【The American Women’s College of Bay Path University(TAWC)との共同授業】日本で活躍する女性リーダーに本学学生がインタビューしました(Vol.5)
実践女子大学では2019年度前期の授業「オープン講座(テーマ:日米の女性リーダー比較)」として、The American Women’s University of Bay Path Universityと共同授業を行っています。授業の一環として、日本で活躍する女性リーダーに本学学生がインタビューをおこないました。
今回は、神奈川県立保健福祉大学教授?公認スポーツ栄養士の鈴木志保子先生へのインタビューをお届けします。
※この共同授業は日米友好基金(JUSFC)から資金提供を受けています。
鈴木志保子先生インタビュー
(神奈川県立保健福祉大学教授、公認スポーツ栄養士、医学博士)
インタビュアー:小野村、朝野、片山、ワグネル、石川
小野村:有能な女性リーダーの必要条件はどのようなことだとお考えになりますか?
鈴木先生:まず、広い視野。日本の女性って視野が狭い人が割と多いのです。広く視野を持って、見る視点を固定しないようにすることが重要だと思います。
私が大学を卒業した時にはハラスメントという言葉がまだなかったのです。女性が就職して、一生懸命活躍しようと思っても、お酒の席で商談を固めることが今でも日本では多い。それは男性中心の社会だからですよね。当時、私の上司が、「残念だけどお前は連れて行けないんだ」って言ったの。「なんでですか?」と聞いたら、お客さんが私の手を触ってきた時に、「うちの若い子にやめてください」って上司が相手に言えないかもしれないから。だから、「お前を守るためにはお酒の席には連れては行けないんだよ」と言われました。お酒の席に行けないということイコール、私は永遠に主体的に仕事を決められないということですよね。私の1つ年上の先輩達から男女雇用機会均等法ができました。この法律のことは知っていますか?
一同:はい。
鈴木先生:女性が総合職としてやっと就職できるようになったのが、私の先輩達からでした。それで総合職で就職する人は多かったものの、あまりにも、女性が活躍することに慣れていなくて、すべてを男の人と同じように働かせないといけないとみんな思ったわけです。それで、女性たちは皆、仕事をがんばりすぎて、3、4年で辞めていってしまいました。均等法が成り立って5年目以降、女子大生の氷河期というものが現れたのです。全然就職先がない。女は雇わないというような世界に繋がってしまって、私たちの時に失敗したことが、後輩たちに就職で嫌な思いをさせてしまった。その反省も込めて、女性も視野を広くしないといけないし、男性も視野を広く持たないといけないと思います。
ところで、私の仕事は知っていますか?
同一:はい。栄養士さんですよね。
鈴木先生:私は公認スポーツ栄養士といって、アスリートを栄養面からサポートする仕事をしています。これは、ただ単に栄養指導をしているのではなく、対象となるアスリートの栄養状態に関係するあらゆる現状を把握して、目標を達成するための栄養管理を行います。それこそ、目の状態とか、爪とか匂いとか。知識ばかりではなく、相手から何かを察知する能力が高くないと、この仕事はできません。第六感という言葉がありますよね。神憑り的と言われたりもしますが、第六感が存在しなければ、日本語として言葉がないわけですよね。第六感が利く人は、「察知する」能力の高い人だと考えます。持っている能力を最大限に活用して栄養管理を行います。
また、男女が同じような状況で、活躍できる時代になったからこそ、女性として生きたほうがいいのかなって最近思います。どう考えたって、私は男ではない。いくら、いろんなことが男女一緒だと言われたとしても、やはりそこは違うのです。
広い視野、察知する力、女性として生きる、この三つが女性リーダーとして必要な条件だと思っています。
朝野:そのためにも自分のコンディションを自分で知ることは大事ですよね。
