【The American Women’s College of Bay Path University(TAWC)との共同授業】日本で活躍する女性リーダーに本学学生がインタビューしました(Vol.2)
実践女子大学では2019年度前期の授業「オープン講座(テーマ:日米の女性リーダー比較)」として、The American Women’s University of Bay Path Universityと共同授業を行っています。授業の一環として、日本で活躍する女性リーダーに本学学生がインタビューをおこないました。
今回は、NHK国際放送局?国際企画部長の田中淳子さんのインタビューをお届けします。
※この共同授業は日米友好基金(JUSFC)から資金提供を受けています。また、日米文化教育交流会議(The United States -Japan Conference on Cultural and Educational Interchange :通称 カルコンCULCON)より田中淳子さんをご紹介いただきました。
田中淳子さん(Ms.Junko Tanaka)インタビュー
インタビュアー:ワグネル、朝野
ワグネル:お仕事をする上で、リーダーとして大切なことは何だと思いますか?
田中さん:チームワークがとても大切な仕事なので、みんなが気持ちよく仕事できる、そして、最大限のアウトプットを出せるということを心掛けています。大切なのは、ロジック、この仕事は何で必要なのか、何のためにやっているのかというのが分かることと、エモーション、楽しかったり、やりがいがあったり、誇りに思ったりする、要するに心で感じることの両方が必要だと思います。
ワグネル:ロジックとエモーションを使って、一緒に働く人、また、自分のモチベーションを上げるために、何か心掛けていることはありますか?
田中さん:一番大切なのはコミュニケーションだと思います。そして、コミュニケーションは二つあって、伝える力と聴く力です。伝えることの必要性というのは、まずはどこに向かっていくのか、なぜそれが必要なのかということを伝えるということです。自分は伝えたつもりになっていても、その時相手が聴く耳を持っていないとなかなか腑に落ちないので、何度も繰り返し伝えるということが必要です。難しいのは、言いにくいことをどのようにうまく伝えるかということです。私はわりと率直に伝えるようにしていますが、その際、「あなたに成功してもらいたいから、期待しているからこれを言います」ということを伝えるようにはしています。それが伝える力ですね。疎かになりがちなのは聴く力で、忙しいので初めからこちらで答えを出してしまうことがありがちですが、全然違うアイデアを持っている人もいるので、それを引き出すようにしています。または、自分に対して、ちょっと違うのでは?と思っている人の意見を聴く、苦言を聴くというようなことが大切で、聴く姿勢を持たないとみんな委縮して、アイデアが出てこないと思います。その両面のコミュニケーションが必要だと思います。
二つ目が判断力。判断し、それに対して責任をとるということです。腹をくくって判断をするということで、私が思うには、女性の方が、わりと腹をくくれるのではないでしょうか。判断したことが上手くいかなかったら責任を持つという姿勢を示すことが大事だと思っています。
三番目は、非常にプラクティカルな話ですが、マネジメント能力はすごく大切だと思います。私がワシントン支局長をやっていた時のことですが、歴代有名な支局長がいっぱいいて、ずっと支えてきた現地スタッフ達がいました。どういうタイプの支局長がいいのかなと思って、「どの人が一番やりやすかった?」と聞いてみたことがあるのです。すると、色々なプランがマネージされている人の方が働きやすい、と。長期的な見通しなどの管理が上手く、時間、人間関係、労務的な管理、お金の管理などがオーガナイズされている人の下だと、そこを心配して振り回されなくていいのでやりやすい、と。ああそうだなと思いました。やはりマネジメントが得意な人と不得意な人がいて、自分もそんなに得意じゃないんですね。そしたらその部分は誰かに任せるとか、ダブルチェックしてもらうとか。一番大切なマネジメントは、リスクマネジメントだと思います。そこは、管理職とかリーダーがちゃんと責任を持ってやらないといけません。現場はこれがいいと思っていて、応援したいけれども、思わぬ落とし穴があることもあります。例えば放送だったら、放送に出てしまった時に、思わぬ影響があったり、誰かに迷惑をかけたりとか、誰かの人権を侵害したりとかいうこともあるので。また、NHKは受信料で成り立っているので、本当にこういうお金の使い方をしていいのかとか、想像力を働かせてリスクをイメージすることが大切かなと思っています。
ワグネル:育ってきた環境は、田中さんにどういう影響がありましたか?
田中さん:学生の時、すこし広告代理店でアルバイトをしていたことがありました。当時私が入社したのが、雇用機会均等法の2年目だったので、本当にそういうところでバリバリ働いている女性が少なかったのですが、その女性の上司が、女性だったら三倍働きなさい、と言っていました。それが現実ですというふうに言っていて。たとえ総合職で入ってコピー取りを任されても、それが不満だったら辞めればいい、じゃあコピーはどういう風にとって、どういう風にホッチキスで止めて、どういう風に渡すとその人が見やすいかとか、そういうことを考えて働くと言っていて、彼女の言葉はすごく印象的でした。あと、大学で留学した時に、女性学をとり、女性だけではなくて様々なマイノリティのことを勉強しました。マイノリティが社会に進出していく時は、必ず摩擦があったり、周りも戸惑ったりするわけですね。それが現実なので、それにいちいちびっくりしたり傷ついたりしたらしょうがないというか、そういうものだということを、自分で体感できました。なので、会社に入ってからも、普通の人だと差別だと思うことも私は当たり前だなって思ったし、むしろ、そこで働けるのが嬉しいなと思いながらやっていました。
ワグネル:働いているうえで、日本とアメリカでなにか環境の違いなどはありましたか?
田中さん:日本の方が、今は結構増えてきましたが、上司に女性を持つということに経験があまりなく、初めの頃は少しそれに抵抗感を持っているのかなと感じることはありましたね。アメリカの方が慣れていますよね、女性の方が上にくることにね。ただ女性はまだ、例えば大きな会議の時に発言するという時に、ちょっと遠慮して、例えばはじめに口火を切るとか、そういうことはしないかもしれません。それが女性だからなのかその人の性格なのかはわかりませんけれども、たいてい見ているとやっぱり女性は、ちょっと遅れて発言していますね。
ワグネル:これから若い人たちが女性リーダーとしてどんどん活躍できるようになるため、今どういうことをして、どう動いたほうがいいでしょうか?
田中さん:まずは一番自分がやりたいこと、好きなことを見つけるということだと思います。キャリアで成功する、一番簡単な方法は、好きなことをやることです。好きなことをやると仕事と思わずに、「生きること=その仕事」となって際限なくいくらでも頑張れるんですよね。そうすれば活躍もできるし、リーダーにもなっていくと思います。とりあえず色々なことにチャレンジするのがいいと思います。私も別に、ずっと記者とかジャーナリズム目指していたわけではなくて、多くの出会いでたまたまそうなったという感じなので、人との出会いが重要なんじゃないかなと思いますね。今はインターネット時代で、学生の皆さんが、驚くほど多くの情報を持っていて、その中から選ぶのは難しいと思います。私たちの時代にはインターネットはもちろんないし、本当にたまたま人との出会いで繋がっていくという世界でした。どっちが良い悪いではないのですが、そういう偶然性というのも、ちょっと運命的な感じになりますけれども、それによってまた新しい世界が広がると思います。インターネット時代は、自分の関心のある分野や関心のあるメディアからの情報は入って来ますが、そうすると他がみえなくなったりすることがあるので。もしかしたら自分にもっと合うキャリアや世界があるかもしれません。そういう偶然の出会いにも心を開いていくことも大事だと思いますね。
朝野?ワグネル:ありがとうございます。