2018年度卒業式 式辞?祝辞
式 辞
実践女子大学?実践女子大学短期大学部 学長 城島 栄一郎
卒業生?修了生の皆さん、平成を締めくくる記念すべき年の卒業?修了おめでとうございます。皆さんの門出を待っていたかのように桜のつぼみも膨らみ開花し始めました。所定の学業を修め立派に成長した皆さんを送り出すことを、われわれ教職員一同うれしく思い、心からお祝いします。
ご両親ならびにご親族の皆さま、お嬢様の成長と今日のおめでたい日を迎えられたことを、心からお慶び申し上げます。
卒業生?修了生の皆さん、今日はこれまでの人生で最も大きい節目の日となります。
生まれてから、小学校、中学校、高校、短大?大学生活まで、皆さんは生徒?学生として家族と社会に支えられここまで成長してきました。社会へ羽ばたく今日のこの日の後は、否応なく今度は皆さんが家族を支え社会を支えていく立場にかわります。その気概をもって社会人として力強い一歩を踏み出してください。
本学は学祖下田歌子先生が「近代女子教育」の拠点として明治32年(1899年)に実践女学校?女子工芸学校を設立し、今年5月に創立120周年を迎えます。
本学は「女性が社会を変える、世界を変える」という「建学の精神」のもとで、「品格高雅にして、自立自営し得る女性の育成」を教育理念としてきました。これは机上の理論だけではなく実践的な知識?技術を身に付け、自立した女性として社会に貢献し活躍できる人材を育成することを目指したものです。
皆さんは、まさにこの教育を受けてこれから社会に出ていくことになります。
地球規模で世界を見ると、増え続ける人口問題や環境問題は避けて通れない課題です。また、世界経済や国際社会ではグローバル化とボーダレス化が更に進み、国際基準に対応して国際競争の中で生き抜いていかなければなりません。
平和で安全で安定しているように見える現在の日本ですが、今後は一段と少子高齢化が進み困難でも解決していかなければならない課題が山積しています。この直面している課題を乗り越えていくためには、男女が同等に働き、意思決定し、社会に貢献する男女共同参画社会の実現は必須となります。
本学で学び身につけた能力をしっかりと生かし、さらに自分自身を磨き続けることが必要です。そうして、皆さんが男女共同参画社会の先頭に立って活躍されることを期待しています。
学生時代にあれをやればよかった、これが心残りという思いは皆さん多少なりともあるでしょう。しかし、学びは学生時代だけではありません。講義を受ける、本を読む、課題をこなす、ということだけが勉強ではありません。
仕事上での問題をどう解決するか考え抜くことが勉強です。社会の問題にどう向き合うか考えていくことが勉強です。いろいろな問題に正面から取り組んで一歩一歩進むことが皆さんの成長となります。
人生100年という時代になって膨大な時間を持っている皆さんの可能性は無限です。
永い人生を充実したものにし、社会に貢献し、輝いていくためには、将来に対して夢を持ち目標を設定することが重要です。目標に向かって失敗を恐れず挑戦し、挑戦し続けることが悔いのない人生をおくることになります。
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心がけてほしいことを3つあげます。
1つ.夢を持ち、目標を設定しチャレンジする。
自分の無限の可能性を信じること、為せば成るです。
2つ. グローバル化、ボーダレス化を見据えて幅広い視点から社会を見る。
あらゆる分野で国境はなくなっています。
近視眼的見方は通用しません。
3つ. 健康増進と体力をつける。
長い人生、最後にものをいうのは健康と体力です。
本学が皆さんの母校です。折々に母校の先生方と連絡を取ってください。卒業後もすべての教職員は皆さんの成長をサポートします。今後社会に出ると、いろいろと悩むこと困ったことが出てくるでしょう。そういう時は遠慮なく母校を訪れ恩師の部屋のドアをたたいてください。
また、大学時代の多くの友人とも連絡を取り合って、さらに深い友情をはぐくんでください。
最後に皆さんの今後の社会人としての活躍と、一人一人の人生が豊かで実りあるものとなることを祈念して、式辞とします。
※2019年3月21日 実践女子大学人間社会学部?人間社会研究科 卒業式式辞より
祝辞
学校法人実践女子学園 理事長 井原 徹
学部卒業生の皆さん、大学院修了生の皆さん、卒業?修了おめでとうございます。
