生活科学部食生活科学科の数野千恵子教授が、厚生労働大臣表彰を受けました
長年にわたる栄養士養成の功績が顕彰され、生活科学部食生活科学科の数野千恵子教授が足球现场直播,大发体育在线2年度厚生労働大臣表彰を受けました。栄養関係功労者表彰は全国でわずか22人、東京都内では2人だけという栄誉となります。
今回の表彰の感想を先生に尋ねると、「長く働いたんだなと思いました」という手短な感慨が返ってきました。足球现场直播,大发体育在线の感染拡大(コロナ禍)で表彰式が中止になってしまい、表彰状と記念品のボールペンは大学の庶務から手渡されたとか。人生の晴れの舞台の一つがコロナのせいでなくなり、誰より残念に思うのは他ならぬ先生自身ではなかったでしょうか。そんな気持ちをおくびにも出さず、先生は「行かなくて済んで、ちょっとホッとしています」などと満面の笑みを浮かべ、周囲を気遣い、そして和ませてくれました。
上野の機器メーカーを辞し本学へ
先生は本学のOGです。1979年3月に旧家政学部、また1981年3月に大学院をそれぞれ卒業されています。そして1998年4月、東京?上野の理化学機器メーカーの研究員の職を辞して本学に助教授(当時)として着任されました。それ以前は、民間企業で研究開発に励む傍ら、本学の非常勤講師も引き受け、調理学と調理学実験、調理実習を教えていたそうです。ちなみに、着任して学究生活の拠点を日野キャンパスに移した当初の感想は、「都心の上野と比べ、日野市の方が夏は夜になると涼しい」というものだったとか。
きっかけを「たまたま調理の先生がお辞めになり、私にお声掛けをいただきました」と語りました。「自分の持っている知識を教えて、役立ててもらえるなら」と引き受けたそうです。民間に就職前、卒業後の4年間を本学で助手を務めていたこともあり、「(本学に)戻るのが自然なような気がした」という事情もありました。こうして約6年間続いた民間の研究員と非常勤講師の二足の草鞋には終止符が打たれ、今日に至る先生の本学でのキャリアがスタートしました。
今は「きゅうりの薄切り」にも苦戦
以来、22年。この間、学生を取り巻く環境は大きく変わりました。「今の学生さんは大変そうだなという印象を受けています。世の中の経済的なこともあるのかなとは思いますが、アルバイトをしないと学校に来られなかったりとか、学費が払えなかったりとか、たまに(そういう学生も)います。昔は『バイトばかりしていないで卒論に来なさいよ』と言ったものですが、今は言えない時代になってしまいましたね。学生に注意したりする時は、一瞬考えてから言うようにしています」と先生は語ります。
環境だけではありません。教える内容も変化を迫られました。先生によると「実習に関して言えば、学生さんが料理をしなくなりました」。この結果、「調理実習のメニューも、昔に比べて少しずつ簡単なものに移行しています」と言います。例えば、「きゅうりの薄切りテスト」です。きゅうりを厚さ2ミリ以内で15秒間に何枚切れるかという試験ですが、先生は授業の一番最初にこのテストを毎年学生に課してきました。最近は「初回は15秒掛けて10枚切れない学生がずいぶんいる」そうです。
多忙さも増しました。先生も若かったからでしょうか。「着任当時は学生と一緒に実験したり、実習したり、話したり、お茶飲んだり…と、ゆったりした時間が流れていました」と懐しがります。しかし、当時に比べて先生自身が「どんどん忙しくなっている」ことに加え、今年のコロナ禍です。「学生との時間がほとんど取れない」という状況に、4月から務める学科主任の責任が加わり、「コロナのせいで(予定外の)仕事が増えた。今年はストレスの塊」と嘆くことしきりです。
欠かさず続く恒例のOG会
ですが、変わらないもの、変えたくないものもあります。先生にとり、それは卒業生との交流です。これまで先生が社会に送り出した卒業生は22年間で栄養士関係だけで1400人を超えますが、年に1回、1月に行うOG会は途切れることなく今日まで続いてきました。例年50~60人のOGが参加するそうです。中でも、先生がOG会で忘れられない光景があります。「先輩と後輩が同じ職場内に入って助け合っているような姿や、同じ栄養教諭になった学生が先輩から、いろいろなアドバイスを受けたりする姿」です。そういう姿をOG会の際に見るにつけ、「ああ、いいなあ。(この仕事をして)良かったなあ」と感慨にひたると話してくれました。
翻って、高齢化社会の進展や生活習慣病の増加を背景に、近年は管理栄養士や栄養士に対する人気が高まってきました。本来なら食生活科学科にとり歓迎すべき話でしょうが、先生は「栄養士の資格を取得する人、職に就く人の数は、ものすごく多い。そういう中で栄養士?管理栄養士の数が飽和状態になって来ている気がする」と手放しでは喜んでいません。だからこそ、本学の卒業生に対しては「栄養士は管理栄養士を目指してほしい。また管理栄養士は病院でも介護でも様々な資格を取得する機会があるのでスキルアップしてほしい」という助言を欠かしません。加えて、「栄養士は人が相手の仕事で、コミュニケーションが大事」と語り、現役学生には「是非、大学にいる間にコミュニケーション力をつけて卒業してほしい」とアドバイスを送っています。
また、自身が調理も担当しているという事情もあり、栄養士が考える食事についても「見た目においしく見えて、食べて楽しく満足できる食事を作ってもらいたい」と理想を掲げました。例えば、病院食です。栄養面や栄養バランスが重視され、ややもすると味や見た目は二の次とはよく言われるところですが、「味や見た目も良くないと、食欲がわかない」と強調します。
先生は、かって長い間入院されたことがあり、そこで経験した病院食こそ「黄色い食器に黄色の卵とじでは、食欲もわかなかった」という、今に至る味と見た目に対する、こだわりの原点でした。先生は「食べ物のおいしさは味だけじゃなくて、視覚に頼る部分も大きい」と指摘します。このため、病院食についても「病人は、ただでさえ食欲がない。色を取り合わせて料理するなり、おいしそうに盛り付けるなり、工夫ができる栄養士になってもらいたい」と教え子たちにエールを送っています。
横顔
趣味は舞台鑑賞です。特に東宝ミュージカルが好きで、「モーツァルト!」や「エリザベート」は何度も観劇したと話してくれました。以前は友人と連れ立って鑑賞を楽しんでいましたが、多忙になるにつれ、日程調整が次第に困難に。この結果、最近は”ボッチ”鑑賞が増えているのが悩みとか。