」もまた、多岐にわたる学術領域と国境を越えた移動をその背景としていました。
そうした奥行きをとらえるためには、例えばアメリカ文学?文化だけに限定されないような学際性が必要とされます。具体的にいえば、英国をふくむヨーロッパやカリブ海地域、フランス語圏、アフリカを含む広範囲の言語文化圏、多様な学問分野(文学、絵画、映画、音楽、演劇、宗教、スポーツなど)の考察です。本書は、あまたの芸術家たちが大西洋を行きかいダイナミックに活動をしていた時代から百年たった2020年代初頭の刊行を目指し、多くの先生方との数年間におよぶ学問的対話のすえに完成しました。
編集?執筆中の思い—
企画が進行し、各執筆者から原稿を集約して編集作業を始めた段階で、足球现场直播,大发体育在线の世界的蔓延にみまわれ、さらに、ジョージ?フロイド事件に端を発してブラック?ライヴズ?マター運動が再燃し、世界にも広まりました。災害などの非常事態においては様々な問題が露呈し、社会的弱者にその矛先が向かってしまうことが起こりうるものですが、アメリカ合衆国におけるアフリカ系をとりまく社会?経済構造上の問題を問い直す契機となりました。
研究書の読み方—
どの章から読んでいただいてもよろしいかと思います。とはいえ、研究書(特に本書のように頁数が多いもの)の読み方のひとつの方法を示します。それはまず、「目次」と「索引」にじっくりと目を通すことです。ここで焦らないように心がけるとよいでしょう。関心のある用語やキーワードが研究書に含まれているかどうかをゆっくりと確認するのです。含まれていれば、その本を借りてみましょう。またそれ以外にも、少しでも心にとまる単語が「目次」や「索引」に見つかれば、その頁を気軽に開いてみましょう(今回の編集では「索引」により多くの用語を含めるように努めました)。アメリカ文学?文化をこえて、様々な分野を学ばれている皆さんのお手元に届くことを、執筆者一同、願っております。
おわりに—
本研究書が2021年度科学研究費補助金?研究成果公開促進費(学術図書)の助成によって出版できた背景には、論考をお寄せいただいた先生方や明石書店編集部の皆様のご理解やご尽力に加えて、実践女子大学研究推進室の皆様のお力添えや励まし、また、実践女子大学図書館ライブラリアンの皆様からのご助力がありました。ここで改めてお礼を申し上げます。ありがとうございました。
書名: 『ハーレム?ルネサンス-<ニュー?ニグロ>の文化社会批評』 |
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