「人権意識」や「誠実?素直さ」を養う新人研修などを提案!サントリーHDと初めて社会連携授業が実現しました(7/2)
サントリーホールディングス株式会社の新入社員向け研修を本学の学生が提案する課題解決型授業(PBL)の最終プレゼンテーションが、7月2日(金)に行われました。本学とサントリーHDが協力して行う社会連携授業が、キャリア教育科目「実践プロジェクトa」において、今年度初めて実現しました。プレゼンでは、多様性や人権を意識したオーストラリア研修のほか、「誠実?素直さ」を養う研修、「デジタルデトックス」研修、「自らの仕事に価値を見出す」研修などが学生から提案されました。
最終プレゼンは1時間半にわたって行われ、4チームが登壇。「人権×新人研修」(4班)、「社会人としての心を育てる」(1班)、「現代の私たちが考える新人研修」(2班)、「『やってみなはれ』を育てる!~新入社員研修計画~」(3班)の順に各班がユニークな提案を発表しました。具体的な課題は、あらかじめサントリーHDから与えられており、各班は「会社を取り巻く環境を踏まえ、企業人?社会人に求められるものは何なのか、結論を発表して下さい」「それを踏まえ、これからサントリーに入社してくる社員に対する具体的な研修計画を提案してください」の2テーマに沿い、新人研修の意義や内容に関する議論を深めました。
豪研修で多様性を学ぶ
このうち、人権に着目して、オーストラリア研修を通じた多様性を認める新人研修を提案したのは、4班です。同班は、企業人?社会人に求められる資質を▼協調力=コミュニケーション能力(発信力、受け取る力)▼対応力=明るく前向きな思考、理解力▼プラスα精神=求められたこと以上のことをする力▼物事を多角的に見る力-の4つにあると強調。サントリーHDの企業理念の「人と響き合う」「自然と響き合う」の精神を踏まえて、人権の多様性を受け入れられる人材づくりを提唱しました。
それによると、オーストラリア研修は障がい者やLGBTなどの人々と2回にわたり、現地で交流します。それぞれ一週間の研修期間中、ヒアリングやフィールドワークを行い、参加者同士でグループワークを実施。オーストラリアと日本の違いを見つけてもらい、プレゼンテーションをしてもらう予定です。海外交流を踏まえて、サントリーならではの新規ビジネスを提案してもらうきっかけづくりを狙いました。
ビフォー?アフター表に感心
こうした学生の提案に対し、サントリーHDからキャリアサポート室長の斎藤誠二氏、同キャリア開発部課長の阿部優子氏、同キャリア開発部新人研修担当の宮崎優さんが、各班のプレゼンを論評しました。
4班の提案に対しても、例えば、阿部課長は、企業理念を発展させて人権に着眼した点について「やはり企業理念は、『何のために企業があるのか』『私たちは何のために事業をやっているのか』というところで、すごくこれから大事になる。ここに着目されたのは素晴らしい」などと評価。また、宮崎さんは新人研修の効果をビフォー?アフターの表に整理した点に注目し、「私も新人研修の担当。なので、研修を通して新人がどのように変わっていくのかということを強く考えてくれた点が一番いいなと思った」などと語りました。
他方、課題や改善点も指摘されています。研修にもビジネス合理性が必要と注文したのは斎藤室長です。オーストラリア研修について「多様性の理由だけでオーストラリアに全員連れて行くことはできない。国内の研修でやるのに比べて多分30倍はお金がかかるし、当然リスクもある」と語り、「私だったら国内に世界中から来ている留学生を呼んで来て、そことセッションをやるかもしれない」などと話しました。
「誠実?素直さ」を養う研修を絶賛
さらに、サントリーHDをして「今までいろんな大学で、このテーマも授業でやってきたが、こういう研修方針を提案したのは実践女子大が初めてではないか」と高い評価を受けた提案が続きました。企業?社会人に求められるゴールに誠実さや素直さを掲げ、それらを養うための新人研修を行うと提案した1班です。同班が強調した誠実さ?素直さを養う研修方針は、グループ全体で社員4万人のメガ企業?サントリーHDの人事部や研修担当をして「すごくいい。本当にこの研修方針は来年から、うちのテーマにしたいぐらいだ」とうならせました。
