英ケンブリッジ大と基本合意書!交換留学の提案を受け、本学は学内で調整 新たな歴史の幕開けに(7/29)
本学園は7月29日、英ケンブリッジ大学のヒューズホールカレッジとお互いの交流を深めるための基本合意書を締結しました。ケンブリッジ大学側からは、本学に対し「学生の交換留学などを検討してほしい」と提案があり、本学も受入れ態勢の整備などの調整を始めました。創立者、下田歌子の縁で実現した世界的な名門校との締結は、「グローバル」を進める本学にとって新たな歴史の1ページを開くこととなりました。
基本合意書の締結は、ヒューズホールカレッジと本学との浅からぬ関係がきっかけとなって実現しました。天皇家からの要請を受け、下田歌子が、1893年から1895年までの約2年間、欧米各国を歴訪し、その際、ヒューズホールカレッジの前身に当たる女子教員養成校のケンブリッジ?トレーニング?カレッジを視察しました。その経験が、日本での女子教育の礎となり、後に実践女子大学となる実践女学校と女子工芸学校の設立につながりました。
木島理事長、難波学長、湯浅校長 学園、大学、中高のトップが調印式に出席
下田歌子の視察から約130年。ヒューズホールカレッジで行われた歴史的な調印式には、木島葉子理事長、難波雅紀学長、中学校高等学校の湯浅茂雄校長の学園トップ3人が出席。ヒューズホールカレッジのローリー?ブリストウ学長と木島理事長が基本合意書を交わしました。難波学長はブリストウ学長らに英語でスピーチし、「下田歌子先生とのつながりが、今日の基本合意書締結の礎になっています」と、合意書締結の意義を強調しました。
調印式のあった29日は、ロンドン大学UCLとケンブリッジ大学が開催するサマースクールプログラムが行われていました。日程は7月26日~8月4日で日英の高校生100人を対象にしており、本校から参加していた3人の高校生も、調印式の様子を見守りました。
日本の文化、文学に高い関心を示すケンブリッジの学生 源氏研究などの強み生かした研究協力の可能性も
その後、シニアフェローのピーター?ダドリー氏とのセッションが行われ、ダドリー氏は「(ヒューズホールカレッジには)日本の文化、文学に関心を持っている学生がいる」と述べ、本学への留学に関心を示しました。一方、ヒューズホールカレッジで学ぶ日本人学生が少ないことから、本学の学生もヒューズホールカレッジに「送り出してほしい」との言葉があり、交換留学の検討を促しました。
これを受け、難波学長は帰国後、少人数の学生による交換プログラムを念頭に具体的な検討の準備をするよう、学内に指示。今後、ヒューズホールカレッジからの学生の受け皿となる教育プログラムを検討していきます。さらに、次の段階として、教授交換やヒューズホールカレッジのグローバル教育研究プラットフォーム「Camtree」とのコラボレーションの可能性も検討していきたいと考えています。
教授交換により専門知識を共有することで、例えば、本学の特色として発信する源氏物語の文理融合研究について、ヒューズホールカレッジ側と協力していくことも可能になってきます。難波学長は「予想以上にヒューズホールカレッジ側の期待が大きかった」と述べ、「どのような連携が本学の学生のためになるのかを考え、お互いが有益となる制度にしていきたい」と抱負を語っています。
木島理事長「創立者の想い引き継ぎ、女子教育を」思い新たに
今回の調印式に出席した木島理事長、難波学長、湯浅校長には、ヒューズホールカレッジとの基本合意書締結について、三者三様の受け止めと思いがあります。
「世界トップクラスの大学と基本合意書を締結した意義は大きい」。調印に当たり、木島理事長は感慨深い思いを抱きました。今年4月、本学の卒業生として、79年ぶりに理事長に就任。卒業生として、学園トップとして、創立者、下田歌子が女子教育視察のために訪問した同じ場所に立ったことについて、「理事長の立場で出席したことは大変光栄」と述べると共に、「創立者の想いを引き継ぎ、現在まで女子教育を担ってきましたが、今後も今の時代に合ったグローバルで活躍できる女性の教育機関としてさらなる発展を遂げたい」と決意を新たにしました。
難波学長「良い学生を育てるには、良い教育、良い研究が大切」