ご父母の皆様、これまでの長い年月のご苦労に対しまして、心からの敬意と祝意を表します。
卒業式、修了式にあたり、日頃考えているところを述べて、祝辞とします。主題は「成熟への課題」です。
テニスの大坂なおみさんの活躍を覚えていると思います。大坂さんは、1月26日の「全豪オープン」で見事に優勝し、世界ランキング1位になりました。対戦相手は過去にウィンブルドンで二度優勝したチェコのペトラ?クビトバ選手でした。
第一セットを苦労して取り、第二セットでは優勝という頂点に手をかけたものの、相手の気迫と執念に押されて好機を逃し、第二セットを落としました。その段階で私は勝利の女神が大坂選手から離れて行ったように感じました。しかし、最終セットで底力を発揮して優勝したのでした。大坂さんに一体何が起きたのでしょうか。
大坂さんは第二セットと第三セットの間にトイレタイムを要求し、数分の間に気持ちを切り替えていたことが、翌日の日経新聞の記事で良く分かりました。今日はその大坂さんの気持ちの切り替えの話をしたいのです。
新聞記事によれば、大坂さんは悪夢の第二セットを振り返って、「ちゃんと現実と向き合わないといけないと思った」と語ったそうです。そしてまた、大坂さんは自分の成熟において最大の課題は、「思いどおりにいかない状況を受け入れる力」をどう身に付けるかだ、と語ったと報道されました。なんと凄い言葉でしょうか。私には、若干21歳の言葉とは思えませんでした。
新聞はさらに次のように続きます。テニスの試合に勝つためには、「勇気」「忍耐」「反発力」「一球への執念」「少しの運」そして、「成熟」が必要であるが、この日の大坂さんは、勝者に必要なすべての資質を備えていた、と書かれていました。
もう一度言います。大坂さんは自分の成熟において最大の課題は、「思いどおりにいかない状況を受け入れる力」をどう身に付けるかだと語ったのです。
卒業?修了生の皆さんは、これまでも学業において「思いどおりにいかない状況」は度々あったと思います。でも皆さんは何とかそれを乗り越えて今日を迎えました。しかしこれから社会人になって乗り出す大海原では、これまで以上に多種多様な困難な出来事に遭遇します。「思いどおりにいかない状況」はこれまで以上に多く出ることでしょう。
その時に、大坂さんの言葉を思い出してください。「思いどおりにいかない状況を受け入れる力」をどう身に付けるかが、その時以降の皆さんの人生を大きく左右します。やけを起こして自暴自棄になり、状況を一層悪くするか、冷静に状況を判断して、一つひとつ対策を立てて着実に状況の転換を図ろうとするかです。その時のキーワードは「忍耐」だろうと思います。
大坂さんは敗退の崖っぷちに立ったとき、自分の不利な状況を自分自身で冷静に認めようとしたから、その後の勝利への自分をつくることができたのだと思います。
状況が悪い時に冷静に自分を見つめること、耐えることは、そう簡単なことではありません。
しかし、どんなにつらくて苦しくとも、先ずは現実を受け入れて、自分を見つめてみることをしないと、人間としての成熟には至らないと思うのです。
思いどおりにいかない状況を、冷静に受け入れたら、次にそれを何とかする知恵を総動員して、勇気をもって歩みを進めましょう。そうすることによって、新たな地平が開くのだろうと思います。課題解決への道が開くのだと思います。おそらく、そうしたことの連続が人生なのだろうと思います。
夢や希望や目標を立ててその実現に邁進する人生を歩んでもらいたいと思うと同時に、大坂さんのように、上手くいかないときにどれだけ自分を見つめることができるか、そのことを併せ持って大海原を乗り切ってほしいと思います。しぶとく生きて行ってください。
最後になりましたが、ご父母の皆様には、これまで後援会活動を中心として、様々なご支援とご協力を賜ってまいりました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。お嬢様のこれからの歩みが、豊かで実りあるものとなるよう、心からお祈り申し上げます。
それでは、全ての卒業生、修了生の皆さん、自分を信じて、明日に向けての新たな一歩を、大きく踏み出してください。
自分自身の成熟に向けて、勇気と忍耐をもって、自分の人生を切り開いていってください。
そして、何よりもこの大学をいつまでも忘れないでください。
皆さんの卒業?修了を心からお祝いして、祝辞とします。
※2019年3月21日 実践女子大学人間社会学部?人間社会研究科 卒業式祝辞より