「日本型金融リテラシー教育の在り方を考える:東南アジア諸国との比較」を開催しました(3/7)
2020年度 実践女子大学研究成果公開促進費 助成事業
国際シンポジウム
『日本型金融リテラシー教育の在り方を考える:東南アジア諸国との比較』
“International Conference on Financial Literacy around the Pacific Rim:
Exploring the Japanese Style of Financial Education”
国際シンポジウム
『日本型金融リテラシー教育の在り方を考える:東南アジア諸国との比較』
“International Conference on Financial Literacy around the Pacific Rim:
Exploring the Japanese Style of Financial Education”
2021年3月7日(日)(12時20分~16時30分)、オンラインにて国際シンポジウム“International Conference on Financial Literacy around the Pacific Rim: Exploring the Japanese Style of Financial Education”(『日本型金融リテラシー教育の在り方を考える:東南アジア諸国との比較』)を開催いたしました(ベース発信基地 渋谷キャンパス804)。
SESSION 1は「環太平洋環太平洋地域における金融教育」(“ Topics on Financial Education around the Pacific Rim”)について、韓国、ニュージーランド、フィリピンからの現状について報告がありました。
韓国のハン?ジンソ教授(京仁教育大学)は、韓国の高校生を対象とした金融リテラシー?テストの実施状況と結果についてでした。近年、韓国ではパーソナルファイナンスの指導に熱心に取り組んでおり、得点も上昇していますが、アメリカよりは低いことなどが報告されました。
ニュージーランドについては、スティーブン?リム先生(ワイカト大学)から、金融教育の目的は「家族や地域社会のウェール?ビーイングを向上させ、経済を成長させることに役立つこと」であり、ニュージーランドの学生の金融リテラシーはOECD諸国の中では比較的高いものの、今後は起業家精神の醸成を含めたカリキュラムの再編が必要であることなどが報告されました。
フィリピンのアメリア?べロー准教授(フィリピン大学)からは、フィリピンでは男性よりも女性の方が金融知識は高い傾向にあるものの、決して十分ではないこと、学歴による差が大きく、幼少期における貯蓄の習慣や嗜好の影響が成人後も大きいことなどが、報告されました。教育省の金融リテラシーに関する各学校段階での取り組みについても紹介がありました。
SESSION 2「日本における金融教育」(“Topics on Financial Education in Japan”)では、日本の金融教育の現状と将来についての報告でした。
小川正人教授(環太平洋大学)は、アメリカの金融?経済教育の現状と、日本で金融?経済教育を普及?推進するための方策についての提案がありました。最新調査(2020年)によると、アメリカでは金融教育や関連する科目を卒業必須とする州が増えており、教員を対象としたワークショップも盛んに行われています。日本でも学会?行政機関?金融機関?企業?NPO?学校?大学間のネットワークの構築と教員向けワークショップの開催が望まれます。
阿部信太郎教授(城西国際大学)からは、日本の大学生の金融リテラシーの現状について報告がありました。
髙橋桂子教授(実践女子大学)からは、日本の大学生の金融知識、金融態度、金融行動との関連についての報告があり、大学生の金融態度は金融行動にプラスの影響を及ぼしているという結果が示されました。
SESSION3は、環太平洋地域と日本についての報告を踏まえて、山根栄次三重大学名誉教授、山岡道男早稲田大学名誉教授から、いくつかの質問や提言がありました。
それぞれの国で必要とされる金融知識は、その国の経済発展の状況や福祉政策によって異なるため、学校教育の内容にも違いが生じます。これらの点を考慮して国際比較研究を行うことが重要です。また、ニュージーランドやフィリピンでは学校教育に起業家教育を取り入れています。アメリカでも起業家教育は重要な経済教育の一分野となっており、今後、日本でも検討しなければならない課題であることなどが議論されました。
経済活動は複雑化し、低経済成長に伴い家計資産形成をすることが難しくなっています。金融well-beingを実現するためには誰もが経済的?社会的環境変化に対応した金融リテラシー?スキルを獲得することが必要です。金融にはcultural contextが伴います。その国の文化的、社会的、経済的状況に応じて研究?教育活動を展開させていくことが重要であることを改めて確認しました。
登壇者(登壇順)
HAHN, Jinsoo 氏(京仁教育大学教授)
LIM, Steven 氏 (ワイカト大学ワイカト?マネジメントスクール講師)
Bello, Amelia 氏 (フィリピン大学ロスバノス校経済学部准教授)
猪瀬武則 氏 (日本体育大学教授)
小川正人 氏 (環太平洋大学教授)
阿部信太郎 氏 (城西国際大学教授)
髙橋桂子 氏 (実践女子大学教授)
山根栄次 氏 (三重大学名誉教授)
山岡道男 氏 (早稲田大学名誉教授)