高品質なスペシャルティコーヒーで知られる丸山珈琲(長野県軽井沢町)のPR戦略を考える産学連携授業に、本学の学生が取り組みました。ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)に習熟した大学生ならでは発想を試す課題解決型授業(PBL)として実現。チーム対抗でSNSによるPR戦略のアイデアを競いました。
スペシャルティコーヒーは、一般のコーヒーとは一線を画す「特別な素晴らしい風味特性を持つコーヒー」とされています。日本のスペシャルティコーヒーの先駆者のひとりが丸山健太郎社長です。丸山珈琲と行う産学連携授業は昨年に続き2回目。文学部国文学科の深澤晶久教授(キャリア教育担当)のPBL授業「実践キャリアプランニング」の一環として行われました。文学部英文学科の2年生が対象で、今年度は66人が履修しています。
丸山珈琲から与えられた課題は「Withコロナ時代を見据えたSNSを活用したPRプラン」でした。1チーム5~6人の13チームに分かれてPRプランを企画。その優劣を12月11日と25日の2回に分けてプレゼンテーションしました。後半の25日の発表者は6チームです。
このうち、チーム「シンフォニア」の提案は、画像共有サイトのインスタグラムにスポットを当てたものでした。「いくつかの種類のコーヒーの詰め合わせ」や「自宅で楽しむカフェラテアート」などのアイデアを提案。インスタ映えを競う若者の関心を丸山珈琲に集める作戦を打ち出しました。
また、チーム「コーヒーについて考える会」は、インスタグラムと短文投稿サイトのツイッターの併用を提案しました。単なる宣伝にとどまらず、SNS上で商品やクーポンをプレゼントする企画をアピールしたのが特徴です。加えて、インフルエンサーやインスタグラマーをPRに起用、ファンによる拡散力の強化も狙っています。
流行アニメのキャラクターとコラボレーション企画を提案したチームもあります。この戦略の成功事例は、大人気アニメ「鬼滅の刃」とコラボしたダイドードリンコのコーヒー缶のヒットで知られています。
他方、チーム「グループ12」はオンラインストアの売り上げアップを目標に定め、コラボ企画で▽オンライン限定のコラボグッズ販売▽設定金額以上(例えば3000円以上など)購入者に対する送料無料サービス-などの新機軸を打ち出しました。併せて、インスタグラム?ツイッターに丸山珈琲の知名度アップにつながるハッシュタグを付けた投稿に対し、見返りとして割引クーポンや商品をプレゼントするとしています。無料通信アプリ大手のLINE(ライン)の活用案として、オンラインショップ会員の友人紹介制度も提唱しました。
翻って、この日の最も優れたプレゼンに贈られる「丸山賞」は、「チームイレブン」が受賞しました。同チームは丸山珈琲の公式SNSをつぶさに調査、改善点を提案したのが特徴です。具体的には、公式インスタグラムの写真に統一感を持たせるよう求めたほか、インスタグラムでYoutube(ユーチューブ)の予告動画を流したり、自分の嗜好に合うコーヒーを見つけるコーヒー診断を設置したりするよう提言しました。
また、公式ツイッターの改善でも商品の投稿にオンラインストアのURLを付けるよう促しています。投稿の時間帯も、アクセス数が集中する通勤時間帯や昼休みにするなど工夫するよう強調しました。
丸山社長はチームイレブンの受賞理由を「具体的な提案の量と深さが多かった」と説明しました。即ち、「何をするべきかというアイデアを考え、それで実際にメンバーが『やってみて』、『こういうふうにできます』、『こういう結果が出ました』というところまで、きちんと説明していた」と語り、「非常に納得できるし、やってみようかなと思う素晴らしいプレゼンだった」と高く評価しました。
丸山賞を受賞したチームイレブンには、丸山珈琲からメンバーに同社のコーヒーが贈られました。
深澤晶久教授の話
昨年度からスタートした丸山珈琲様とのコラボ授業、昨年名付けたキャッチフレーズは「五感で感じるキャリア科目」。授業当日には、コーヒーのテイスティングから始まり、実際の商品や店舗に触れて、丸山珈琲様からの課題に取り組みました。
しかしながら、今年はコロナ禍となり、授業の実施も危ぶまれましたが、丸山珈琲様そして、大学側スタッフも全面的に協力、事前に学生の自宅にスペシャルティコーヒーを送付したり、受賞チームにも丸山珈琲賞を直接送るなど、対面型授業となんら遜色のない仕掛けを施しました。
そして今年のテーマは、学生にとっても、極めて身近なテーマであったこともあり、昨年以上にレベルの高いプレゼンテーションが繰り広げられ、大きな成果に繋がりました。学生のレポートにも、本セッションのことに触れる学生が極めて多く、実際に社会人になった時にも、テレワークでこうした業務に取り組むことが予測され、いち早くリアリティのある経験が出来たとの感触を得られたと振り返っています。
丸山社長をはじめとした丸山珈琲の関係者の皆様に感謝を申し上げます。
取材メモ
本学でマーケティングについて学べる講義の機会は増えています。今回も例外ではありません。しかし、そこで検討された案が実際に企業に採用されているかといえば話は別です。というのも、課題解決型授業を通して、商品化のフィージビリティ(実現可能性調査)まで踏み込んだアイデアにまで完成度が至っていないからです。
もしアイデアを商品化までこぎつけられれば、授業の価値は学生と企業の双方にとり格段に高まります。特に学生には、講義で頑張った結果が商品化されたとあれば、就職活動で面接官に誇らしげに話せるアピールポイントとなるはずです。せっかくのチャンスです。必修科目だからと漫然と受講するのではなく、授業を有益に使ってほしいと思います。