実践女子大学(東京都日野市)と跡見学園女子大学(同文京区)、大妻女子大学(同千代田区)は、3大学合同でJR東日本系商業施設のルミネ(同新宿区)と産学協業プロジェクトに取り組みました。3大学の学生が混成チームを組み、コロナ禍時代を生き抜くルミネの店舗販売戦略を提案。2月8日(火)にオンラインで最終プレゼンテーションを行いました。
産学協業プロジェクトは、ルミネが提示した課題に対する課題解決型(PBL)授業として行われました。今年度、ルミネから与えられた課題は「足球现场直播,大发体育在线感染拡大による、20代前半女性の消費行動の変化を分析し、これからの時代におけるリアルショッピングの在り方について提案してください」です。参加学生はいずれも各大学の3年生で、1チーム6~7名の5チームに分かれて、それぞれのアイデアを競いました。
※チーム名は、メンバーの姓字ひと文字から付けました。
岩チーム
岩チームは、「試着スペースの設置」と「サスティナブルコーディネートの導入」を提言しました。
「試着スペース」で実店舗に誘客狙う
このうち、試着スペース設置は、通販利用者が実店舗に足を運ぶきっかけづくりなどが狙いです。コロナ禍でルミネ館内の各店舗は利用客が減少。もともと各店舗に試着スペースが少なかったという事情もあり、試着スペースの設置がルミネでのリアルショッピングの増加につながり、ネットショッピングの失敗を減らす効果も期待しています。
試着スペースでは、複数のブランドを一括して試着することを可能にします。ルミネのアプリ「ONE LUMINE」に予約機能を導入。例えば、通販利用者が「iLUMINE」で気になった商品を試着したくなったり、ブランドを横断的にコーディネートしたくなったりした場合などに、アプリを使い、試着スペースを事前予約します。
「Used商品」をルミネで販売
地球や環境に優しい選択として、「Used商品」や「リメイクされた洋服」をルミネで販売することも提案しました。客層を広げたり、商品のバリエーションを増やしたりします。
ただ、Used商品は傷や汚れ、特有の匂いがつきもの。店内をウインドウショッピングするだけで何も買わないリスクも伴います。このため、「ルミネらしいUsed商品の品ぞろえ」を検討しました。例えば、Used商品は明るい?カラフルな布地を中心にラインアップを充実。布地には着古し感をさせないよう、石鹸のような清潔感ある香りを与えたりします。洋服のコーディネートをSNSで発信し、新品の洋服に合わせやすいUsed商品の組み合わせも提案することにしました
神チーム
神チームは、これまでのルミネの取り組みに「安らぎ」の要素を加え、「個性と流行のバランスをリアルショッピングが支える必要がある」と強調。ルミネに対し、マーチャンダイジング(商品政策)、サービス、プロモーション、施設(環境)の4つの視点から改善策を提案しています。
「ポップアップブース」で新進気鋭ブランド育成
マーチャンダイジングでは、ザ?ファクトリー「hirameki」というポップアップブースをつくるアイデアを提案しました。これはルミネがインターネット限定で、新進気鋭のECブランドを育成しようという試みです。
具体的には、インスタ発のアパレルブランド立ち上げを目指す若者に、ルミネが情報発信の場を提供。20代若者がルミネにプライベートブランドのポップアップ店舗を出店する代わりに、ルミネが実店舗運営のノウハウを提供します。
「ルミネボックス」を販売
また、サービス強化として「ルミネボックス」の販売を打ち出しました。月額3千円で、ルミネが選定した商品(コスメやアクセサリーなど)と館内の実店舗で使える専用クーポンをギフトに贈ります。館内に実店舗を構えるブランドと接点づくりのほか、ギフトボックスの見た目に凝り、SNSでの宣伝効果も狙います。
ちなみに、3千円の価格設定は「デパートコスメより安価」であり、「自分へのご褒美として払える価格」として妥当と判断しました。
「ルミネ9」で閉館後にPBコレクション
他方、プロモーション(宣伝)強化のアイデアとして「ルミネ9」と「瑠美音ミュージアムの森」を提案しました。このうち、ルミネ9は午後9時の閉館後の館内で楽しむプライベートなファッションコレクションです。年2回開催。実店舗で設定金額以上の買い物をした顧客を対象に、招待チケットを配ります。コロナ禍を考慮し、今はオンライン視聴に限定して行うことにしました。
「瑠美音ミュージアムの森」は癒しのアートブース
また、瑠美音ミュージアムの森は、屋上や施設内でシンボルツリーに絵馬を飾ったり、癒し効果のある自然の音色を流したりするアートブースです。カラフルなお手玉が映えるインスタスポットで知られる京都の「八坂庚申堂」、ハートの南京錠で有名な韓国の「ソウルタワー」から着想を得ました。
「ルポア」でテレワークに対応
