2020年度実践女子大学教育プロジェクト助成事業 中高「家庭」担当教員向けセミナー③を開催しました
1/23(土)と2/27(土)の2日にわたり、2020年度実践女子大学教育プロジェクト助成事業 中高「家庭」担当教員向けセミナー③を日野キャンパス本館432とZoomを使って開催し、66名の方にご参加いただきました。
中高「家庭」の分野に含まれる障害児?老人問題、家庭経済、住居学、被服学、保育学のトップクラスの研究者である学内外の講師が講演を行いました。講演の概略は下記の通りです。
1/23(土)
発達障害児へのコミュニケーション発達支援
長崎 勤(実践女子大学)
発達障害のある児童?生徒に「カルピス作り」という簡単な調理活動させることによって、共同作製?飲用におけるやりとりから積極的な学習体験をし、他者とのコミュニケーション能力を育み、児童?生徒に心の満足をもたらしていることを様々な事例を示しながら解説しました。
ユマニチュード?「人間尊重のケアの哲学と技術」
本田 美和子(国立病院機構 東京医療センター)
認知症ケア技法のひとつであるユマニチュードについて、その意義と、「見る」「話す」「触れる」「立つ」というケアの4つの柱となる技術や方法を相手の尊厳を傷付けずに、ケアする人とケアを受ける人とがよい関係を築き行うことによる効果を事例を挙げながら報告しました。認知症の方だけでなく、すべての人々との関わりに、ユマニチュードが必要であると感じられる内容でした。
アメリカの高校におけるFamily and Consumer Science Education
小川 正人(環太平洋大学)
アメリカに留学して教育学博士号を取得後、オレゴン州の高校教員やインディアナ大学で助教授?准教授を経験し、現在環太平洋大学で教授として教鞭をとっている演者が身をもって知っているアメリカの「家庭科」について、特にFamily and Consumer Science (家庭経済学)を中心に、日本とはまったく異なる制度やシステムについて、またアメリカの経済教育の現状や教育方法について講演しました。
間接金融?直接金融、外貨預金を理解する
髙橋 桂子(実践女子大学)
高等学校において2022年度から新学習指導要領に切り替わるに際し、家庭経済の領域では従来の「金銭」教育から「資産形成」教育へと視野を広げます。これをどう教えるかを間接金融?直接金融(テーマ1)と外貨預金(テーマ2)の観点から分かりやすく解説しました。
2/27(土)
まちの居場所
橘 弘志(実践女子大学)
私たちの居場所は生活を営む場である自宅、すなわちファーストプレイスと職場や学校など労働の場であるセカンドプレイスそして家でも職場や学校でもない気軽に行ける場所としてのサードプレイスがあります。このサードプレイスをまちの居場所と読んでたくさんの事例を紹介しながらそれぞれのサードプレイスの特徴などについて丁寧に語りました。
オリンピックとスポーツウエア
潮田 ひとみ(東京家政大学)
導入にオリンピックの歴史について語り、数あるスポーツ用衣料の中で、歴史的変化の大きい水着を取り上げ、年代別にオリンピック競技で用いられた水着について素材と構成の両面から解説しました。繊維素材の発展とともに水着に要求する性質が異なり、構成も変化したことが理解できる内容でした。
子ども達のことを知ろう(事故を中心に)
草川 功(聖路加国際病院)
子どもの事故は健康で元気であっても起るし、年齢(月齢)、発達段階によっても事故の頻度や内容は変わります。また事故の原因は多岐にわたり、予防は簡単ではありません。事故ではなく病気の場合もあります。事故が起きても被害を最小にすることが重要です。これらのことを事例をあげながら丁寧に解説しました。
幼児との触れ合い体験学習:参与観察、エピソード記述の紹介
松田 純子(実践女子大学)
子ども観?保育の定義?保育の理念など「保育」の基本事項に触れた上で、改訂された中高「家庭」における保育領域の重点項目である「幼児との触れ合い体験学習」について、その目的の変化?意義と効果?形態?内容?関わり方などを説明し、この取り組みのヒントとして、「参与観察」と「エピソード記述」を事例をあげて紹介しました。
2018年度から始まった、現職の中高「家庭」教員と在学中の教職を目指す学生たちを主な対象としたリカレント講演会は毎年、新しい知見とホットなテーマを掲げて開催してきました。今年度はコロナ禍で緊急事態宣言が出された5月開催予定のセミナーが余儀なく延期されましたが、9月とこの度の1月と2月で予定していたすべての講演をリモートで行うことが出来ました。これもひとえに講演を引き受けてくださった講師の先生方と参加された大勢の顕在?潜在教員の皆様方のご協力の賜物と考えます。
「家庭」科は生活とともにある科目ですので、生活が変われば教える内容も変わっていき、教師は常に知識を新しくしていく必要があります。中高「家庭」担当の教員を輩出している本学教員を中心とした研究者の研究成果が、中高「家庭」担当の教員の援助の一助になれれば、研究者冥利に尽きます。
今後とも、出来るだけ、このような企画を続けていこうと思っております。ご参加のほど、お待ちしております。
(文責 牛腸ヒロミ)