サッポロホールディングス株式会社元取締役会長 特別顧問 上條 努氏が本学の「女性とキャリア形成」の授業で講演しました(12/23)
女性の活躍が社会や企業の成長のカギを握る
視野を広げて、興味あるものに積極的にチャレンジを!
2021年度の共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)は、実践女子大学の卒業生を含む企業トップの生き方から学ぶリレー講座。その最後を飾る登壇者は、サッポロホールディングス株式会社の元取締役会長で特別顧問の上條努氏です。女子大で講演するのは初めてと語る上條氏は、事前に学生たちから寄せられた質問に目を通した上で、「自分自身がどのように仕事と向き合ってきたか」と「学生の皆さんに期待すること」の2点についてお話をしてくれました。
確たる思いがあってサッポロビールに入ったわけではなかった
でも、社内で興味を引かれる仕事には貪欲に挑戦した
「私は仙台市の出身で、高校時代に仙台市の南東に隣接する名取市にサッポロビールの仙台工場ができたことで、サッポロビールという会社を知りました。最新鋭の素晴らしい工場で、『すごいなぁ』と思ったのは覚えています。でも、まさか自分がサッポロビールに入社することになるとは、当時は考えてもいませんでした」と上條氏は話します。
就職活動をしているなかで、ある石油会社とサッポロビールの2社から内定をもらったという上條氏。税務署職員だった父親に相談すると、「そりゃあ、飲めるほうがいいんじゃないか」とアドバイスされてサッポロビールを選んだとユーモアたっぷりに教えてくれました。
「本当に、『これがやりたい』というような確たる思いがあったわけでもなく、ただ内定をもらえたから入社を決めたという感じでした」と上條氏は苦笑します。
入社して最初に配属になった、北九州市門司区にあったサッポロビール門司工場の業務部門で業務をスタート。その後本社に異動し、購買の仕事に携わったそうです。
「その後、アメリカ?サンフランシスコに現地法人をつくるという話が出て、私はすぐに先輩に『私も連れて行ってください』と直談判しました」と上條氏。結果、上條氏は5年間サンフランシスコで働き、1985年にはその現地法人「サッポロUSAサンフランシスコ支店」の支店長に就任しました。
帰国後は経営企画部で手腕を発揮。サッポロビール飲料株式会社の取締役を経て、2007年にサッポロホールディングス株式会社取締役経営戦略本部長、2011年には代表取締役社長に就任しました。
「長い会社員生活で、私は希望しないで行った部署はひとつもありませんでした。サラリーマンがこのような経歴を送れることは珍しいことですが、どの部署も自分で会社に希望を出して、その部署で仕事をさせていただくことができました。確かに私は、確たる思いもなくサッポロビールに入社しました。しかし、会社に入ってからは、興味を引かれるものに貪欲にチャレンジしてきました。そんな自分を振り返ってみて思うのは、社会人生活、会社員生活を豊かに、面白く過ごす秘訣は、『どれだけ興味を引かれるものを持てるか』なのではないかということです。興味を持った部署で、自分の思いをどうやって実現させるか。それがやりがいにつながっていくのだと思います」(上條氏)
他者との違いを理解した上で一緒に社会をつくっていく
その中で自分は何を仕事にしていくかを考えよう
「多様性を意味するダイバーシティという言葉を少し前からよく耳にするようなりましたが、私がその大切さを実感したのはサンフランシスコに駐在しているときでした」と上條氏は語り始めました。
ご存知の通り、アメリカでは白人や黒人、東洋人などさまざまな人種が暮らしています。多様なルーツを持った人々が混在しているのがアメリカ社会です。「そんなアメリカで暮らしてみて、いくつか考えることがありました」と上條氏は話します。
「例えば、生魚。今でこそ和食ブームも手伝って多くのアメリカ人が刺身を食べるようになりましたが、私が赴任していた当時は、生魚を食べるのはイヌイットの人たちと我々ぐらいでした。また、韓国の人たちと食事をしたときに、私が何気なくお椀を手に持って食べていると、変な視線を感じたので理由を尋ねると、韓国では食器を手に持って食べるのは一般的によろしくないという返事が返ってきました。こういう文化や習慣の違いは、ごくごく普通にある。日本人の間では常識でも、世界標準では非常識になってしまうこともあるんです。だからこそ、社会や企業ではダイバーシティ(多様な人材を活かす戦略)が大切なんですね。皆さんからいただいた質問に『これから何をしたらいいですか』というものがありましたけれど、私は『広く見聞してほしい』と思っています。海外だけでなく日本国内を見渡しても、人それぞれ、違いはあります。ですから、違いがあることを理解した上で、一緒に社会をどうつくっていくか、この社会のなかで自分は何を仕事にしていくのか、ということを考えていただければいいのではないかと思います」
女性の皆さんは積極的に社会に出てほしい
ただし、就活で模範回答的なことをいっても面接官に見抜かれる
そして上條氏は、目の前にいる学生たちに期待することを話してくれました。
「社会の公平性などを考えると、男女半々が望ましいと思っています。ですから女性の皆さんは、積極的に社会に出てほしい。会社でバリバリ働いてほしい。ただ、これから皆さんは就職活動で面接を受けることも多いと思いますが、面接官に耳障りのいいことばかり言うのはやめてください。本心でもないのに模範回答的なことを言っても、面接官は不思議と見抜いてしまいます。私も面接官をやった経験があるから分かるんです。知らないことは正直に知らないと言う。取り繕う必要はないんです。『これから勉強します』と言えば十分です。自分の人間性そのものを伝えること、それが面接のポイントだということを覚えておいてください」と上條氏は教えてくれました。
何かに疑問を感じたら、その理由を考える習慣を持とう
女性が活躍できる場は広がっている
さらに上條氏は、「世の中には、『なんかおかしい』と思うことがたくさんあります。そのおかしいことを好き嫌いで考えるのではなく、『何がおかしいんだろう』と考えていただけるといいと思います。そして、その『おかしい』に対して、ポイントを整理して『もっと違う解決法があるのではないか』と考えることが社会人の始まりだと思います。考えがまとまらなかったり、分からなかったりしたら、先生に聞いてみるのもいいでしょう。社会に出て先輩に聞くのもいいし、友達同士で『私はこう思うけど、あなたはどう思う?』と話し合うのもいい。疑問を感じること解き明かしていくことが、興味を持って仕事を続けていくことができる秘訣ではないかと思います」(上條氏)
また、世の中には、解き明かされていない課題がたくさんあります。
「ですから、やりたいことを複数持って、自分から取りに行くことも大事だと思います」(上條氏)
サッポロビールに関して言えば、採用は基本的に男女半々。
「社会は女性の感性を求めており、女性が活躍できる場は広がっています。採用もいろんな形で行われるようになりました。社会の成長に女性の活躍は欠かせません。皆さんも期待を持って社会に飛び出し、興味を引かれたことにどんどんチャレンジしてほしいと思います」と上條氏は力強いエールを送ってくれました。
深澤晶久教授の話
本講座の最後にお招きしたサッポロホールディングスの上條様は、ユーモアたっぷりにしかも、女子大生目線での数々のお話しをしていただき、教室も何か温かい雰囲気に包まれていました。厳しいビール業界の中で、また、海外での業務経験も長く、示唆に富んだ数々のエピソードが学生の心に強く響いたことと思います。
全てご自身が希望された部署でキャリアを積み重ねてこられたというお話しは衝撃的でもありました。しかし、このことは上條様が、それぞれの部署で最高の成果を上げ続けてこられた証でもあると考えます。
本当にありがとうございました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。