ファシリティ(施設)の充実に向け、ワーキングステージ&ラウンジ「REPOA(ルポア)」も開設します。ルポアは、仏語の休息を意味するルポセと英語の軸を意味するアクシスを融合した造語です。新宿区歌舞伎町のネットカフェや東京都武蔵野市の図書館「武蔵野プレイス」のようなモダンな空間を演出、居心地の良さを実現します。コロナ禍に伴うテレワークの普及を受け、ルポアを第二のオフィスとして活用してもらいます。
河チーム
3番手の発表は、ルミネ屋上の活用に着眼した提案を行いました。屋上にカフェを開設するとともに、大型スクリーンを設置します。このうち大型スクリーンは、館内の店舗?商品を紹介するYoutube動画を流すほか、月一回、リバイバル映画を上映します。屋上という外の開放的空間であれば、コロナ感染の不安を気にせず来店してもらえると判断しました。併せて、話題づくりや下のフロアの店舗でショッピングを楽しむきっかけづくりも狙っています。
「カフェ」を実店舗の商品を知るきっかけに
屋上をカフェ空間(図左)と映画?動画の上映空間(図右)に分け、このうちカフェは木を基調に、落ち着きやおしゃれな店内を演出します。ドライフラワーなどの植物で飾り、インスタ映えに配慮し、カフェで使用する家具や雑貨などはすべて、館内の実店舗で実際に使用されたり、販売されたりしている商品に統一します。
また、飲食物の注文は、感染症対策として各テーブルに立て掛けたメニューのQRコードを読み込む方式を採用しました。加えて、注文メニューのQRコードの下にはもう一つのQRコードを配置します。こちらのQRコードを読み込めば、今、カフェの席で自分が使っている食器や机?椅子などの価格、店舗名が表示されるようにします。カフェで使用する食器や雑貨は3か月に1回、季節ごとに入れ替えを実施。館内の商品を広く知ってもらうきっかけにしたいと考えました。
大型スクリーンで映画ファンを誘客
これに対し、カフェの反対側には映画?動画の上映空間として大型スクリーンを設置します。スクリーンに向き合い、テラス席、さらに後方に芝生の席を配置します。芝生席のスペースの一部に夏はハンモック、冬はこたつなど季節ごとに遊び心のあるスペースを設けます。
大型スクリーンで普段上映するYoutube動画は、館内の各ショップに関連するファッションやコスメ、メイクの映像です。館内で扱う商品に興味を持ってもらおうと考えました。
他方、この大型スクリーンを使い映画のリバイバル上映も行うことにしました。チケット代は1人千円。話題性や飽きさせないことに加え、コロナ禍で映画館に行きづらい映画ファンもターゲットにしようと考えました。
市チーム
市チームは、既存のアンケートボックスの改善や公式インスタグラムの見直しを提案。20代女性の声を集中的に集め、店内各店舗の商品ラインナップの見直しやライバル店舗との差別化に役立てます。
アンケート改善で遊びの要素も提案
このうち、アンケートボックスの改善では、設置場所を増やし、休憩スペースを中心に館内各フロアに置くように改めます。また回答にゲーム性を導入。ゴミ箱やトイレットペーパーに「YES」「NO」の2種類を用意し、2択アンケートに遊びの要素を取り入れました。
また、アンケートの設問も簡略化し、一問一答式や選択式を中心に回答に手間が掛からないようにします。同時に、アンケートボックスのデザインも見直します。
若い女性が目を引く公式インスタグラムに
公式インスタグラムは、シンプルな画像中心から若い女性が目を引くような内容に投稿に変更。フォローしたくなるような投稿内容として、ルミネ店舗内の商品のコーディネートや今のおしゃれ女子に欠かせない香水の投稿を考えてみました。画像とともに商品のブランド名や解説を入れ、分かりやすい投稿にします。
加えて、インスタグラムのストーリーにあるアンケート機能も活用します。設問はアンケートボックスと同じ2択とし、より気軽に簡単にアンケートに答えられるようにしました。
竹チーム
毎週末にルミネ屋上で開催する音楽イベント「LUMINE MUSIC FES(ルミネ?ミュージック?フェス)」(以下、ルミネフェス)を提案したチームもありました。竹チームです。コロナ禍で演奏機会を失ったメジャーデビュー前の音楽アーティストらに活動の場を提供。併せて、音楽ファンをルミネフェスに誘客し、ルミネ館全体の販売促進を狙います。
ルミネフェスは若手ミュージシャンの登竜門
構想によると、イベント出演はメジャーデビューしていない路上アーティストやインディーズ系ミュージシャンに依頼します。バンドやシンガーソングライターは東京都内だけで約1万組いると推定されており、ルミネフェスをこれらミュージシャンが一堂に会する「聖地」、メジャーデビューする「登竜門」になることを目指します。
一方、ルミネフェスをルミネ館全体の販売促進につなげる仕掛けも、いくつか用意しました。例えば、館内各店舗が販売する商品を出演者がコンサートで着用してもらうよう依頼し、お気に入りのアーティスが身に付けているアイテムは、ファンが購入する可能性が高いと予想しました。加えて、コンサートシーンの模様はSNSで積極的に発信。お気に入りミュージシャンの演奏シーンなどをインスタグラムで共有し、応援するアーティストが着用しているアイテムをファンが知る機会を増やしました。
