新規着任教員 自己紹介 ③笠原良太(家族社会学)
笠原 良太(かさはら りょうた) 専任講師
専門分野:家族社会学
はじめまして。新任教員の自己紹介、3番手は笠原良太が務めます。
出身は茨城県常総市、鬼怒川のほとり、遠くに筑波山を望むのどかな街です。大学進学とともに上京し、もう15年ですが、まだ人混みは苦手です。なので、日野はとても居心地のよい街で安心しました。
研究テーマは「社会変動とライフコース」、具体的には、石炭産業という戦後日本の基幹産業を事例に、産業が転換するなかで、労働者の家族がどのように対応したのか、とくに、子どもがどのような進路を辿ったのかについて研究しています。
「炭鉱ってなに?」と思うかもしれませんが、実は日本の歴史を考えるうえでとても重要です。日本にはかつて900を超える炭鉱がありました。北は北海道稚内から南は沖縄西表島まで。世界遺産の「軍艦島」(正式名称は端島炭砿、長崎県長崎市)や映画『フラガール』の舞台、常磐炭砿(福島県いわき市)は有名ですね。戦時中は樺太や台湾などにも日本企業の炭鉱がありました。敗戦後の日本にとって、石炭は復興に欠かせないエネルギー源でした。最盛期には約40万人もの炭鉱労働者がいましたが、1950年代後半から早くも衰退に向かい、約50年をかけて転換していきました。日本が高度経済成長を遂げた裏側では、多くの炭鉱労働者とその家族が移動を強いられ、子どもたちの人生も大きく左右されていたのです。
私は、多くの炭鉱が閉山した1970年頃の子どもが、そのとき何を考えていたのかを知るために、当時の作文を集め、分析しています。作文には、「どうして閉山になるのか」、「友だちと離ればなれになってしまう」、「私たちの街はどうなるのか」と、悲痛の叫びが記されています。はじめて当時の作文(原稿用紙)を手にとったときの衝撃は今でも鮮明に覚えています。
さらに、その作文を書いた子どもがその後どうなったのかを知るため、同郷会や同窓会を頼りに、フォローアップ(追跡)調査をおこなっています。60歳代になった当時の「子ども」は、転出後の苦しかった生活や孤軍奮闘した経験を、涙ながらに話してくれます。彼らの話を聴くと、いつも人間のたくましさ、力強さを痛感させられます。
研究紹介が長くなってしまいました。こうした研究での経験を授業でも活かしたいと思っています。前期は「家族関係論」、「家族社会学」、「生活文化史」といった授業を担当しています。最初は基礎的な内容をレクチャーするのに必死ですが、徐々にオリジナリティを出していきたいと思っています。とくに、作文や日記、雑誌記事、インタビューデータといった一次資料を読み解き、想像力を働かせる授業を行う予定です。
1年生の必修授業「家族関係論」では、戦前の「主婦之友」の記事を読んで、今の夫婦関係との違いや共通点を探るグループワークを行いました。受講生は、いつも以上に意欲的に取り組んでいたので、今後は子どもの作文なども活用しながら、さまざまな時代?地域の家族や生活文化について、実践的に考えていく授業にしたいと思います。
また、ゼミでは3?4年生合同で、「現代家族の諸問題」についての調べ学習をスタートしています。ゼミ生の問題関心は幅が広く、興味深いテーマばかりです。たとえば、「子の誕生後の夫婦関係」、「共食と家族関係」、「家族生活とロボット」、「子どもの非行と親子関係」などなど。グループで調べた内容を共有し、理解を深め、卒論執筆につなげてくれることを期待しています。
以上、長くなりましたが、自己紹介を終わりにします。新任教員の自己紹介、トリを飾るのは井上先生です。よろしくお願いします。