田中 瑛専任講師(人間社会学部社会デザイン学科 メディア?コミュニケーション)
『〈声なき声〉のジャーナリズム マイノリティの意見をいかに掬い上げるか』
出版社:慶應義塾大学出版会(2024年5月)
SNS時代のジャーナリズム論
誰もが情報を発信し、フェイクニュースが氾濫するこの時代に、ジャーナリストは「真正性」をいかに担保し、マイノリティの声を掬い上げ、活性化させるべきなのか。
本書は、現代のデジタル化するメディア環境において、言説がより個別に、より自然に、より親密になり、「真正性」(本物らしさ)を追い求めるなかで、ジャーナリズムをどのように再定義すべきかを論ずるものである。
『真相深入り!虎ノ門ニュース』や『ハートネットTV』、『クィア?アイ』といったTV番組の言説構造の分析から、情報の送り手と受け手の関係性を編み直し、ジャーナリズムが〈声なき声〉をいかに掬い上げ、活性化すべきかの方途を探る。
そして、ジャーナリズムの担い手が送り手と受け手の垣根を超え、等身大の自分自身として語り、自分たちの居場所としてのメディアについて考える。そうした社会のかたちのイメージを描き出し、もっと幅広い文化的実践をジャーナリズムとして再評価していく。
■著者より
この本は、多様化?複雑化するメディア環境において欲望される「真正性」(例えば「本音」や「自然さ」など)の観点を手掛かりとして、より幅広い文化的実践を「ジャーナリズム」として位置付ける試みです。現代のSNSや報道の在り方についてのモヤモヤを考える機会として頂ければ幸いです。
■目次
序 論 「声なき声」をどのように活性化すべきか
第1章 「声なき声」の活性化、「真正性」の政治
第2章 「声なき声」と娯楽化する政治——『虎ノ門ニュース』における「読解の肩代わり」
第3章 公共サービスメディアの葛藤——『ハートネットTV』におけるメッセージ性と「真正性」の調停
第4章 ポピュラー?ジャーナリズムとしてのリアリティTV?——『クィア?アイ』における「裏側の物語」と連帯の政治
第5章 ジャーナリズムの境界線を引き直す——対話の場を紡ぐための役割
第6章 「真正性」の政治を内側から攪乱する——オルタナティヴなメディア環境はどのように可能か
補 論 対話のためのメディア?デザインに向けた試論——メディア?ワークショップの設計と批判的考察から
結 論 今後のメディア?ジャーナリズム研究に向けて