【卒業生の活躍】「ジュルジェヴィ?ストゥポヴィ修道院ドラグティン王礼拝堂(セルビア)壁画修復」プロジェクト
本学科非常勤講師の嶋田紗千先生は、本学科を2001年に卒業された後、岡山大学大学院、ベオグラード大学への留学を経て、現在もセルビア中世美術史を研究しています。このたび嶋田先生は住友財団や在大阪セルビア共和国名誉総領事館(大日本除虫菊株式会社内)から助成を取得し、セルビアの修道院の壁画修復プロジェクトに尽力しています。現地からメッセージを寄せていただきました。
本学科 卒業生?非常勤講師 嶋田 紗千 先生のメッセージ
現在、滞在しているジュルジェヴィ?ストゥポヴィ修道院は、セルビアの首都ベオグラードから約270キロ離れたノヴィ?パザルという町の高台にあります。この地は中世の古都スタラ?ラスに位置しているため、周辺の文化遺産と共に1979年に世界遺産「スタラ?ラスとソポチャニ修道院」に認定されました。
聖堂と修道院は、1170-71年に中世セルビア王国ネマニチ朝の創始者ステファン?ネマニャ(Stefan Nemanja, 約1113-1200年)によって建てられ、今回修復している礼拝堂は1283年頃ネマニャの曾孫にあたるドラグティン王(Stefan Dragutin, 1244-1316年)によって建立されました。セルビア中世美術を代表する修道院建築とフレスコ画を有しています。しかし、オスマン帝国に支配されて以降、14世紀末から20世紀前半まで荒廃していました。
数年前に私は聖堂のフレスコ画の調査でこの地域を訪れた際に日本の恩師の紹介で現地の修復家と知り合いました。複数の聖堂を案内してもらう中で修復プロジェクトへの協力を頼まれ、帰国後助成先を探して申請を行いました。コロナ禍ではありますが、ワクチン接種を行い、現地の恩師や友人の協力で9月からプロジェクトを始めることができました。
このプロジェクトでは2021年9月?10月末の2ヶ月の間に4名の現地の修復家によって日々細かい作業が行われています。フレスコ画の洗浄、モルタル内の砂から表面に排出される塩分の除去、小さい剥落部分へのモルタルの補充、隆起した壁の裏側へのモルタルの流し込み、大幅な破損部分では以前の修復時に補強したモルタルの除去と新しいモルタルへの交換、落書き等の除去、部分的な着彩などを行っています。
1か月以上経過し、表層に蓄積していたものが取り除かれ、フレスコ画が生き生きとしてきたことが分かります。作業用の足場に上るとフレスコ画を物凄く近くで見ることができ、制作された当時の姿をよりリアルに感じることができます。
美学美術史学科で学んで随分立ちますが、今でも講義や演習で先生方に教えていただいたことをよく思い出します。そのような経験を活かし、美術に関する国際協力ができることを嬉しく思います。