井口 眞美先生
子どもが好き、子供と触れ合う仕事がしたい。
その優しい気持ちだけを持って、
胸を張って入学してきてください。
井口 眞美
Mami IGUCHI
生活文化学科
専門分野?専攻
幼児教育学:幼稚園?保育所をフィールドとし、保育者の方々と連携を図りながら保育の質、幼保小の連携等のテーマで現場に密着した研究を行っています。その中で保育現場に還元できる実践的な研究の在り方を探っています。
Mami IGUCHI
生活文化学科
専門分野?専攻
幼児教育学:幼稚園?保育所をフィールドとし、保育者の方々と連携を図りながら保育の質、幼保小の連携等のテーマで現場に密着した研究を行っています。その中で保育現場に還元できる実践的な研究の在り方を探っています。
[プロフィール]東京学芸大学教育学部学校教育選修卒、東京学芸大学大学院教育学研究科幼児教育分野修士課程(学校教育専攻)修了、東京造形大学大学院博士課程修了。20年間の現場経験を経て、2013年実践女子大学に着任。
現場で子どもたちと共に過ごした20年。現場で得た知見のすべてを伝えたい
小学生の頃には、「将来は小さい子どもたちの先生になりたい」と考えていました。小学校の卒業文集にも、その決意が綴られています。
大学は教育学部に進学し、小学校教諭と幼稚園教諭の資格を取得。大学時代には教育実習の他に、児童館や保育園、ベビーホテルなど、さまざまな現場でのアルバイトを通し、多くの子どもたちと触れ合いました。
卒業論文のテーマとして「2歳児の観察研究」を選びました。現場に身を置き、目の前の子どもと向き合い、観察からデータを収集していくフィールドワークの研究手法は、この頃から変わっていません。
大学卒業後、小学校教諭を経て、念願の幼稚園教諭に。20年にわたってクラス担任を受け持ち、子どもたちと共に過ごしました。個性豊かな子どもたちと一緒に歌ったり、工作をしたり……本当に楽しい毎日でした。
その後、選んだのは、指導者となり自分が成し遂げられなかった理想を若い人たちに伝えていく現在の仕事。実際に教壇に立ってみると、学生たちの瞳に宿るピュアな輝きにすぐに胸を打たれました。
保育を学ぶ学生は、ほとんどが明確な目的意識を持ち、真剣に授業を受けてくれています。彼女たちの「幼稚園の先生になりたい」「保育士さんになりたい」という真っ直ぐな夢を支え、現場で得た知見のすべてを伝えていくことが、今の私の役目です。
今、子どもたちの「他者と関わっていく力」を育むことが求められている
短大で3年間教えた後、2013年に実践女子大学の幼児保育専攻に着任。学生を指導する面白さと、日々の成長を間近で見守れるやりがいに目覚めました。かつて、自分が指導した学生が立派な保育者となり、現場で活躍している姿を目にすると、間接的にではありますが、自分も現場の役に立てているのだと感じ嬉しくなります。4年制大学で幼児保育を学ぶ意義は、資格を取得するための勉強やピアノなどのスキルトレーニングだけでなく、自分自身の考えを深めていく「主体的な学び」ができることにあります。
私たちが育てたいのは、幅広い世代の保育者が協力し合いながら実務に取り組む現場において、リーダーシップをとれる人材。子どもにとって本当に大切なことは何なのかを常に考え続けられる人材です。
興味のあるテーマを徹底的に調べ上げ、時間をかけて卒業論文にまとめていく経験は、「より良い保育とは何か?」を問う深い視点へとつながります。
保育は、その時代を映す鏡。しかし、どれだけ時代が変わろうとも、保育には、絶対に変えてはならないものがあるのです。
今、保育に求められているのは、子どもたちの「他者と関わっていく力」を育むことです。保育分野への株式会社参入も進み、保育の質が問われている今だからこそ、一度、原点に立ち戻らなければならないと考えています。
他者と関わっていく力は、いわゆる「人間性」のベースになるものです。保育に携わるすべての人材には、やはり優れた人間性が求められます。もちろん一朝一夕で身につけられるものではなく、私自身にとっても永遠の課題。学生たちと悩み、試行錯誤を繰り返しながら、人間としての豊かさを一緒に磨き続けていきたいですね。
子どもたちと一緒に成長していける毎日は、他の仕事にはない発見に満ちあふれている
人間性を育む目的で、学生たちのボランティア活動も推進。私自身のフィールドワークとして、「主体的にボランティアに参加する学生は、保育者としての質をどのように高めているのか?」というテーマを設定し、学生たちの様子を観察し続けています。
また、実践女子大学に着任してから7年が経ち、数多くの卒業生が、保育の現場でキャリアを重ねています。彼女たちをキャンパスに呼び、学生も参加できる「OB勉強会」を開くのが目下の目標。定期的に情報交換?意見交換ができるような継続的な取り組みにしていきたいですね。
個人的には、保育者だからといって、活発な性格でなければならないとは思っていません。それよりも、自分の長所や短所を素直に受け止め、自分自身を愛せることが大切。そうでないと、子どもたちや一緒に働く仲間たちを素直に褒められませんから。
幼児保育専攻の学生は誠実な分、傷つきやすい面もあるのかな、と感じることがあります。どうか、この4年間で「図太く」なってください。現在、保育の現場には数多くの課題があります。少しでも「おかしいな」と思うことがあったら、きちんと声を上げる強さを持ってほしいのです。
最初は小さな声でもいい。現場での勇気ある行動はいつか必ず、社会全体に良い影響を与えていきます。
現場で働いていた20年間、私は「こんなに笑っていられる仕事って他にあるのかな?」と思っていました。小さな子どもは、昨日できなかったことが、今日には突然できるようになっている不思議な存在。社会全体にとってかけがえのない存在である彼ら、彼女たちと一緒に成長していかれる毎日は他の仕事にはない発見に満ちあふれています。
少子化が進む昨今、ひとりっ子も多く、小さな子どもと遊ぶことに慣れている学生はあまりいません。電車の中で幼い子どもに笑いかけられ、嬉しくなった——きっかけは、そんな些細なことで構わないのです。ピアノや絵や、運動が苦手でも臆する必要はありません。子どもが好き、子供と触れ合う仕事がしたい。その優しい気持ちだけを持って、胸を張って入学してきてください。