コルネーエヴァ?スヴェトラーナ Svetlana Korneeva(国際学部国際学科准教授 日本文化論)
『喧嘩両成敗と乱心』
Kenka Ryōseibai (equal punishment to all parties in a quarrel) and Ranshin (insanity)
出版社:汲古書院(2024年2月)
本書は「乱心」という視角を新たに導入し、刃傷事件の処理法を分析した。具体的に、江戸時代前期に起きた盛岡藩と加賀藩の喧嘩?刃傷事件の諸事例を題材に、それらの事件がいかなる方法によって処置?処理されたか、そして、処罰の対象者および処罰の中身がいかなるものであったかを解明することを目的とした。実際に分析したのは、1644年から1764年までという、江戸時代前期における盛岡藩と加賀藩の計99の事例である。
それらの事例分析を通じ、江戸時代前期における盛岡藩と加賀藩の法運用と慣習の特徴をいくつか提示すると同時に、個別の事例から見えてくる、喧嘩口論事件の処理法の実態の解明に近づくことを目指した。
■著者より
本書は江戸時代前期に起きた傷害事件の処理法を手がかりに、喧嘩両成敗がどのように適用されたかを問題意識とし、とりわけ「乱心」認定が担った役割に焦点を当てている。喧嘩や刃傷事件の処理では、喧嘩両成敗は理論上シンプルな法理に見えるが、実務上の運用は単純ではないことを、事例分析を通して提示を試みた。本研究には、トラブル解決方法に内在する日本の社会文化の独自性を紐解くヒントが多く、現代社会への理解を手助けするステップとして、理論と現実が複雑に絡み合っている有様の奥深さをぜひ感じていただきたい。
■目次
はじめに
序章
第一部 刑罰体系から見た喧嘩と乱心
第一章 江戸時代の刑罰とその体系
第二章 江戸時代の喧嘩および喧嘩両成敗法とは
第三章 江戸時代における「乱心」の取り扱い
第二部 盛岡藩と加賀藩での喧嘩口論事件の処理法—(両)成敗と乱心を中心に—
第四章 盛岡藩と加賀藩の法制と職制の概要
第五章 盛岡藩および加賀藩の刃傷事件の処理法
第六章 盛岡藩と加賀藩の喧嘩事件処理にみられる「乱心」認定
第三部 両藩での喧嘩口論事件の処理の特徴とそれをめぐる法制史学的考察
第七章 盛岡藩と加賀藩の喧嘩、刃傷沙汰の処理の特徴
終 章 刃傷事件の処理法に関する法制史的考察