東京五輪開幕日の一面紙面を学生が模擬制作!スポニチとの社会連携授業が集大成を迎えました(7/13)
2021年7月23日開幕の東京オリンピック2020を受け、開幕日当日のスポニチ一面紙面を学生が模擬制作する授業の最終プレゼンテーションが7月13日(火)、本学渋谷キャンパスで行われました。スポーツニッポン新聞社と本学の社会連携事業として行われ、実際にスポーツニッポン新聞社の輪転機で刷り上がった模擬紙面を使い、5チームが一面紙面の出来栄えを競いました。東京オリンピック2020も無事閉幕、4年間続いた名物授業は今回で一応の集大成を迎えました。
最終プレゼンは、1チーム4~5人の5チームが、「アメリカ」「南ヨーロッパ」などのチームごとにスポニチ一面の模擬紙面を発表しました。これを受け、スポーツニッポン新聞社の藤山健二編集委員が紙面の出来栄えに講評を加えていきました。ちなみに、アメリカや南ヨーロッパなどのチーム名は、履修者に関心のある国をアンケート集計した結果をもとに、チーム分けをしています。
参加国の公式ユニホームに注目-1班
東京五輪開幕、ユニホームの金を探せ!
=TGCオシャレ番長はどこの国?=
-世界の有名ブランドが終結!目が離せない-
参加国の公式ユニホームにスポットを当てたのは、1班のプレゼンです。新聞各社が有名デザイナーに依頼して公式ユニホームの小論を書いてもらうほど、公式ユニホームは注目されており、1班の着眼点は高く評価されました。
それによると、1班は各国の公式ユニホームを制作したブランド会社をそれぞれ調査。公式ユニホームの制作メーカーが、フランスはラコステ、アメリカはラルフローレン、イタリアはアルマーニなど各国を代表する有名ブランドであることを紙面で伝えました。ちなみに、日本のフォーマルウエアはAOKIホールディングス、カジュアルウエアはアシックスです。
同班は、東京開催を意識したとみられるデザインにも、着目しました。例えば、スウェーデンは自国ブランドのH&Mから日本のユニクロに変更したほか、イタリア選手団の公式ジャケットの内襟には、日本の伝統的な寺院の図柄の上にイタリア国家の歌詞が印刷されているなどのエピソードも紹介しました。
ジェンダーと絡めてみては?
これに対し、藤山氏は、1班が作成した紙面について「見出しも『おしゃれ番長』はかっこいい。また、東京五輪コレクションはとっても面白かった」と感想を述べています。
その上で、色彩豊かな他国のユニホームに対し、「日本は日の丸ということで、どうしても赤と白ばっかりで、上に赤か、下に赤かという、ただそれだけなので、毎回同じような形にどうしてもなってしまう」と批評しました。というのも、「日本は女性がスカート、男性はスパッツという固定観念があるからだ」と言います。これに関連し、藤山氏は「海外はほとんどジェンダーの時代だ。ユニホームが男女で統一されている国もある。ジェンダーの問題と公式ユニホームを絡めた視点で書くと面白いかもしれない」などとアドバイスを送りました。
新競技「スケートボード」に注目-2班
竜飛鳳舞、華麗な技で世界へ
=東京五輪新競技「スケートボード」から目が離せない=
-パーク男子部門はスノボメダリスト”二刀流”平野歩夢に注目-
2班は、5グループの中で唯一、競技そのものをテーマに取り上げました。東京大会から正式採用された新競技「スケートボード」に注目。新競技の魅力を伝える紙面づくりを試みました。
