SBI金融経済研究所株式会社取締役代表理事の政井貴子氏が本学の「女性とキャリア形成」の授業で講演しました(11/25)
与えられた機会に丁寧に向き合うことで、専門性が高まり、また新たな機会へと繋がる
2021年度の共通教育科目「女性とキャリア形成」(担当:文学部国文学科 深澤晶久教授)は、実践女子大学の卒業生を含む企業トップの生き方から学ぶリレー講座。4回目となる2021年11月25日のゲストは、SBI金融経済研究所株式会社取締役代表理事の政井貴子氏です。実践女子大学文学部英文学科の出身で、学生たちにとっては大学の先輩でもある政井氏。学生たちは真剣な眼差しで、政井氏のお話に耳を傾けていました。
男女共同参画が政策として推進される時代の中で、自身のキャリアを積み重ねてきた
「私は2021年6月まで日本銀行の政策委員会審議委員を務めていましたが、任期満了で退任し、今はSBI金融経済研究所の取締役代表理事を務めています」
大きな拍手を受けて壇上に上がった政井氏は、講演をこのような言葉で始めました。この日のテーマは、「なぜ、女性活躍推進なのか」「写真で振り返る私の履歴書」「Opportunity」の3つ。「一つ目のなぜ、女性の活躍推進なのか、についてお話しするのは、皆さんが女性という当事者として、国の政策を理解しておくことは大切だと考えたからです。また、私自身がその流れの中でキャリアを積んできたということもあり、歴史的背景を掴んだ上で、私のキャリアのお話しをするのが良いと思ったのです。」と政井氏は話します。
政井氏によれば、世界的規模で性差別撤廃に向けた取り組みが始まったのは1975年のこと。メキシコシティで開催された国連主催の「第1回国際女性年世界会議」で、国際女性年の目標達成のためにその後10年にわたり国内、国際両面における行動への指針を与える「世界行動計画」が採択されたのがきっかけだったそうです。1985年には日本も「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女子差別条約)」を批准。同年、「男女雇用機会均等法」も制定されました。
さらに、2010年にはイギリスが「コーポレートガバナンス?コード(上場会社向けの行動原則)」、および、「スチュワードシップ?コード(金融機関を中心とした機関投資家のあるべき姿を規定したガイダンス)」を制定。2014年には、日本も「スチュワードシップ?コード」を制定しました。
残念ながら、コロナ禍で日本のジェンダーギャップは拡大してしまいました。しかし、時代の流れとともに意識は確実に変わってきていますし、女性活躍の状況は投資判断でも重視されるようになってきています、と政井氏。
「1988年に社会人となった私は、こうした女性の活躍を推進する流れの中で、キャリアをスタートしました。現在は、次世代の活躍する女性のために自分なりに役割を果たしていきたい、とも考えています。」と政井氏は話してくれました。
You never know what you can do until you try. だからまずはトライしてみてほしい
大学卒業後、政井氏は外資系金融機関でそのキャリアをスタートさせ、約22年間、複数の外資系金融機関で金融市場関連の仕事をしてきました。その後、日本企業でも働いてみたいという希望もあって、2011年に新生銀行に転職。2013年には女性初の執行役員になり、2016年には日本銀行政策委員会審議委員に就任したそうです。
金融市場での現場経験を積んでいくうち、いつの頃からか、メディアで経済金融情勢の解説をする機会を得たり、講演や講義を実務の専門家として依頼されることも多くなっていきました。と政井氏は言います。
もっとも、就職時に金融市場関連の業務に就きたい、といった希望は特に持っていなかったそうです。「でも、どんなことでも続ける、ということには一定の意味があると感じています。」キャリアをスタートさせた外資系金融機関から20年以上一貫して金融市場の現場を担う仕事に従事していく中で、その経験を軸に知識を深めていくことになります。様々な機会に丁寧に向き合っていく中で、専門性も自ずと高まり、メディア出演など、更に新たな展開、機会を得ていきます。
自身のこうした経験もあり、皆さんへのメッセージとして、どんなことでもまずやってみてほしい。と政井氏。「それに、何かをお願いされるのは、相手はあなたにはできる、ときっと思っているから。だから皆さんにも何であれ、まずはトライしてみてほしいと思っています。」
学生時代、実は英語は得意科目ではなかった
「実は私、英語は不得意だったんです。」という意外な言葉が政井氏の口から飛び出したのは、講演も終盤の質疑応答のときでした。学生たちの「英語がうまくなる方法を教えてください。」という質問に答えたときのことです。
「受験生の時、実は、英語がとても不得意でした。結局最終的には、英文学科を選択、大学でも英語を中心に勉強を続けたのです。そうしたこともあり、就職する頃には、英語を道具として使う必要のある仕事がしたい、と考えるようになっていたと記憶しています。」
英語力をつけ、維持することの秘訣として、「語学力というのは、筋力と同じで、常に動かしていること(使用すること)、つまり、英語を生活の中に取り入れていくことが大事だと感じています。今は、外資系企業に居た時ほど英語を使う機会はありません。ですから、例えば、iPhoneの表示を英語にしてみたりするなど、なるべく生活の中に英語を取り入れるように気を遣っています。」と、政井氏なりの英語力維持の秘訣を教えてくれました。
仕事も、プライベートも、さまざまなことに前向きに取り組むことで、彩り豊かな人生を過ごしてほしい
「仕事とは、人生を彩る重要なピースの一つ。私が皆さんの年頃だった頃、金融経済という現象が、私の人生をこんなにも彩るとは想像していませんでした。世の中の流れも女性の活躍を後押ししている中、皆さんにも仕事を通してご自身の人生を豊かにしていってほしいと願っています。もっとも、今日は、女性とキャリア形成という視点でしたので仕事のお話が中心になりましたが、もちろん人生は仕事だけではありません。」
「人生を歩んでいく途中には、家族のことなど、いろいろな出来事、必ずしも楽しい嬉しいこととは限らない出来事にも遭遇します。私にとって、そうした出来事全てが結果的に自分の人生をより豊かにしてくれた、と感じています。」と政井氏。
「人生にはいろいろなことが起こります。良いこともあれば、悪いこともあるでしょう。でも、それらを全てひっくるめて、前向きに取り組み、楽しみ、ご自身の人生をより彩り豊かなものにしていっていただきたいと思っています。」
同窓の先輩は、これから社会に羽ばたこうとしている後輩たちに、温かくも力強い励ましのメッセージを送ってくれました。
深澤晶久教授の話
本学卒業生お二人目としてご登壇いただいた政井貴子様は、外資系の金融機関をご経験の後、日本銀行の政策委員会審議委員を務められた方であり、お話しの随所にシャープな切り口が散りばめられた、日本の金融の中心でご活躍になられる政井様ならではの講演をいただきました。
マクロな厳しい視点からのアドバイスもいただけた一方、仕事だけが人生ではないというご自身の経験からのお言葉は学生の心に深く届いたことと思います。この場を借りて厚く御礼申し上げます。