<研究室訪問>須賀由紀子教授
実践女子学園では、多くの教員が各分野において最先端の研究に取り組んでいます。
今回は、生活科学部 現代生活学科の先生に、研究内容についてお聞きしました。
「住民主体の地域づくり」の未来を、
学生とともに探究する
少子高齢化の進展や、大規模自然災害の発生などを背景に、
地域コミュニティの重要性に注目が集まっています。
日野市をフィールドとして、行政や住民、学生とともに
地域自立型社会の課題に取り組む須賀先生に、
活動の内容や展望をお話していただきました。
休息やリフレッシュのためばかりでなく、その時間そのものの価値に気づき、有意義に過ごすー余暇の豊かさを見つめる研究の中で暮らしの豊かさへと視野が広がり、「生活」というものの価値に目を向けるようになりました。家族や身近な人との時間をいつくしむ、自分を取り巻く暮らしの中にある自然の美しさに心を留めるーそうした日常を味わいながら丁寧に生きる、その在り方が生活を文化にしていきます。
2014年に創設された現代生活学科に所属してからは、学科の学びの柱の1つである「自立」に関わるものとして「地域自立型社会の構築」を研究テーマとし、地域社会の豊かな暮らしづくりに目を向けるようになりました。
地域自立型社会とは、「こういう暮らしができる地域にしたい」と住民が思い描き、その実現のために主体的に行動していく社会のことです。少子高齢化が進む日本において、今後さらに望まれる社会像ではないかと思います。
現代生活学科では「現場に出て学ぶ」プロジェクト型の教育を大切にしています。私も学生とともに積極的に地域へ足を運び、日野市など行政とも連携しながら自立型の地域づくりに取り組んでいます。地域での活動で市民の皆さんと関わり実感するのは、人々の拠り所(居場所)となる地域コミュニティの大切さです。日野市ではいろいろな住民主体のコミュニティづくりが行われているのですが、点在するさまざまな取り組みの芽をどうやって面へと広げ、持続可能なものにしていくかが課題です。
その一方で、地域づくりに携わる学生の様子を見ていて、彼女たちの柔軟な発想や感性、行動力には、地域コミュニティを豊かにしていく可能性が秘められているのではないか、と感じています。住民の方々は、学生の眼差しを通じて自分たちの地域の魅力や価値を再発見し、住民同士のつながりをつくっていくことができます。の活動は学生にとっても得るものが大きく、多彩な表情を持つ地域と、そこで充実した暮らしを営もうとする住民の方々とのふれあいの中で、「本当の意味で豊かに生きる」ことへの意識を自然に育みながら成長していくことができます。彼女たちが親世代となった時、自分たちの地域社会をより良くするために自ら行動していくことでしょう。このような教育が実現できていることに、現代生活学科の意義を感じています。
ゼミでは「地域の暮らしの良さを発掘して、生活者それぞれのライフスタイルの豊かさに結びつけていくにはどうしたらよいか」を探究しています。規定のゼミ時間には文献を読んだりディスカッションをして、「豊かさとは何か」「文化とは何か」といったことを考察します。そしてより深い学びを求める学生には、先述のように地域づくりの現場に触れられるさまざまなフィールドを用意しています。学生はそれぞれの場所で、住民がどのような思いを抱いているか、どのような問題に直面しているかを目にし、課題解決に向けてともに行動していきます。日野キャンパスから徒歩圏内にあるコミュニティ?スペース「日野市立カワセミハウス」の活性化に取り組み、新たな人のつながりを生み出すなど、多くの成果が学生たちによってもたらされています。こうした学びや活動を通じて、学生たちには「人や情報をつなぐ力」を身につけてほしい。また、生活者としての価値観を確立し、地域、そして自らの生活を豊かにするための知識と行動力を養ってもらいたいと願っています。
地域づくりの研究において、日野市は絶好のフィールド。行政はじめさまざまな機関、地域住民の方々との良い関係性も生まれています。これまでの活動をもとに、地域の多様な世代が交流し、一人ひとりのライフスタイルを豊かにしていくことができるようなコミュニケーション?ツールやプログラムを開発していきたいと思っています。そして日野市と本学との事例を、他のさまざまな地域で役立ててもらえたら、と考えています。