それによると、同班は新人研修の目的を「社会人としての心を育てる」ためにあると強調。企業人?社会人に求められる資質(ゴール)に▼誠実?素直さ▼他者への理解?個性の尊重▼実践力-を挙げました。
このうち、誠実さや素直さは、仕事を早く覚えたり、自分の考えばかりに固執して失敗したりしないため、また上司や同僚と良好な関係を築くため重要と指摘しています。
そのためには、「自分の発言に責任を持つ」とともに、「言い訳や嘘を言わない」ことが大切と強調。自分の研修目標を発表する「宣言大会」を通して、「新人にプレッシャーをかけて自分を律する」とともに、「責任感を自覚させ、研修期間中、その目標を毎日意識するように促すことで、気持ちを持続させる」としました。
併せて、「新入社員は先輩を見て学ぶ」と語り、上司に対しても誠実さや素直さを求めています。このほか、研修期間を3か月。費用は約5500万円と試算しました。
「実践女子大ならでは」と評価
1班のプレゼンは総じてサントリーHDから高評価を受けており、例えば、阿部課長は「求められる力というのを整理して、それをどう研修につなげるかというところを、しっかりグループの中で考えてくれたということがすごく伝わってきた」などと発表の良かった点を挙げています。
また、宮崎さんは「上司にも誠実さや素直さが必要という指摘は、非常に重要なポイントではないか」などと問題提起。斎藤室長も「プレゼン内容が、どう実施するかのHOWに流れちゃったのが、ちょっともったいなかった。しかし、そのHOWの説明も、いいところがたくさんあって、もしかしたらこれは実践女子大ならではの素晴らしさかもしれない。ここをさらにMUSTで深堀りしたら、もっと素晴らしいものになっていた可能性がある」などと1班のプレゼンを振り返りました。
デジタルデトックスを研修コンセプトに
これに対し、2班は近年のSNSの普及により若者のコミュニケーション力の低下が気になるとして「デジタルデトックス」を新人研修のコンセプトに掲げました。デジタルデトックスとは、SNSやスマートフォン、コンピューターといったデジタル機器の使用から意識的に距離を置き、自然に触れたり自分と向き合ったりして、精神的?肉体的な疲労をリフレッシュしようとする試みです。
サントリーHDは、同班の提案について「こういうテーマを出すと、どうしてもHOWのプレゼンテーションがメインになってしまう。ところが、このグループだけは、何をしたいのか、何故なのかというところを相当に議論した気配があり、そのバランス、ボリュームが半々ぐらいで、すごくいい」と高評価を与えました。
それによると、同班は「現代の私たちが考える新人研修」をテーマに新人研修を構築しました。企業人?社会人に求められる資質として▼主体性▼協調性▼コミュニケーション力▼ビジネスマナー▼柔軟性▼想像力-の6つを挙げ、それぞれのキーワードに求められる要素を「こういうものが必要なのかと誰が見てもイメージできる」までにブレイクダウンした上で詳述しています。
例えば、主体性について「自分の意思や判断にそって責任を持って行動すること」と「自らの行動がもたらす結果に責任を持つこと」などと説明。それをサントリーHDに当てはめて「やってみなはれ精神や挑戦を続けるという日々新たなことに臨んでいくなか、主体性がなければただの思いつきの行動になる。そうならないために必要な力」などと解説しています。
その上で、2泊3日の合宿研修を提案しました。1日目の講義に続いて、2日目は山梨県内のサントリー3工場を見学、3日目は富士山に清掃登山を行うとしています。
富士清掃登山を激賞
2班のプレゼンに対し、宮崎さんと阿部課長は、「私たちの今回のテーマには『今、企業人?社会人を取り巻く環境を踏まえて』という視点もあった。このグループは必要な資質だけでなく、ちゃんと環境も考えてくれた」「企業人?社会人に求められるスキルを、ちゃんと言葉化している。その言葉化のクオリティがとても高い」とそれぞれ高評価を与えました。斎藤室長も「主体性とか協調性とかコミュニケーション力というと、誰もが思わず頷いてしまうけれども、本当はどういうことなのか。何を意味しているのか。このグループはそこを相当議論した気配があって、それを具体的に書き込んでいる」と宮崎さんと阿部課長の称賛に同調しています。