それによると、同班はスケートボードの魅力を1940年代アメリカ西海岸発祥の歴史まで遡ってひも解き、現在ではスポーツのみならず、若者にはファッションとしても受け入れられていると紹介しています。
その上で、スケートボード競技に特有な用語などを丁寧に解説。競技には男女とも「ストリート」と「パーク」の2種類あることや、その採点方法などを紹介したほか、空中で時計回りに一回転半する「バックサイド540」など注目の大技についても、説明を加えました。
また、メダル有望の日本選手も挙げています。具体的には▼ストリート男子は、堀米雄斗選手▼ストリート女子は、19歳の西村碧莉(あおり)選手▼パーク男子は、冬季五輪種目スノーボードの銀メダリストでもある平野歩夢選手-を挙げました。
インパクトある見出しに驚き
プレゼンを受け、藤山氏が驚いたと学生に語り掛けたのは、見出しの「竜飛鳳舞」でした。非常にインパクトがあり、藤山氏も「スケートボードを中国語にすると、この言葉になるのか?と一瞬、間違ったほど」だったとか。藤山氏が「こんな難しい言葉をよく知っていたね」と水を向けると、学生は「スケートボードに合うような、かっこいい単語をメンバーで一生懸命探し、ぴったりの単語を見つました」と胸を張りました。
【東京五輪2020を振り返って】
日本選手は、4種目で金3銀1銅1と期待以上の活躍を見せました。男子ストリートの堀米雄斗選手は学生も予想した通りの金。女子ストリートは、西矢椛(もみじ)選手が史上最年少の金、中山楓奈(ふうな)選手が銅。女子パークは四十住さくら選手と開心那(ひらき?ここな)選手が金銀と表彰台のワン?ツーを占めました。一方、学生期待の西村碧莉選手は8位。平野歩選手は14位で残念ながら決勝進出はなりませんでした。
五輪と生理、遅れた日本のピル事情-3班
五輪と生理、知らなかったピル事情
=北京五輪出場時にピル服用、使用期間が短く体重増加、結果出せず知識不足を後悔=
いかにも「女子大生らしいテーマ」と評されたのが、3班のプレゼンです。同班は「生理でも絶対休めないオリンピックのアスリート達はどう向き合っているのか」という問題意識から議論をスタート。アスリートの生理対策、とりわけ欧米に比べて遅れた日本のピル事情に注目しました。
それによると、学生たちは日本のアスリートのピル使用率は2%にすぎないのに対し、欧米のアスリートは83%に達していると指摘しています。欧米に比べ格段に少ない上、生理やピルに関する知識や理解も不足しているのが実情と問題提起しました。
具体的ケースとして、大会時にピルを使用していたという元競泳日本代表の伊藤華英選手を取り上げました。同選手は2008年の北京オリンピック大会の際、ピルの使用法を誤り、思うような結果を残せなかったからです。
逆に、ピルを正しく使用すれば、多くの効能があるとも学生は強調します。例えば、元アルペンスキーの花岡萌選手です。花岡選手は、ピルで生理のタイミングをコントロールすることに成功。競技生活のここぞという時に集中することができたと学生たちは紹介しました。
その上で、学生たちは、ピルの使用は産婦人科で相談する必要があると結論付けています。自分の体に合った対処法を医師と見つけていくことこそが、最も重要と考えたからです。
「指導者」が問題?
