図書館員のおすすめ本紹介
図書館員がおすすめする本を紹介します【日野?渋谷】
図書館員がおすすめする資料を紹介します。
図書館の所蔵情報も入れましたので、ぜひ借りて読んでみてください。
今年に入って流行した新型コロナウィルスは私たちの日常生活を大きく変えました。
都心から地方への移動の自粛などで、家族や大切な友人に会えなくなった人もいます。
また、他人の命を守ることや、感染の危険の中で働くエッセンシャルワーカーの存在に気づかされた一年でもありました。現在も急速にコロナ感染者数が増える中、現場で働く医療従事者が主人公である小説3冊を選んでみました。
「わたしを離さないで」/ カズオ?イシグロ著
「体の贈り物」/ レベッカ?ブラウン [著]
「ダイヤモンドダスト」/ 南木佳士著
1冊目は、「私はキャシー?H。介護人をもう十一年以上やっています。」という回想の書き出しで始まる、
2017年ノーベル文学賞を受賞したカズオ?イシグロの『わたしを離さないで』(2005年)です。
主人公は三十一歳、介護人を退職すれば本来の「使命」が訪れます。彼女には両親も兄弟もいません。ヘールシャムという恵まれた教育施設で育てられ、仲良しだったルースとトミーはすでにその「使命」を果たしてこの世を去りました。卒業後、介護人として「提供者」となったトミーと再会したキャシーが、なぜ自分たちに美術や詩作など高度な教育がほどこされたのか、二人でその答えを求めに行くラストシーンは胸に迫るものがあります。
2冊目は、アメリカの作家レベッカ?ブラウンの『体の贈り物』(1994)です。
この本もまた、ある特定の病を専門とするホームケア?エイドの女性が主人公です。彼女は派遣先の「利用者」の家でてきぱきと家事をこなす傍ら、持ち物や部屋の様子から患者の趣味やこれまでの人生を想像し、とことん寄り添います。「汗の贈り物」から「悼みの贈り物」まで日記風につづる11の連作短編には、彼女にしか分からない、患者が残したかけがえのないギフトのことが記されています。
1999年に本作の一編が、10代向けファッション雑誌『オリーブ』の400号記念号に掲載され、「普段は翻訳小説なんて読まないけどこれは読めたし、すごくよかった」と高い反響を得ました。現在は新潮文庫に所収されていますが、本学図書館では初版の単行本を所蔵しています。
3冊目は、第100回芥川賞を受賞した南木桂士の『ダイヤモンドダスト』(1989年)です。
信州の町で看護士として勤務する和夫は、病身の父と息子の三人暮らし。ある日、病院にアメリカ人宣教師「マイク」が入院し、父と同室になります。マイクを通して初めて知る父の若かりし日の姿、そして信濃の自然の中に吸い込まれるように衰弱していくマイクの姿。自らも佐久市の病院に勤務する医師である著者の臨床体験をもとにしたこの小説には、著者自身の生い立ちを織り混ぜ、命がまるでダイヤモンドダストのように輝きながら消えていくさまを、1人の等身大の看護師の眼を通して描いています。
医療現場ではきれいごとばかりでなく、患者との気持ちが行き違う場面も多々あると思いますが、これらの作品はそのような部分もていねいに描きこみ、どの作品からも「あなたがいなくなって寂しい」という温かな哀しみのこもったメッセージが伝わってきます。
出版から時がたっていますが、異なる時代背景や環境のもとで読むと、作品の味わいもまた違ってくるように思いました。ぜひこれをきっかけに図書館のいろいろな本を手にとってみてください。
図書館所蔵情報
書名?著者名 |
請求記号 |
配架場所 |
わたしを離さないで / カズオ?イシグロ著 ; 土屋政雄訳 |
B2/Is7 |
渋谷2F文庫 |
わたしを離さないで / マーク?ロマネク監督 |
48624 |
渋谷3F視聴覚資料 |
体の贈り物 / レベッカ?ブラウン [著] ; 柴田元幸訳 |
933/B87 |
日野1F |
ダイヤモンドダスト / 南木佳士著 |
913.6/N26 |
日野1F |
『美術手帖』2014年2月号(Vol.66, No.999)
(特集:未来はあなたがつくる!アートのお仕事図鑑)
雑誌の過去の号はバックナンバーと呼ばれ、一般的な図書館では、申請をしないと利用ができない書庫に納められているところが多いと思います。
本学の雑誌バックナンバーは、申請をしなくても利用できるものも多くあり、例えばこちら2014年に発行された『美術手帖』は、自分の足で書架まで赴き、手に取って見ることができます。
美術関係の仕事に就きたいと思った時、どんな仕事が思いつきますか?
雑誌『美術手帖』のバックナンバーを調べてみると、美術関係の仕事を紹介した特集号がいくつか発行されており、その現場で働く人たちが紹介されています。(※)
発行から年数が経った雑誌の情報は、今とは事情が違う部分もあるかもしれませんが、どのような職種があるかを知ることができる、参考となる1冊だと思います。
美術関係だけでなく、一般的な仕事(職種や労働について)の本は、本学では分類番号の366番台や、S(進路?資格?就職本)の書架に多く並んでいます。本学の蔵書を活用し、自分はどんなことに興味があるのか、キャリアを考えるきっかけになってもらえたらと思います。
※ 『美術手帖』では、他にも2009年2月号(Vol.61, No.918)や、2003年7月号(Vol.55, No.836)で美術関係の仕事について特集されています。
図書館所蔵情報
書名?著者名 |
請求記号 |
配架場所 |
BT : 美術手帖 : bijutsu techo : monthly art magazine |
705/B42 |
渋谷B1F雑誌(バックナンバー) |