屋上来場者が館内ショッピングを楽しめるよう、コンサートのタイムスケジュールも工夫しました。コンサートの各演奏の間に1時間の空き時間を設けるなどです。コンサート会場の入退場を自由にし、この間の時間を利用して屋上来場者が館内のショッピングをできるようにしました。
リストのカラーリングでファン同士が交流
来場するファン同士のメリットも考えました。ルミネフェスを音楽ファンがアーティストを応援する場、新たな「推し」アーティストを発見する場にします。具体的には、イベントに際して来場者に紙製の簡易リストバンドを会場で配布。リストバンドを、例えば出演アーティスト別や好きな音楽ジャンル別にカラーリングすることで、会場で同じカラーのリストバンド同士で交流を深めるようにします。
「ルミネ発」アーティストの誕生目指す
対面に限らず、オンライン配信にも力を入れます。ライブ中継に際して、お気に入りのアーティストを応援する「投げ銭システム」を導入。ルミネが得る収益の一部をアーティストに還元します。
さらに、イベント内イベントとして新進気鋭のアーティストを発掘する「コンテスト」も開催。将来的に「ルミネ発」アーティストの誕生を夢見ます。
【ルミネの論評】
学生のプレゼンに対して、ルミネ側から発表内容や発表方法に着眼した評価も行われました。評価者は5名です。「着眼点?オリジナリティ」や「論理性?説得力」、「スライドの作り方」、「発表のマナー」の4部門別に採点され、各部門とも「5」を最高評価に「1」~「5」の5段階で評価されました。
「神」チームの論理性?説得力を高評価
わけても、評価が高かったのは「神」チームでした。評価者5名の平均で15.6点を獲得しました。5名の評価者のうち4名までも、5チームに対する自身の最高評価を「神」チームに与えています。「論理性?説得力」に対する評価が19点(平均15.6点)と群を抜いているのが特徴です。「ルミネの事業のベースにある『女性のライフスタイルに寄り添う』からテーマを設定したのが良かった」「視点が目新しく、また着眼の根拠がしっかりしていると感じました」などの高評価が寄せられました。
学生の熱意を期待するコメントも
一方で、実務家としての辛口の論評もありました。例えば、「試着スペースの特徴や付加価値があるか具体的に言及してほしい。単に場所をつくるだけでは、お客様に支持いただくのは難しい」「『なぜルミネがフェスをやるのか?』について、もっと理由付けが必要」などです。これらチームのプレゼンは「論理性?説得力」で下された厳しい評価が足かせとなり、得点は伸びませんでしたが、学生のこれから成長を期待するコメントがルミネ側から多数寄せられました。「起承転結のストーリーを考えて発表の構成を考えた方がいい」「抑揚をつけた熱量の高い発表だともっと伝わったと思う」などで、プレゼンの内容というより、学生に「伝える情熱」の大切さをアピールしていました。
今年度の産学プロジェクトは、10月10日にキックオフ。本学からは生活科学部生活科学部生活環境学科の大川知子准教授(ファッションビジネス研究室)のゼミ生10名が参加しています。
加えて、跡見学園女子大学からはマネジメント学部生活環境マネジメント学科の深町浩祥准教授のゼミ生12名、大妻各女子大学から家政学部ライフデザイン学科の須藤良子専任講師(工芸デザイン研究室)のゼミ生12名がそれぞれメンバーとなりました。
合計34名の学生が、毎週木曜日の定例ミーティング、月一回土曜日の合同ミーティングなどを重ね、議論を深めました。
同プロジェクトは、今年で8年目になります。2013年にルミネ立川店への若年層の集客増加を目指した販売促進の課題に取り組んだのがきっかけです。2018年からは大学連携プロジェクトに発展しました。今年度は、コロナ禍のなか、初めてすべてZOOM開催となりました。
本学の参加者一覧
【岩チーム】実践:石川育実さん、若杉梨沙さん 跡見学園:3名 大妻:2名
【神チーム】実践:本田春香さん、宮崎優衣さん 跡見学園:3名 大妻:2名
【河チーム】実践:加藤佑未さん、藤原心春さん 跡見学園:2名 大妻:3名
【市チーム】実践:安藤美波さん、里原天音さん 跡見学園:2名 大妻:3名
【竹チーム】実践:影山詩衣留さん、渡邉真穏さん 跡見学園:2名 大妻:2名
ルミネの方々からのコメント
他校の学生さんとの協業且つオンラインという環境の中、真摯にテーマについて考えていただき、弊社社員も感激しておりました。ご参加いただいた皆さまの、熱意あふれる発表に感動いたしました。
取材メモ
私自身よく訪れるルミネとのコラボレーションということで、「確かにこういうのはルミネにない」「ルミネにあったらいいのに」という案が多かったように感じました。コロナ禍で店舗に足を運ぶことが減ってきてしまいましたが、この中の案が1つでも実現されたら、行ってみたいと思います。