これに対し、藤山氏は「皆さんが最初と言いますか…」と、3班が女性アスリートと生理の問題を取り上げた意義を評価しつつ、この問題に関する日本の現状を解説しました。具体的には、「日本はとても遅れている」と指摘した上で、「女性アスリートからは指導者に何も言えないし、指導者も何もしない」というお寒い現状を説明。その原因を「監督やコーチ、トレーナーとか、いわゆる指導者が、圧倒的に男性が多い」ことに求めました。
このため、日本に限らず世界的にも、この問題に関する限り「男性の指導者は、ほとんど(女性アスリートの)役に立っていない」と批判。この結果、女性アスリートとしては「何も指導者に相談できないし、正しい選択ができなくなっている」と嘆じました。
「性的ハラスメント問題」にメス-4班
性的画像問題からアスリートを守れ
=「性的写真を撮られていると感じたことがある」=
-元オリンピアン田中琴乃さん-
4班は、「今スポーツ界を揺るがす大問題」となっている性的ハラスメントを取り上げました。学生は盗撮のほか性的写真のネット投稿などの「ユニホームによる性的ハラスメント問題」について、女子大生の目線から主張を展開。スポーツジャーナリズムの視点から規制の提案なども行いました。
性的ハラスメントは、演技?競技中に撮影された写真を性的に切り取ることで選手に不快感を与えることです。それによると、4班は性的ハラスメントの現状を知るため、当事者である選手側とメディアの双方に取材を試みました。
このうち、選手の立場からは、新体操団体の田中琴乃さんが取材に応じ、「性的な写真を撮られていると感じたことがある」などと語りました。田中さんは、2008年北京五輪と2012年ロンドン五輪の新体操団体の日本代表です。併せて、大会での撮影の規制の緩さにも苦言を呈しています。
他方、メディア側からは、スポーツニッポン新聞社写真映像部の高橋雄二カメラマンが、学生からの取材に応じました。具体的には、選手を写真撮影する際に規制があるかなどの問い掛けに対し、「撮影許可を得るため取材申請書を提出する必要はあるが、報道機関として表現の自由は担保されている」と強調。ただ。「まれに、カメラマンの中にも性的な写真を狙っている人がいないとは言えない」と私見を述べています。
その上で、学生たちは、独自の解決案を提案しています。具体的には、大会組織委員会の対策に加えて▼報道写真を保存?スクリーンショットすることができないアプリやHPサイトの作成▼性的な意図を入れない写真掲載を誓約書提出で義務付け▼美しい写真を撮ったカメラマンに対する表彰-などの実現を求めました。
記事の現場取材を称賛
4班のプレゼンに対し、藤山氏が最も評価したのは、4班の記事がきちんと現場取材を踏まえて書かれた点でした。具体的には、体操協会や水泳連盟、スポニチの写真部に対して、それぞれ質問状を提出。その回答を踏まえて記事を執筆しています。他チームは、記事の情報源がネット情報中心なのに比べ、藤山氏は「5グループの中で、実際に質問して答えをもらうという手順を踏んだのは、ここだけだ」と語り、同班の真摯な取材姿勢を称えました。
【東京五輪2020を振り返って】
競技大会本番では、ドイツ体操女子選手が足首まで覆うタイプのユニホーム「ユニタード」を着用したことで注目を集めました。ドイツ体操協会によると、「女性アスリートが性的対象にされることへの抗議」のため採用したと言います。大会組織委員会は2021年3月、競技会場の入場者に対し、「アスリート等への性的ハラスメントとの疑念を生じさせる写真、映像を記録、送信もしくは作成すること」を禁止。さらに違反した場合は強制退場もありうると決定していました。規制強化の背景には、日本でも女性アスリートの競技中のテレビ映像から、無断で画像をキャプチャーして淫らな言葉とともにアダルトサイトに投稿したとして2021年5月、自営業の男性が警視庁に逮捕されたことも考慮されました。
応援アプリで「無観客」観戦にフィット-5班
「ステピク」アプリが繋ぐ応援の輪
=遠くからでも気持ちは届く=
-五輪会場で声援できなくても”同志”と一緒に-
新たにオリンピック応援アプリ「ステピク」を開発、自宅から東京五輪を楽しむ応援方法を提案したのは5班です。おりしも東京五輪?パラリンピック大会組織委員会は、7月8日に五輪競技の「無観客」開催を決定。図らずも応援アプリを活用する同班の提案が、どのチームにもまして、「タイミング的にベストフィットな提案」と評価されました。
それによると、応援アプリに搭載する機能は、アバターやチャット、応援ソングの設定など。このうち、アバター機能は自分のアバターをネット空間につくり、このアバターを介して選手を応援可能にします。自分のアバターは、自分の顔写真を取り込み作成するほか、参加国のユニホームと着せ替えを実現。また、アクセサリーとしてメダルも着用可能にします。
メダルは、「金メダル」や「銀メダル」、「銅メダル」に分け、試合観戦で獲得した合計ポイント総数に応じて貰えます。このうち、金メダルはスポンサー企業からのオリジナルプレゼント付きとします。
また、チャット機能は、五輪会場で声援できないサポーターに対し、SNSを介して他のサポーターと会話する機会を提供します。応援ソングは、チャットの投票機能を使い、オンライン観戦中を聴く音楽を選べるようにしました。
架空の話と思わせない出来栄え!
