2016年度入学式 式辞?祝辞
式 辞
実践女子大学?実践女子大学短期大学部 学長 田島 眞
校庭の桜も満開を迎え、おだやかな入学式を迎えることができました。
ただいま、生活科学研究科2名、生活科学部476名、編入生3名の入学を許可いたしました。
新入生をお迎えし、教職員一同喜びに堪えません。
実践女子大学は、一昨年4月から二校地での教育をスタートいたしました。生活科学部は日野で、文学部?人間社会学部?短期大学部は渋谷で、教育を行っております。
渋谷校舎の建設に引き続き、ここ日野校地でも校舎の改装、新第3館の建設を行い、見違えるようなすばらしいキャンパスとなりました。この新キャンパスに多くの新入生をお迎えできましたことは、大きな喜びでございます。
さて、本学園は、今からおよそ120年前の明治32年、西暦でいいますと1899年に、その時代の近代女子教育の先駆者である下田歌子によって創立されました。
明治の時代といえば、女性の社会的地位が、男性に比べるとはるかに低い時代です。下田歌子は、2年間にわたる欧米の視察に出かけ、そこで目にしたものは、欧米では、女性が男性と肩を並べて活躍しており、また、女性も男性も等しく教育を受ける姿でした。これを何とか、日本でも実現できないかということで設立されたのが、帝国婦人協会です。その協会の附属機関として設立されたのが、本学園です。
実践という名称も、教育が広くあらゆる層になされるべきとの考えに基づいております。学祖の残した想いの一つに「女性が社会を変える、世界を変える」があります。これは、実践女子大学の教育理念「品格高雅にして自立自営しうる女性の育成」に結びついています。
皆さんはこれから大学での勉強をスタートする訳ですが、スタートするに当って、3つのことに注意を払ってください。
第一は、有名な、だれでも知っている演説の名言ですが、米国第16代大統領リンカーンの言葉です。「人民の人民による人民のための政治」。ご存知ですね。これを教育に置き換えるとこうなります。「学生の学生による学生のための教育」となります。ポイントは「学生による」というところです。高校までは、勉強は上から与えられるものでした。しかし、大学での勉強は、自ら行うものです。現代風の言葉でいえば、アクティブ?ラーニングです。自ら率先して、工夫して、学ぶことが大切です。
第二は、高校の勉強には正解が必ず一つある、これに対して、大学の勉強では、正解は必ずしも一つでないということです。同じ事柄でも見方を変えれば別の結論が出ます。このように、多方面から物を見るということに心掛けてください。
さらに、大学の勉強には、到達目標が無いということもあります。高校までの勉強ですと、例えば、三角関数が理解できれば、数学がAとか、逆上がりができれば体育がAとか学習の到達目標というのが設定されています。大学では、これがありません。自分が納得いくまで、勉強することが求められます。
第三は、カリキュラムに従って授業を受講するのは当然ですが、時間を見つけて、ぜひ、書物に親しんでいただきたいことです。ある調査によれば、大学生の4割が1日の読書時間がゼロというものがあります。本学には、誇るべき立派な図書館があります。古今東西、内外の名著に触れてください。そのことが、深い教養となって、これからの人生にきっと役立ちます。ほんの一例ですが、すぐにやってくる定期試験の答案作成、レポートの作成、さらに3年後にやってくる就職のためのエントリーシートの作成、そして社会に出てから必要となる様々な書類作成、そういったものに美しい文章を書くことが求められます。それは、付け焼刃では不可能です。多くの書物を読みこなした実力が必要です。いわばコミュニケーション力を付けるために最適な手段なのです。時間を見つけて良い書物に触れることで、確実にコミュニケーション力が向上いたします。
本学で学ぶことにより、皆さんが大きく成長することを期待しています。教職員一丸となって、その成長の手助けをいたします。