このほか、富士山の清掃登山という提案も、サントリーHDの皆さんの心に刺さったようです。例えば、斎藤室長は「富士山に登るだけでなく清掃活動するというのは素晴らしい提案」と激賞。「これはもう『人と自然と響きあう』というサントリーの基本的な企業コンセプトにもかなうし、本当にこれ取り組んでみようかと思うぐらい。山頂まで行かなくても、途中まででいいので」などと語っています。
完成度が最も高い提案
最後の発表は、3班です。同班の提案は「研修提案という意味でのプレゼンテーションの完成度がかなり高い。おそらく4つのプレゼンのなかで、一番高いのではないか」とサントリーHDが瞠目する内容のものとなりました。
それによると、同班は、最近の若者の傾向を「給料のため、そんなに頑張らなくても構わない」という若者が多いと分析しています。その上で、社会人に求められる能力を▼対人感受力=相手の考えや気持ち考える力▼成長力=失敗しても解決策を逃げずに見つける力▼やりきる力=目標を設定し継続する力▼論理的思考力=解決の糸口を必ず見つける力-の4つにあると指摘しています。
具体的には、5週間の新人研修を提案。ビジネスマナー研修(一週目)やサントリーについて学ぶ研修(二週目)、新入社員による商品プレゼン(三週目)などを通じて、「自らの仕事に価値を見い出し、責任を持って取り組める人材を育てる」ことを求めました。これらの研修を行うことで、「環境にも配慮できる 優秀な人材が育成され、世界を視野に活躍できると思う。このように積み重ねることで、世界を視野にした事業拡大、SDGsにも配慮できる人材育成が可能になる」などと、未来のサントリー像を描きました。
「自らの仕事に価値を見出す」に共感
3班のプレゼンに対し、宮崎さんや阿部課長は「自らの仕事に価値を見出す」という仕事観に注目。宮崎さんは「仕事は給料のためで人並みに頑張る程度で構わないという人が多い」という表現を取り上げ、「結構、新入社員研修とかで学生気分が抜けていない人がいる。そこもちゃんと冒頭に書いてもらった」と指摘。宮崎さんも「仕事を通して社会に影響するという崇高な目的をセットした点には、すごく共感を覚えた」などと語りました
また、阿部課長や斎藤室長は、研修体系を各週ごとにテーマと目的、施策と整理した点を評価。それぞれ「各週のテーマが明確で、それぞれの目的を達成するため、施策に落とし込むというスタイルに説得力があった」「具体的な研修提案が、1週目、2週目という形で、非常によくまとまっていた。何のためにということも含めて、完成度が高い」などと振り返りました。
その上で、斎藤室長は惜しむらくはと改善点も指摘しています。プレゼンの2ページ目や3ページ目の「社会を取り巻く環境」や「社会人に求められる能力」などの分析について、「ここをもっと掘り下げていたら、さらに説得力のある素晴らしいものになったのではないか。この後のHOWにすぐに入ってしまって、このHOWの完成度が高いだけに、もったいなかった」と語りました。
新入生17人が挑戦
同授業の指導教授は、本学文学部国文学科(キャリア教育担当)の深澤晶久教授です。新入生を対象に昨年度新設された前期カリキュラム「実践プロジェクトa」の一環として行われ、今年度は1年生17人が履修しました。
「一般社団法人フューチャースキルズプロジェト(FSP)研究会」が監修する初年次教育プログラム「主体性講座」をベースに組み立てられており、1グループ4~5人の4班がグループ単位で課題解決に取り組みました。
深澤晶久教授の話
サントリーホールディングス様からの課題は、とてもレベルの高いお題であったと振り返っています。
しかし、サントリーホールディングス齋藤さん、阿部さん、宮崎さんの厳しくも愛情あふれるアドバイスやご指摘をいただき、学生の提案内容は、とても高く評価いただけるものに仕上がりました。ご支援に改めて心から御礼申し上げたいと思います。
そして、学生たちは、極めて短期間であったものの、この授業の目指すゴールである「主体性を磨くこと」に向けて、大きく成長してくれたと振り返っています。このテーマを考えていくことは、学生が大学時代に何に意識して学びを深めておけば、社会人として通用するかの事前研究でもあるわけです。言い換えれば、これからの4年間、「いかにして学ぶかを学べる」ということになる、とても貴重なお題であると感じています。学生の真摯な取り組みに敬意を表したいと思います。