難波学長は、教育改革を進める一方で、研究自体がクローズアップされにくくなっている現状があることから、今回の基本合意書締結を機に「より良い人材を育てるには良い教育、良い研究が大切」ということを再認識させられたといいます。本学は、例えば日本の伝統文化を学ぶプログラムを備えたり、源氏物語に関する文理融合の多角的な研究を推進したりしています。ヒューズホールカレッジの高い志と強い学習意欲を持った学生を受け入れるためには、こうした本学の特色をさらに生かしていくことも必要で、難波学長は「知的好奇心を持った学生に満足感を与えられるよう、検討していきたい」としています。
湯浅校長「下田先生のような真の国際人を」と期待
今回の基本合意書には、ロンドン大学UCLとケンブリッジ大学で開催する日英の高校生のサマースクールプログラムへの本校生徒の参加の検討も含まれいます。2013年から14年にかけ、ケンブリッジ大学に留学経験がある湯浅校長は当時、下田歌子の足跡をたどる旅をしました。住居表示は昔と変わらず、大学の校舎や下田歌子が日本に投函したであろう住まい近くの古い郵便ポストを確認しました。その時、100年以上変わらないイギリスの凄さを実感すると共に、下田歌子の信念の強さや先見性、観察力の鋭さに改めて驚いたといいます。湯浅校長は、サマースクールについて「普段日本でできない経験をすることの意義は大きい。下田歌子先生のような真の国際人を世に送り出すことにつながってほしい」と話しています。
<基本合意書の内容>
? UCL Japan Youth Challengeへの本校生徒の参加の検討
? ヒューズホールカレッジの学生及び教職員と本学園の学生及び教職員の交流についての検討(2024年から2027年の3年間で検討)
? ケンブリッジ大学の Hughes Hall に拠点を置くグローバルな教育研究プラットフォームCamtreeの利用
木島葉子理事長のコメント
私は、実践女子大学で実践的な教育を学んだうえで、企業人として経験を積み、現在は母校で理事長をしています。「女性が社会を変える、世界を変える」という建学の精神を掲げる学園で、様々な課題に対し自立的に対処できる女性を多く育成するとともに、将来、いろいろな場面で彼女たちが活躍することを期待しています。今回の世界トップクラスのケンブリッジ大学のヒューズホールカレッジと本学園が基本合意書を締結したことは、本学で学ぶ学生の選択肢が広がると共に、教職員を含め、より高みを目指すきかっけになると思います。今後も、創立者の想いを引き継ぎ、時代に合ったグローバルで活躍できる女性の教育機関としてさらなる発展を遂げたいと思います。
難波雅紀学長のコメント
ケンブリッジ大学との合意書の締結は特別な意味があるし、象徴的な側面もありますので、今までとは趣を異にするものにしたいと思います。ヒューズホールカレッジの学生は学問に対する姿勢が真摯で、日本の文学や文化に対しても、とても興味を持っていると聞いています。そのような知的好奇心を満足させるため、例えば本学の伝統である源氏物語研究などに触れることができるようプログラムを用意したいと思います。また、大学として教育や研究の質も高めていく必要があります。一方で、どのような連携が本学の学生のためになるかを考え、仕組みを作ることが大切です。ヒューズホールカレッジには、単に語学を学ぶだけでなく、何か学問的な深い学びをしたいという意欲を持った本学の学生を送ることができればと考えます。お互いが有益な制度になるようにしていきたいと思います。
湯浅茂雄校長のコメント
下田歌子先生は、約2年間の欧米視察後、「泰西婦女風俗」という見聞録をまとめました。この中には、テニスをしたことや海水浴の様子などが詳細に記されています。信念の人であり、先見性を持ち、観察力の鋭い人でした。もちろん英語もでき、欧米のいろんな文化も吸収しました。帰国後は、徹頭徹尾女性の味方として、女性を応援する切り口で物事を考え、周到に確信を持って学校の設立などに取り組み、日本初の女学校の制服の海老茶色の女袴や中学の運動会恒例のメイポールダンスを取り入れました。基本合意書に盛り込まれたユースチャレンジはとてもいいプログラムで、ケンブリッジを見ることだけでも素晴らしい経験になります。学園のグローバル教育にも沿っていて、下田先生のような真の国際人を世に送り出すことにつながってほしいと思います。