最後になりましたが、これまで皆さんを育ててくださった保護者の方々と、お忙しい中、ご臨席を賜りましたご来賓の皆様とともに、本日の喜びをわかちあい、式辞とさせていただきます。
※2016年4月4日 実践女子大学生活科学部入学式式辞より
祝辞
学校法人実践女子学園 理事長 井原 徹
新入生の皆さん、実践女子大学への入学、おめでとうございます。学校法人を代表して、心から歓迎します。
ご父母の皆様、これまでの長い年月のご苦労に対しまして、深甚なる敬意と祝意を表します。そして、なによりもお嬢様の本大学への入学を、心から歓迎いたします。
さて、本大学への入学にあたって、私から皆さんへの希望を述べて、祝辞とします。
大学院入学の皆さん、大学院では、研究テーマの選定、先人たちの研究実績の学び、自分自身の思索の形成等を経て、修士論文、博士論文に結晶化させて行くわけですが、その一連の研究生活の中では、おそらく試行錯誤の時が多いかと思います。
しかし、大学院における研究生活を豊かなものとするために、どうか自分を見失わずに、勇気と自信を持って着実に、研究を進めて行ってください。
学部学生の皆さん、皆さんは、これまでは「偏差値」というものが支配する世界で、他人(ひと)より高い点数を取ること、他人(ひと)との成績の比較で優位に立つことを中心に考えざるを得なかったと思います。
これから始まる学生生活は、自分で自分の将来を決定できるようにするためのものです。これまでのような他者比較で優位に立つための学びではなく、自分の将来を築いていくために学んでください。これまでの勉強とはおのずと異なるということを、深く自覚してほしいと思います。
そしてまた、これからの人生では、「自分らしさ」「個性」を磨き、「自分とは何者なのか」を確認し個性を確立していくことが大切です。「自分らしさ」を確立するということは、「自分にしかない」ものを身に着けることです。
大学4年間は、学びながら、「自分とは何者なのか」を確立させて、社会から信頼を得ていくことになるということに、強く思いを至らせてください。
ただし、それは自分勝手の独りよがりのものであってはなりません。本学は、「品格高雅」「自立自営」を理念として117年の伝統を築いてきました。本学で学ぶ皆さんの個性は、高雅な品格に裏打ちされたものであることが望まれます。自由を履き違えて、身勝手で、他人に迷惑をかけるような言動は、高雅な品格とは言えません。
さて、これからの我が国においては、「男女共同参画」が大きなテーマとなって、社会が変革していきます。このときにあたり、女子大である実践女子大学の果たす役割は大きなものがあります。
残念ながら、我が国は、まだまだ男女共同参画社会になっているとは言い難い面が多くあります。学園全体で男女共同参画の推進を目指すこととしていますが、入学した皆さんの意識の持ち方や行動?思考に負うところも大であります。
皆さんは、個人として「品格高雅」を身に着けながら、全体としては男女共同参画を推進するという意識を持ってくれることを期待しています。
最後に皆さんに、実に具体的なことを要望します。
今日の大学入学式という、大きな節目にあたって、ぜひとも、今後の大学院や学部における、研究計画?学習計画を含めた「生活設計」を立ててください。
限られた学生生活全ての期間の1年ごとのやりたいこと、身に着けたいことを、大筋で良いから、設計してください。
つまり、修了?卒業するまでに、何年生の時はどう過ごすか、何をどれくらい身に着けたいかを想定し、大筋の目標を設定してください。
今日の続きで漫然と明日を迎える、という無自覚な生き方では、時を無駄にしてしまいます。あっと言う間に卒業式を迎えてしまいます。
社会人になって分かることですが、仕事や人生がうまく進むかどうかは、「段取り」や「計画性」によるところが大きいものです。今日を節目として、ぜひとも将来への生活設計を立ててください。
品格高雅にして、自立自営する女性となるため、日々精進してください。
新入生の皆さんの、本学での学生生活が実りあるものとなるよう心から祈り、祝辞とします。
※2016年4月4日 実践女子大学生活科学部入学式祝辞より