鈴木先生:ええ、とても大事。皆さんは健康や栄養を学ぶ学科ではないからあまり学んでこなかったかもしれませんが、女性にとって体調の変化を知ることは重要です。私は栄養管理をすることが仕事ですから、対象となる人の体調変化にとても敏感です。じゃあ自分は?って、いつも自分にも当てはめています。自分のコントロールできないに、人のコントロールなんてできないですから。例えば、女性の場合、排卵期から月経までの間はイライラするかもしれないという知識が頭の中にあったら、自分でも気をつけて過ごすことができますよね。周りの皆さんと快適に働くために、知識を活用して、自分の体調を良好にしておくことはとても重要です。
仕事をするうえで大事なことは、同性に好かれることですね(笑)。特に、栄養士の世界は女性ばっかりなので。約95%が女性。男性は5%くらいしかいません。
仕事をしている中で、人はゴールまでうまくたどり着いた時、それによって成果が得られた時に喜びますよね。女性の場合、プロセスがうまくいって、成果が得られた時にすごく喜ぶ。だけど、成果が得られなかった時にプロセスをずっと悔いる。今までやってきたことはどうなるの?せっかくこんなに時間を使ってきたのに、と言うわけです。でも、プロセスのことを悔やんでも意味がないのです。今までの方法がダメだったら、最善の方法を考えて進めることを考えるべきです。成果がどう上がるのかを見て判断すればいいだけのことです。
片山:これまでのキャリアにおいてのリーダーとしての障壁、大きな壁について教えていただきたいです。
鈴木先生:日本のこれまでの社会で女性は、男性の1.5倍以上働いて初めて普通に働いたって言われてきました。そして1.8倍から2倍働いて、よくやっていると言われました。でもそうすると、プライベートや、寝る時間や、色々なものを犠牲にしているわけです。男性の女性に対する評価はすごく辛い。高い。高い評価で初めて、普通に見てくれる。ただ、本当にできると評価されたときの、受け入れはいいのかもしれない。そこを突破するまでが大きな壁というのですかね。
朝野:それは男性自体が女性に対して何かバイアスがかかっているのでしょうか?女性が仕事していて目に見えない何かを感じているのでしょうか。
鈴木先生:単に同じ土俵で評価されるのが嫌なのだと思います(笑)。あまり理屈なく嫌なのでしょう。男に負けたって悔しがる女性は少ないけど、女に負けたって悔しがる男性は多いですよ。「女のくせに」とか言うとセクハラだとみんな認識しているはずなのに、そのような言葉を使う男性は実際には多いですよね。
朝野:では最後に、若い人に向けて将来の女性リーダーになるためのアドバイスをお願いいたします。
鈴木先生:時代が変わってきて、私たちの少し前の女性たちや、団塊の世代の女性たちは相当苦労しているのですよ。荒野の中から残った人だけが今会社役員だったり、大学だったら教授になっていたり。私の時には、草とかも刈っていただいて、土ですが道も作っていただいて。私たちの世代は多分アスファルトの薄いものを引けたくらいですかね。そこから本当に舗装して、男性とか女性とかの道が同じになるのが多分皆さんの時だと思います。頑張ってくださいね。この記事を20年後に呼んだ学生さんが、「昔は、男女の違いを話していたんだ~」って言ってもらえるように。
しかし、道が同じになったとしても男性は子どもを産めないですよね。最近では企業などで、産休?育休2、3年取れます、と言っていますよね。だけど多くの企業で、休んでも、まあ1年ですよ。「あなたの住んでいるところには保育園ないの?」とか言われてしまいますから。「そんなに長く休んでいたら、次来たときには席ないよ」とか。言わないまでも、そういうような圧力がかかってくる可能性は高いですよね。男性の育休とか言っても多くが2、3週間とのデータがありますね。これからの時代は、この状況にどう対応していくかですね。男女同等でも同等ではないところをどのように考えて進めていくのか。女性の政治家を増やすことでしょうかね。男性は今まで支援や援助をして政治家を育てたのですよね。今度は女性の中で支援や援助をして政治家を育てていかないと、これ以上はなかなか変わらないかもしれません。
一同:ありがとうございます。