これに対して、藤山氏は完成した5班の紙面の出来栄えについて「これがまったく架空のものだと全然気が付かなかった。それぐらい本当にある話として原稿を読ませてもらった」と完成度の高さに舌を巻きました。さらに、ポイント付与や金メダル獲得という同班のアイデアを「発想として面白い。とても読者の興味を引く内容になっている」と称賛しています。
【東京五輪2020を振り返って】
東京五輪2020の開幕式は、23日午後8時から東京都新宿区の国立競技場で、無観客で開催されました。このため、翌24日のスポニチ紙面はもとより五輪の話題一色です。一面と裏一面をぶち抜き、開会式のパノラマ写真とともに、こう読者に呼び掛けています。
東京五輪、上を向いて歩こう。
=1年延期 歓声なき開会式=
-こんなときだからこそ、スポーツの持つ力に希望を託したい。-
では、23日開会式当日のスポニチ朝刊の一面は、実際のところ、どうだったのでしょうか。本連携授業の歴代の履修学生が、毎年工夫を凝らした紙面づくりを試みた開会式当日朝刊の一面模擬紙面のことです。リアルの紙面の一面トップは?それは「日本の男子サッカーが1次リーグA組初戦で南アフリカと対戦、1-0で勝利した」という記事でした。
久保 黄金の左だ!
=森保J白星好発進=
-五輪日本最年少弾「決めるとしたら自分だと」-
160人が履修
スポーツニッポン新聞社と本学の連携授業は、2~3年生が対象のキャリア教育科目「国際理解とキャリア形成」のなかで実施されてきました。指導教授は、文学部国文学科の深澤晶久教授(キャリア教育担当)です。今年度で4回目であり、160人が履修しています。東京オリンピック2020も無事閉幕、4年間続いた名物授業も、今回の授業でめでたくフィナーレとなりました。
スポーツニッポン新聞社?藤山健二編集委員の話
今回のプレゼンテーションは4年間の集大成にふさわしい作品ばかりで、改めて学生たちの持つ創造力と可能性に感心させられました。最初にこの授業のお話をいただいた時は〝女子学生とスポーツ新聞?という意外なコラボが果たしてうまくいくのかどうか心配しましたが、実際に出来上がった紙面は私たちの想像をはるかに超えるものでした。
グループのみんなで力を合わせて作り上げた原稿や見出しを弊社の専門記者が本物と同じようにレイアウトして刷り上げ、それを初めて目にした学生たちから大きな歓声が上がった時には、私も肩の荷が下りたような気がしました。コロナ禍での東京五輪?パラリンピックは生涯忘れられない思い出になったと思います。その思い出の中に、自分たちが作り上げた素晴らしい紙面も一緒に残しておいていただければ幸いです。4年間、ありがとうございました。
深澤晶久教授の話
2018年から4年にわたり、スポーツニッポン新聞社様にサポートをいただきました。スポーツ新聞という、どちらかと言えば女子大生からは距離のあったメディアとのコラボレーションということでありましたが、ベテラン記者藤山様、そして矢野俊哉?ビジネス開発局営業第二部長様をはじめとしたスポーツニッポン新聞社様の全面的ご支援のおかけで、オリンピック?パラリンピック連携講座の顔ともなる、素晴らしい授業を展開することが出来ました。
オリンピック?パラリンピックを通じて多様性の理解や受容、そして思いがけない事態となった大会の延期下における考察など、極めて貴重な学びの時間となりました。とりわけ学生たちの姿からは、最終的な成果物として、世界に一枚しかないスポーツニッポン新聞の一面を手にできたことが、充実感に繋がったものと考えています。この場を借りてスポーツニッポン新聞社様関係各位に感謝申し上げます。